はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

カーテンの洗濯

2017-10-14 21:58:58 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月14日 (土)
   岩国市   会 員   片山清勝

 秋のよく晴れた日、我が家恒例作業の一つ、カーテンの洗濯をする。私の分担は、取り外しと洗濯後の取り付けの二つ。
 取り外しは、大した作業ではない。外した後でレールを水拭きする。
 洗濯を終えたそれは、水分を含み、取り外し時の倍くらいの重さと感じる。これをレールに取り付けるのは、両腕を上げた姿勢で行う。年々、骨が折れる作業と思う度合いが増す。
 現役の頃は家内1人でこの作業をしていたことになる。まあ、若かったが、大変だったろう。    
 気持ちよさそうに揺れるカーテンを見ながら、お茶を飲む。
(2017.10.14 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

自死は敗北者か

2017-10-14 12:01:40 | はがき随筆


 自殺や精神疾患についての正しい知識を普及啓発し、これらに対する偏見をなくすとともに、命の大切さや自殺の予防などについて理解を図ることを目的として、毎年9月に自殺予防週間を設定している。
 人間はどんな病気に冒されて死ぬか。どんな事故に遭って死ぬか知るすべはない。自死であっても、人間には人知れず精神的、肉体的苦痛に遭遇し、死のふちをさ迷うような苦悩がある。自死は人間だけが体験する行為である。私は自死を讃美する者ではない。ただ、自死を人生の敗北者扱いしてはならない。
  志布志市 一木法明 2017/10/14 毎日新聞鹿児島版掲載

花のことば

2017-10-14 11:49:41 | はがき随筆


 玄関の戸を開けるとすぐ目の前にはききょうの花たち……。母が元気だったころは季節ごとに植えたルピナス、矢車草、百日早、ひまわり、ききょうなどを咲かせては喜んでいた。そんな母が寝込んでしまったのは私が12歳の夏だ。そして母がやっと立って歩けるようになったのは6年後のこと。その6年の間、ききょうだけは私が目を離さずにずっと見守っていたんだ。
 母が逝って20年、今年もききょうは咲いた。玄関先から木戸口までジグザグに植えており、右、左、右、左と花の姿を見て歩く。花のことばをしっかりと聞き取りながら……。
  出水市 中島征士  2017/10/13 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆の9月度月間賞は次の皆さんでした。

2017-10-14 11:41:37 | 受賞作品
 【優秀賞】1日「モンシロチョウの宿と夢」小村忍=出水市大野原町
 【佳作】15日「流れる星は」田中健一郎=鹿児島市東谷山
▽21日「黒電話」竹之内美知子=鹿児島市城山

 「モンシロチョウの宿と夢」は、モンシロチョウはどこで眠るだろうという長年の疑問が、実際の観察で解決したという内容です。いくつになられても、こういう好奇心を持ち続けておられることに感心しました。文章も、その好奇心に従って、読む者の好奇心を解明に向かってみちびいてくれる魅力を持っています。
 「流れる星は」は、藤原ていの引き揚げ記『流れる星は生きている』の再読後の感想を紹介し、同時に戦争の弱者に及ぼす過酷さに触れた内容です。前にも触れましたが、戦争は政治家が始めて庶民が苦しむということを、現在の国情からも考えさせられる文章です。
 「黒電話」は、戦後しばらくは電話を容易には取り付けられなかった。それが取り付けられたときの家族の騒動(?)が生き生きと描かれています。電話のある家はかなり離れた家にも取り次いでいました。電話への興味も薄れた頃、受話器を取ると父の急死の知らせであったと言う悲しい思い出もあり、対比的な内容が効果的です。
 この他の3編を紹介します。
 宮路量温さんの「水鏡」は、美しく心和む文章です。田植えの前、田んぼに水がはられると、周囲の自然を写す水鏡と化す。それを母は「清風名月」と呼んでたたえていた。その美しさが分かるようになった今、その風景をさかなにビールを飲んで妻と親しむという内容です。
 本山るみ子さんの「エアコンが来た!」は、鹿児島移住13年、クーラー無しの扇風機生活を続けていたが、流石に今夏の暑さと熱中症騒ぎにエアコンを購入した。今までの意固地さが恥ずかしいくらい快適で、よく眠れるという内容です。
 田中由利子さんの「高校3年生」は、雨にぬれて、母親とケンカした孫が祖母の元に一時避難。着替えを出して、食事を出すと、黙々と食べ終わる。慰める言葉が思いつかない。親は怒るものだというと、気分が落ち着いたか、迎えの母親と素直に帰っていった。高校生の年頃の心理がよく描かれている内容です。
  鹿児島大学 名誉教授 石田忠彦

さよなら高齢車

2017-10-14 11:06:44 | はがき随筆
 23年間連れ添った愛車と別れた。スリムな4WDで1600ccながら馬力も安定性もあり、後部も広く昨年実家への引っ越し荷物運びに大活躍してくれたが、もう製造中止の車種だ。
 古い車は税金が高い、ガソリンは食う、部品の劣化でアクセルペダルが壊れる、給油口のふたが開かないなど修理個所は増す一方だ。そこがまた頑張ってる姿に見えていとおしい。
 ずっと乗り続けたかったが年金生活では維持費もバカにならなず、泣く泣く手放した。高齢者の頑固さだろうか、オートマチック車を信用できない。私には高齢車がピッタリだった。
  鹿児島市 種子田真理  2017/10/12 毎日新聞鹿児島版掲載