「あれえ、よく来たさあ。覚えてるよ」。沖縄県本部町八重岳麓の与那嶺商店。私が初めて沖縄の地を踏んだのは、本土返還の前年だった。当時は「赤線」があり、車も右側通行、パスポート必携の旅。その後社会人となり、リタイアしてからは愛妻とちょくちょく訪れる。
田舎の雑貨屋の女将は、今回もインスタントコーヒーと地元の菓子でもてなしてくれる。「沖縄のゆんたくだよね」「そうね」。間違いなく将来「丘縄のオバア」になる人は、世間話のテンポも速い。「またきっと来るからね」。心に決めたぼくらは店を後にした。
鹿児島県霧島市 久野茂樹(70) 2019/12/11 毎日新聞鹿児島版