はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

地賛地称

2018-04-23 20:38:13 | はがき随筆
 くまもと、みやざき、かごしま。南九州3県は「ま行」が似合う県ですね。枕崎はかつお節、宮崎県花はハマユウ、熊本県のゆるキャラはくまもん。
 4月1日から地域総合面になりました。毎日が新鮮な他県の地名。思わず横にある地図帳に手をやります。4月1日のはがき随筆は宮崎市の女性の方。2日は鹿児島県西之表市の男性。地名は読めますが残念ながら現地に行ったことはありません。
 地産地消という言葉がありますが、私には地賛地称という言葉がピッタリな紙面となりました。3県を統括する毎日新聞。楽しみなはがき随筆です。
  熊本県玉東町  平川克徳  2018/4/12 毎日新聞鹿児島版掲載

西郷どんのみっ

2018-04-23 20:28:37 | はがき随筆


 明治7年3月、初代司法卿江藤新平が佐賀の乱で敗れた後、鰻温泉逗留中の西郷どんに面会し決起を求めたがケンカ別れとなった。悄然となる江藤を心根優しい西郷どんは指宿の港まで送ったと言う。維新の重要人物の訪問と別れが交錯する道。世のため人のため、命もいらず、名もいらず、……。1カ月半後、江藤は四国でさらし首、その後西郷どんは城山で自決。両雄どんな思いでこの道を歩いたことか。木漏れ日の下、老木の前に立ちつくす。ウグイスの初鳴きが森の奥遠く近く……。
 ウグイスの 初音哀しき 西郷どんの道
  鹿児島県 指宿市  有村好一  2018/4/12  毎日新聞鹿児島版掲載

野鳥

2018-04-23 20:17:51 | はがき随筆


 3月ともなればケンケンとなくキジの声に目覚め、ケッチョケッチョのウグイスの声に「ああ春か」と胸がときめき、季節を感じた頃そう昔ではなかった。
 雪降りにリンゴを棒に挿し、外に立てたが腐ってしまった。野鳥も過疎か。野鳥ばかりでなくカエル、セミ、バッタ類もあまり声を聞かなくなり、四季折々の季節感がわからない。農薬のせいと言われるけれどそれだけだろうか。
 きれいな空気、澄みきった小川の流れは昔と変わらねど、野鳥の声の聞けぬ山里の家は哀しい。
  宮崎県日之影町 甲斐カツエ  2018/4/12  毎日新聞鹿児島版掲載

ウグイスの来訪

2018-04-23 20:06:46 | はがき随筆


 窓から見える大木の桜は、あっという間に開花そして花吹雪。変化の速さに驚き、ぼんやり眺めていた私に娘が「お母さん、ウグイスが鳴いてるよ。早く早く」。
 慌てて席を立つ。「ほら、きれいな声で上手に泣いてるよ」。耳が遠い私は一生懸命耳をすます。ホーホケキョ。「ああ、聞こえた」。姿が見えるかもと探し「あそこにいる」と娘が指す方を見る。隣家の垣根の上だ。しきりに羽を動かし鳴いている。ウグイスま訪問は10年ぶりだろうか
最近体調不良の私に「元気になーれ」と言ってくれているよう。ありがとう。
  熊本市  原田初枝  2018/4/12  毎日新聞鹿児島版掲載

新燃岳噴く

2018-04-23 19:54:07 | はがき随筆


 昨年10月、6年ぶりに噴火した新燃岳が、またまた噴煙を上げた。噴煙の高さは桜島のそれに比べて10分の1の300㍍ほどだが、火口までおよそ7㌔の我家周辺にはドブ川のような悪臭が漂う。思わず〈杉花粉黄砂噴煙三重苦〉としたため万柳に投句した。それにしても16年前、浜松からIターンして来たときには、まさか桜島・新燃岳と前後から噴煙の挟み撃ちに遭うとは夢想だにしなかった。竜のごとくうねりながら吐き出されるどす黒い噴煙は、私をまるで太古の地球にタイムスリップしたかのような気にさえさせてくれる。
  霧島市 久野茂樹  2018/4/12  毎日新聞鹿児島版掲載 画像はネットより


ティーカップ

2018-04-23 19:45:17 | はがき随筆
 教え子がご主人と娘さんと3人で福岡からやって来た。彼女のお母様から私の結婚祝いに頂いたカップでもてなした。
 「このカップわかる?」
「え?」種明しすると3人とも「ええー!」驚きの表情。
 私は、いつも温かく見守り応援して下さった若きお母様の姿を思い出しながら飲んだが、彼女たちはそれぞれどんな思いでカップを持っていたのだろうか。今お母様は認知症状が少しずつ進んでおられるようだ。
 「母に見せたいのでカップ撮ります」彼女はシャッターを押した。カップのこと、私のこと思い出して下さるといいなあ。
  宮崎市  堀柾子  2018/4/12  毎日新聞鹿児島版掲載


熊本の生活

2018-04-23 19:31:43 | はがき随筆
 熊本へ移り住んで2カ月が過ぎた。1人暮らしをしていた息子が就職するも3カ月で入院。妻は母親の介護のため身動きがとれず、日々ふらふらしている私が息子と一緒に住み、しばらく様子を見ることとなった。
 誰一人しらない町で毎日洗濯と掃除と簡単なゆうげの準備をしている。息子は7月からの職場復帰に日々リハビリを続けている。今はただ息子の復帰がうまくいくことを祈るばかりだ。慣れ親しんできた熊本の生活。時間を見つけては街中を自転車で走り回っているが、白川沿いを走るのは心地よい。心配など何もない。今そう信じている。
  熊本市 志田貴志生 2018/4/12 毎日新聞鹿児島版掲載