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庭先の熟れたビワがぬれてゆくのは痛ましいが、色づいてくるアジサイには、やはり雨がよく似合う。咲き始めは白、しだいに緑、青、紫など微妙に色を変え「七変化」の別名通り変色の妙を楽しませる。雨にぬれて鮮やかさを増し、雨水を含んで重たげに咲くのがこの花の風情である。花の少ない季節にこの花は貴重な彩りである。花を見ていると亡き友、Aさんのことを思い出す。庭の片隅に咲いたアジサイと笑顔で迎えていただいたそのひとは、薫風慈雨とでもいうお人柄で、書道、日本舞踊、お茶などに精進され、私の大好きな人だった。
鹿児島県出水市 橋口礼子 (84)2017/7/19 毎日新聞鹿児島版掲載