はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

友と結ぶ漫画

2018-09-06 14:36:50 | はがき随筆
 かれこれ5年前の絵画展でのこと。私の一枚の絵を見た友が「随分人を描いたね。何人いるの」と話しかけた。運動場をモチーフに多くの人々を描いた漫画絵だが、人数を聞くのは彼がはじめて。全く面喰った。これが縁で、小中学校で一緒の彼との交遊が始まった。
 スポーツが好きな彼は、母校で高校球児の追っかけカメラマンとか。度々彼の案内で、写真展にも同行して楽しんだ。急に音信が途絶え、彼の訃報を聞いた。私の手元には「まじめな君が漫画を描くなんて驚きだ」という彼の葉書がある。おい、早すぎるよ。
 熊本市 原田靖(78) 2018/9/6 毎日新聞鹿児島版掲載

脳トレ活性化

2018-09-06 14:12:30 | はがき随筆
 2年前、過疎の集落にお嫁さんがきた。しかもフィリピンから。高齢化の進む集落にフィリピン語はもちろん、英語を話す人もいない。養母は生粋の鹿児島県人。言葉の不自由を乗り越えるのは大変だったと思う。
 今年の2月、義母の介護から解放されたのか、ウオーキングの途中で会うことが多くなった。人手不足の我が工場に誘って「チョット見るダケネ」となったのが6月。生まれながらの器用さから仕事量はトップに。高齢の従業員とはゼスチャーと義母からの伝授のカゴっマ弁。互いに頭をかしげかしげの脳トレ中。笑いがたえない。

 鹿児島県阿久根市 的場豊子(72) 2018/9/6 毎日新聞鹿児島版掲載

良い付き合い

2018-09-06 14:03:02 | はがき随筆
 私は嫁いで宮崎の地へ。継母は私が4歳のころ義父の私の生家に嫁いで、92歳の今を過ごしている。68歳までは商売(飲食店)を続けると、がむしゃらに働く私に電話で継母がしみじみと「永い付き合いになったなー」と一言。今年3月に46年間の商売を廃業した。
 「7月に帰省するからね。」待ちに待ったその日の3日前ついぞ現れたことのない亡き父が私の夢に現れ「継母のところへ行こう」と誘ってくれた。なんでも忌憚なく話あえる私たち。それでも継母として重責を背負って生きてきたのでしょう。感謝の心でいっぱいです。
 宮崎県延岡市 飛鳥衣真弓(68) 2018/9/6 毎日新聞鹿児島版掲載

さくらももこさん

2018-09-06 13:55:06 | はがき随筆
 今朝の新聞で訃報を知りショックを受けている。年甲斐もなくちびまる子ちゃんが大好きでたまらない。テレビを見て笑い、ジ~ンときたりしていたから、何か大切なものを失ってしまった気がしている。文庫本やシールなど手元にたくさん持っている。
 彼女は漫画以外に音楽のセンスも優れていたと知った。本当に早すぎる死が悔やまれてならない。これからも「ちびまる子ちゃん」が永く愛され続けてほしいと願うばかり。たらこさんの声でももこさんを想像していたが、優しいお顔をしておられる。ご冥福をお祈り致します。
 熊本県八代市 鍬本恵子(72) 2018/9/6 毎日新聞鹿児島版掲載

大空襲

2018-09-06 13:44:28 | はがき随筆
 新聞連載中の石田衣良氏の「炎の中へ」を初めから夢中で読んでいます。敗戦間近の昭和20年3月10日の夜、B29による大空襲。市民は右往左往逃げ場を失い、2時間で10万人死亡したとかうわれています。この石田さんの描写があまりにリアルで、同年6月17日夜の鹿児島大空襲を表出しました。B29大編隊による無差別焼夷弾攻撃、田舎に疎開できなかった多くの市民が犠牲になりました。当時母子所帯だった私たちは、親子5人山手に逃げ生き残れました。さのとき私は14歳、タケシみたいな行動はとれず、母一人に苦労させました。
 鹿児島市 津田康子(86) 2018/9/6 毎日新聞鹿児島版掲載

花言葉

2018-09-06 13:37:07 | はがき随筆


 デイケアの朝礼には必ず美しい色彩の花に花言葉を添えて回覧されます。青春時代の手紙に書いた記憶がありますが、戦争が続きすっかり忘れていたので、懐かしい思い出を呼び戻しました。老妻が気を遣い「花言葉集」を買ってきてくれたのでお花の勉強中です。春夏秋冬に区分し220種ありました。
 さて毎日酷暑が続く中、庭のサルスベリは淡い赤桃色の花を咲かせ満開です。花言葉は「雄弁」。照りつける日射にも負けない花を見て力強さに感銘し、老体にパワーを貰います。花見で花に興味が出て朝礼の楽しみが増えました。
  熊本市中央区 田尻五助(97) 2018/9/6 毎日新聞鹿児島版掲載

初盆

2018-09-06 13:29:15 | はがき随筆


 お刺し身、焼き鳥、玉子焼き、素麺……。さあ、ゆっくり召し上がれ! どう? 久しぶりの妻の手料理は。な~んて独り言。そう今日は盆の入り。貴男の好物を並べてみました。元気だった頃は、「あれが食べたいな」「これも」との注文に「作るのも大変なのよ。たまには私に作って!」なんて言ってましたよね。でも今なら喜んでご注文の応じますよ。早いなあ~。今夜は送り火。夜空が、名残惜しそうな最後の煙を容赦なくのみこんでしまいました。あとは涙、涙。まだ胸の奥の涙壺は涸れていないようです。でも安心して。いつもは笑顔なんだから。
  宮崎市 山下弥栄子(75) 2018/9/6 毎日新聞鹿児島版掲載