はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

西郷どん

2019-01-17 17:39:32 | はがき随筆
 NHK大河ドラマ「西郷どん」が終わりました。世界を見てきた大久保さん、留守政府を守った西郷どん。意見の相違は仕方ないことだったと思います。
 士族の若手たちを教育しようと私学校を創設、努力されたのに、血気盛んな士族たちに担がれ、では行くかと立ち上がりましたが、田原坂での凄惨な戦い。どうしようもなかったでしょう。やっと城山に帰り着いた西郷どん。戦はこれが最後、日本もこれで新しい口国造りができるだろうとつぶやくように言ったのが身にしみます。「勝てば官軍、負ければ賊軍」
 鹿児島市 津田康子(87) 2019/1/17 毎日新聞鹿児島版掲載

シャインマスカット

2019-01-17 17:32:04 | はがき随筆
 暑さの残る、ある日のこと。知り合いから宅急便が届いた。
 箱のテープをはがすと、甘い香りがただよう。説明書に新品種のシャインマスカットとあった。他にピオーネ、梨がある。しばらく、見入った。
 手にとると、どれも宝石のようだ。自然が創りだす美しさをしばし感ずる。産地直送とあり、みずみずしい。育てた人が、赤子を包むようにやさしく詰めたのが伝わる。
 早速、娘にお裾分けをする。「心にしみる初めてのあじ」といった。私も、子どもの頃に、おいしい食べ物は、少しずつ口にした、あの日を思い出した。
 宮崎市 田原雅子(85) 2019/1/17 毎日新聞鹿児島版掲載

帰省の目的が

2019-01-17 17:24:39 | はがき随筆
 昨年11月に義父が満92歳で亡くなった。我々は、ここ数年盆正月のみならず、年4.5回は熊本に帰省していた。当初は、老人ホームに入所していた義父を自宅に連れて帰りしばしの自宅生活を楽しんでもらうため。近年は、施設や入院先での世話や支払のためへと帰省の目的も変化していった。そしてついに、その目的がなくなった。今年からは、墓参や旧自宅の管理が主目的となる。義父が残ししてくれた家を拠点に、肥後狂句の会や高校・大学の同窓会の仲間との交流、そして肩の荷の下りた妻との県内探訪を楽しみに帰省したい。
 名古屋市昭和区 佐々木信生(71) 2019/1/117 毎日新聞鹿児島版掲載

11月22日

2019-01-17 17:15:14 | はがき随筆
 「平成」の30年間の最後の11月22日、「いい夫婦の日」を迎える事ができた。夫婦円満の秘訣をアンケートで見ると「一緒に運動する」が約62%を示していた。この結果に私は共感している。運動とは言えないかもしれないが、私の健康を気遣う妻が散歩を勧め、ともに歩いている。散歩しながら雲の流れを見、空飛ぶ野バトの群れに目を凝らし、路傍の花々をめでながら田園の道をつつがなく歩いている。並んで歩く妻に来世も頼むと言うと、ちょうど通る電車の音で妻の返事は聞こえず、横顔の汗が朝日に光っていた。「夫婦は二世」を信じて歩く。
 鹿児島県出水市 宮路量温(72) 2019/1/17 毎日新聞鹿児島版掲載

挨拶の力

2019-01-17 17:06:31 | はがき随筆
 私と妹は毎日決まった時刻にスーパーに行く。時々80過ぎと思える男の人と女の人に会う。擦れ違い様に「おはようございます」と挨拶をする。
 女の人は、すぐに笑顔で返事をくれる。男の人は小さい声の返事が返ってくる。ところが、こちらを見た顔が私にかまってくれるな、声をかけてくれるなといった感が伝わったくる。それでも何回も挨拶をしていた。
 ある時、歩調をゆるめ穏やかな顔で挨拶が帰って来た。とてもうれしかった。妹と「やっと受け入れてもらった感がするね。継続は力。挨拶の力ってすごいね」と声も弾んだ。
 宮崎県日向市 黒木節子(71) 2019/1/17 毎日新聞鹿児島版掲載

冬到来

2019-01-17 16:27:32 | はがき随筆
 九州に在る私は北国の豪雪を知らない。雪かき、雪下ろしの大変さを知らない。しかし前年は阿蘇も大雪に見舞われた。屋根を落ちる積雪のものすごい音に首がすくみ、雪崩音は家中にとどろく不穏な日。だが、軒しずくに春の気配を感じるとすぐにそれも忘れる。
 だがニュースで見る東北、北海道地方の冬の厳しさは、いかに慣れようと慣れ切れまい。そこに住む人たちの労苦をいかばからかと思う。北海道地震後の冬に、時間、人手、物資、足りないものは多く、日本列島寒々しい。お祭り騒ぎに浮かれるは一握りの方々ではないか?
 熊本県阿蘇市 北窓和代(63) 2019/1/17 毎日新聞鹿児島版掲載

さあ立ち上がれ

2019-01-17 16:19:49 | はがき随筆
 地震の頃から体調を崩してずっと街に出ることがなかった。着々と復興が進んでいるお城の姿を見たいし、熊本の繁華街、上通りや下通りの人々の活況も懐かしい。気候のいい11月にバスで街に出掛けようと張り切っていたのに、腰を痛めてまたお預けになった。
 年を重ねるごとに月日の流れが早くなり、年齢の重さに今更のように驚く。
 当たり前に踏まれるあぜ道の草のような人生を忘れて、ラストは視線を投げてくれる人もいるのかもしれない。小道のタンポポになりたい。明るく、チャーミングな。
 熊本市北区 黒田あや子(86) 2019/1/17 毎日新聞鹿児島版掲載