はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

雀のお宿

2017-10-02 00:17:11 | 岩国エッセイサロンより
2017年9月30日 (土)
岩国市  会 員   上田 孝

 夜中にトイレに行った際、ドアを開け明かりをつけた途端、バサッと音がして目の前で小さな黒い物体が動いて消えた。15度ほど開いた窓と網戸のすき間を雀がねぐらにしていたらしい。昼間に糞を確認した。
 その後しばらく来ない日が続いた。数日後、暗がりのままそっとドアを開けると、いるいる。黒い小さな影が見える。この春に巣立った子雀で、安全なねぐらを見つける知恵もまだないのか。そっとドアを閉めて階下のトイレに行った。
 どんなヤツか、ちょっと顔を見てみたい気もするが、しばらくそっとしておいてやろう。
(2017.09.30 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

私もそうなりたい

2017-10-02 00:15:51 | 岩国エッセイサロンより
2017年9月29日 (金)
岩国市  会 員   安西 詩代

 夕方「はい、これ」と親しい中学生の彼女は小さなお菓子の袋を差し出した。「あら、どうしたの?」といった瞬間「敬老の日だ」と気がついた。カードには「長生きしてください」と可愛い字で書いてある。突然の老人デビューを娘に話すと「十分老人よ。自覚して感謝」。
 昨年来、白髪にしている。電車では若者がすぐに席を譲ってくれる。優しさがうれしい。
 老人になったからこそ生まれる美しさもある。それは外見的なものではなく人生の体験を通して培われた内面性の深さによる。そんな方はいつも「明日への希望」を持っている。
  (2017.09.29 毎日新聞「はがき随筆」掲載)