はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

やったね88歳

2017-10-16 12:27:48 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月16日 (月)
山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 市では時計が午後6時を指すと「ふるさと」のメロディーが流れる。聞きながら愛媛に1人で暮らす父に思いをはせる。
 耳が遠くなり電話で父の声を聞くことができないので帰省した。10年くらい肺気腫を患っていたが、今では見違えるほど元気になりデイサービスに週3日通っていると弟が言う。お墓参りで、弟に手を引かれながらも一生懸命に坂道を上る姿を見てまだまだ元気と安心した。
 昨年の数え年での米寿のお祝いの席で「健康長寿」と力強く願いごとを書いた父がまもなく満88歳を迎える。
 父さん、誕生日おめでとう。
  (2017.10.16 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

幼なじみ

2017-10-16 12:16:48 | はがき随筆


 その家は旧家のたたずまい。コケむした石垣、お堀もあった。そこに住んでいたのが、同級生のみどりちゃん。家が近く、すぐに親しくなった。登校時、よく待たされた。そのとき、お母さんが朝食のトーストを「食べててね」と私の手に。当時バター香るパンなど珍しく、ワクワクした。東京育ちのお母さんは上品で明るくまぶしいような存在だった。家に遊びに行くと、髪を結った和服のおばあ様もおられ、緊張したものだ。高校進学時に離れ、疎遠に。今でも「きよ子ちゃん」と返してくれるだろうか……。往時を追想する。トーストの香りの中で。
 出水市  伊尻清子 2017/10/16  毎日新聞鹿児島版掲載