はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

アジサイ

2018-07-19 16:37:18 | はがき随筆


 庭先の熟れたビワがぬれてゆくのは痛ましいが、色づいてくるアジサイには、やはり雨がよく似合う。咲き始めは白、しだいに緑、青、紫など微妙に色を変え「七変化」の別名通り変色の妙を楽しませる。雨にぬれて鮮やかさを増し、雨水を含んで重たげに咲くのがこの花の風情である。花の少ない季節にこの花は貴重な彩りである。花を見ていると亡き友、Aさんのことを思い出す。庭の片隅に咲いたアジサイと笑顔で迎えていただいたそのひとは、薫風慈雨とでもいうお人柄で、書道、日本舞踊、お茶などに精進され、私の大好きな人だった。
 鹿児島県出水市 橋口礼子 (84)2017/7/19 毎日新聞鹿児島版掲載

誕生日Ⅱ

2018-07-19 16:28:54 | はがき随筆
 6月15日は○○で誕生会のランチをしましょうね。とその20日くらい前に友人からメールがあった。どこか覚えのある日。
 あ! わたしの誕生日。
 誕生日は産んでくれた母に感謝する日だから大事にしなくちゃねと去年釘をさされていたのに今年も日々のスケジュールに埋もれすっかり忘れていた。
 この誘いがなかったら、しばらく気付かなかっただろう自分の誕生日。有難かったが、心の片隅に罪の意識がわいた。
 その日、彼女は言った。「墓参りくらいはした?」と。
 私の辞書には、誕生日に墓参りというのは無かった。
  宮崎県延岡市 露木恵美子(67)2018/7/19 毎日新聞鹿児島版掲載

頭にねじ

2018-07-19 16:19:12 | はがき随筆
 今は見られなくなった柱時計。昔は「しっかりねじをかけんから途中で止まる」と叱られたことを思い出します。つま先立ちして手が痛くなるまでねじを巻いていました。
 90歳になり、心機一転して頭にねじをかけねばと思いました。それは新聞に毎日載っている数独です。
 1日も休まず続けています。満点の時は赤丸でうれしくてうれしくて今日はしっかりねじがかかったねと自分をほめてやります。体の中に油が入ったようです。続けることは力なりといいます。うれしさの輪が広がりました。
  熊本県八代市 相場和子(91)2018/7/19 毎日新聞鹿児島版掲載

春から夏へ

2018-07-19 16:11:56 | はがき随筆
 3月「早春の里山へのお誘い」と称してはがきを出したら15人の参加。少し不安だったが、なんとかなると覚悟した。パエリア、座禅豆、鶏ハムなどを作った。美味しかったと喜んでくれた人、仲間たちの談笑が私への贈り物。この計画を後押ししてくれた友人へ感謝だった。
 始めて会った人も何人か、和やかなひと時を過ごした。山菜採りに足を延ばした人も。
 来る七夕の日は母の七回忌。この日もつたない腕を振るおう。遠来の客にありがとうの気持ちをこめて、そして母の思い出を語ってもらう楽しみが待ち遠しい。
 鹿児島県薩摩川内市 馬場園柾子(77)2018/7/19 毎日新聞鹿児島版掲載

休耕田を梅畑に

2018-07-19 15:48:32 | はがき随筆


 作らないからと、貸していた田を返されたが、本業の養鶏だけで田畑には手は回らずのまま、放置状態で3年は過ぎた。
 草茫々の荒れ田と化して、周りの田の中に、草丈が高く伸び目立つのが気になっていた。
 4月初めに、植木市のチラシを目にすると心躍らせ、仕事の合間に隣町へ軽トラを走らせた。渋柿を4本、お目当ての梅を11本買った。桜を買いたかったが、休耕田には実のなる物しか植えられない決まりだ。
 3月に草刈りを済ませた田に2日がかりで苗を植えた。植え終わると、達成感で満足した。花が咲く春の楽しみができた。
 宮崎県串間市 武田ゆきえ(63) 2018/7/19 毎日新聞鹿児島版掲載

ラジオ体操

2018-07-19 15:24:04 | はがき随筆


 黄泉の世界へ旅立ったならば二度とこの世に戻ってくることはない。余命を知るすべはないが、一応健康体だし、余生を楽しく過ごそうと思っている。
 若かったころは筋骨たくましくて敏活な挙動をしていたが、今では足腰が弱くなって動作の緩慢さを痛感している。それでも寄る年波には勝てぬと諦めるのではなく、毎朝6時半のNHKのラジオ体操を心がけている。始めるときの肩こりや腰の鈍痛を我慢して体を動かしていると、終わる頃には多少なりと痛みが和らいでいる。健康を維持しているのは体操の影響だろうか。
  熊本市東区 竹本伸二(90) 2018/7/19 毎日新聞鹿児島版掲載

楽しい麻雀

2018-07-19 15:14:53 | はがき随筆


 グラウンドゴルフ中に転倒し骨折で3カ月入院、外出や運動が出来ない友人がいる。何とか元気になってもらいたいと、高齢者仲間で相談し、家の中で楽しめる遊びをする事になった。
 麻雀をする事に、「えっ麻雀」。何だが後めたい思いのまま、麻雀歴20年のSさんが先生。慰め元気づけるはずの仲間が毎週水曜日を待っている。
 136枚のパイを「取ったら出す、取ったら出すとよ」と3時間はあっという間。お茶を飲んで「また来週」と別れる
 救急車の中で悲痛な顔を思い出すと、やっと笑顔が戻ったようで安堵するこのごろである。
 宮崎県日向市 津江保美(79)2018/7/19 毎日新聞鹿児島版掲載


米寿の祝辞

2018-07-19 14:59:19 | はがき随筆


 老妻は今年米寿を迎えましたので、ホテルで身内が集まりお祝いをしました。結婚の契りを結んで68年目。長男が世話役になり、一言のあいさつがほしいとのこと。ありのままの日常を話しました。
 米寿おめでとう。心から祝福します。願わくは私は100歳、あなたは105歳まで長生きしてください。別れた後は自由気ままに過ごし、次は浄土で会いましょう。それに加え長期勤務と朝たたき起こし賞を贈ります。子供の教育や炊事、洗濯、掃除などの重責。感謝賞に博士号も追加します。長口上になりましたが拍手もありました。
  熊本市中央区 田尻五助(97) 2018/7/18 毎日新聞鹿児島版掲載