はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

天守閣復活

2018-11-20 18:29:59 | はがき随筆
 先日、新幹線で熊本に帰省した。熊本駅に着く直前に漆喰の色も鮮やかな熊本城が目に飛び込んできた。テレビでは熊本城天守閣の復活は報じられたが、実物を見て、すごく感動した。
 名古屋から新幹線で来ると名城の誉れ高い姫路城や福山城を眺めることができる。
 だが、私にとってお城は熊本城が一番。住んでいる名古屋では名古屋城建築に関して木造建築か否かでもめているが、熊本県民の熊本城復活への情熱、一致団結には、心打たれるものがある。最大の難関である「文化財」石垣の復活にも大いに期待が高まる。
 名古屋市昭和区 佐々木信生(70) 2018/10/31 毎日新聞鹿児島版掲載

勇敢な部員

2018-11-20 18:20:34 | はがき随筆
 ある国の学校のサッカー部員ら13人が、洞窟の探検中に遭難した。勇敢な部員らはコーチの指導の下、強い絆で結ばれていた。日常の厳しい訓練に耐えての成果だ。手元には食糧も乏しく、飲み水は天井から滴る。のどを潤した尊い水が尊い生命をつないだ。体中のエネルギーが消耗する沢で、身体を無駄に動かさないようにとのアドバイス。洞窟の闇の中、生き抜く力は、神々しい。心の底がえぐられるほどに感銘を受けた。天からのたまものだろう。勇敢な若者よ、強靭な精神力に「闘志を燃やし、大使を抱け」。探検隊の健闘をお祈りします。
 鹿児島県姶良市 堀美代子(74) 2018/10/30 毎日新聞鹿児島版掲載

嵐のあとで

2018-11-20 18:10:50 | はがき随筆
 台風が過ぎ去り、堤防沿いで倒れたコットンを起こしていると「花見に来たつね」と畑の前を通った仲間の声。周りに目をやるとまだ若木だが、枝を何本も横に伸ばした桜木の一本が結構、花を付けている。側に近付いて見ると糸のように裂かれた荷造り用のビニールが無数に枝に絡まっている。作業を一時やめ、それを解くことにした。
 糸を解きながらなぜ今ごろ花を咲かせたのかと思いめぐらす。
 体にビニールの糸が絡んでいるのをしらせるため。自分の存在をしらせるため。それともプラ製品、ビニールなどの自然に対する警鐘のため……。
 宮崎県延岡市 露木恵美子(67) 2018/11/29 毎日新聞鹿児島版掲載

ウオーキング

2018-11-20 18:05:10 | はがき随筆
 「涼しくなったし、散歩したらどうな」と家内が勧めた。猛暑続きで家の中で過ごした毎日だったが、運動不足を痛感していたし「そうだな」と応じて健軍川の土手沿いの道を上流側へ向かって往復2㌔ほどをウオーキングすることにした。
 待てよ。いつ何が起きても不思議ではない年齢だ。めまいでもして倒れたら発見した人が警察に連絡するだろうが、どこの誰かもわからないでは困惑するだろう。名刺大の紙に住所、電話番号、氏名を書いて胸のポケットに入れておいたらどうだろう。次からそうしよう。足が軽くなったようだ。
 熊本市東区 竹本伸二(90) 201810/28 毎日新聞鹿児島版掲載

命日のおだんご

2018-11-20 17:55:50 | はがき随筆
 母31回目の命日、好物のおだんご作りに張り切った。
 こねる仕草は母に似て、ちょっとおかしくなる。粉に少しずつ水を加え、もみ込むようにこねていた。ところが水の容器が傾き「あっ」と思ったときは、すでにおそし……。
 「慌てることはない、粉を足してねるといい」と天の声。ありがたい言葉どおりに、おだんごはでき「あん」をのせ、お茶と共にお供え。花瓶に挿した彼岸花に母の笑顔が浮かび「お母さん」と呼びあれこれとつぶやく。静かにお経を唱えていると「ごくり」と聞こえたような、空耳でしょうか。
 鹿児島市 竹之内美知子(84) 2018/10/27 毎日新聞鹿児島版掲載

大の字

2018-11-20 17:49:16 | はがき随筆
 息子が料理をする近くの間でひっくりかえって大の字になる。
 思い出したのは、私が小学生の夏休みの昼下がり。川遊びに疲れ、開けっぱなしの百姓家の八畳の真ん中に一人、大の字になった。涼しい風が私のほほをなで眠気を誘った。何も考えていなかったように思う。チコちゃんじゃないがポーっと生きていたのでしょう。
 精いっぱい働きつくし、商売をリタイアした私。
 昼の間に大の字になってひっくりかえれる幸せをかみしめ、残りの人生をポーっと生きないよう心に誓う。
 宮崎県延岡市 飛鳥井真弓(68) 2018/10/26 毎日新聞鹿児島版掲載

誕生日

2018-11-20 17:30:13 | はがき随筆
 10月20日は皇后美智子様のお誕生日。そして私も誕生日。その日の新聞を開くと皇后様のおやさしいお姿が載っている。
 友人が私のことを思い出し、電話やメールで、職場でもお祝いの言葉をいただく。皇后様は慈悲深くお美しい遥か彼方の存在だが、誕生日が同じというだけで幸せをいただき、心が和む。
 私は今年69歳。69という数字は逆さにしても69、ごまかしのきかない60代の最後だ。
 今上皇后の恩恵を何度となく受けてきた私の誕生日。両親への感謝とともにその幸せに心から乾杯。
 熊本県天草市 段下千晶(69) 2018/10/25