はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

有明海

2018-07-30 11:39:37 | はがき随筆


 子供のころ、父は私を有明海の潮干狩りに連れて行ってくれた。獲物は、タコ、シャコ、穴子、赤貝、タイラギ、こぶし大の巻貝など。帰りに、アサリとワキャ(イソギンチャク)、そして海藻をとって帰った。当時の有明海は生命に満ちあふれていて、潮だまりには、たくさんのムツゴロウ、小魚、エビ、カニなどがうごめいていた。しばしば、連なったカブトガニを見ることもできた。
 父と行く潮干狩りは豊漁で、夕食には有明海の幸が並んだ。
 今の子供たちに、あのときの有明海を体感させてあげたいと、切に思う。
 熊本県北区 岡田政雄(70)2018/7/30 毎日新聞鹿児島版掲載

孫娘とのメール

2018-07-30 11:28:14 | はがき随筆
 「今日は午後、入寮式があって、寮生活が始まったよー」。高校進学した孫子からのメールである。「みんなと仲良くしなさいよー」。一人っ子で育った孫がうまく生活できるのか心配である。
 翌朝「じーじ、今日は入学式だよー」。なんと早朝6時半、朝寝坊の孫は緊張しているのだろう。「入学おめでとう。たくさん友達作って高校生活を楽しんでねー」。あえて勉強のことには触れなかった。
 甘えん坊でわがままに育った彼女が高校生だ。連休には遊びに来るとのメール。報告を楽しみにしている。
  鹿児島県志布志市 一木法明(82)毎日新聞鹿児島版掲載

こんにゃく作り

2018-07-30 11:21:05 | はがき随筆


 数年前に植えた種芋が椀の大きさまで育った。年配の知人に教えてもらった手順通りに、昔ながらの手作りこんにゃくに挑戦する。
 芋を2㌢角にきり、ゆでた後、皮をむきミキサーで粉砕。湯を加えながら汗だくで練り上げること30分。炭酸を加え再び固くなるまで練り続け、四角い器に一晩寝かせ、一枚ごとに切り分け、ゆでて出来上がり。
 早速、刺し身こんにゃくにして酢みそで試食。おいしい。手間をかけた分、何かブラスαされ満足感にみたされる。ゆっくりと時間が流れ、幸せな挑戦の一日だった。
 宮崎市 高橋厚子(68)2018/7/28 毎日新聞鹿児島版掲載

証拠隠滅

2018-07-30 11:11:50 | はがき随筆
 隣の子供たちの気配がしない。こんな時はろくなことをしていない。のぞいてみた。
 部屋の真ん中に1歳半の娘が仁王立ち。足元には水たまりが……。あっと思う間もなく、娘が脱いだズボンで拭き始めた。4歳の兄は台所へ走り、手ふきタオルを調達して拭いてやっている。「楓ちゃん、これで大丈夫だよ」。兄は洗濯かごにタオルとズボンを入れた。
 見て見ぬふるをしていると、2人は何事もなかったように「ママー、おやつ食べるう」。「ドーナツでいい?」。2人は満足げにかぶりついている。1人は下半身スッポンポンだったが。
  熊本市南区 藤原美穂子(37)218/7/27 毎日新聞鹿児島版掲載