はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆11月度

2019-12-24 16:58:59 | はがき随筆
 月間賞に島田さん(宮崎)
 佳作は岩下さん(宮崎)、的場さん(鹿児島)、中村さん(熊本)

 はがき随筆11月度受賞者は次の皆さんでした。(敬称略)
【月間賞】 18日「おかげさまで」島田葉子=宮崎県延岡市
【佳作】 5日「一手」岩下龍吉=宮崎県串間市
▽ 的場豊子「モデルデビュー」的場豊子=鹿児島県阿久根市
▽ 「気配り運転士」中村弘之=熊本市東区

 「おかげさまで」は、買い物帰りに、エレベーターが点検中で、カートを抱えて3階まで上がれないと立ちすくんでいたら、赤ん坊を抱いた若い奥さんに助けられたという内容です。なんでもない内容のようですが、筆者の年齢が86歳ということを考えるとその人が「天使のようにさえ思えた」という感激が、単なる比喩ではなく、読む者にも実感として伝わってきます。
 「一手」は、待ったのできる囲碁ゲームのルールを活用して、さかのぼってゲームを再開した時に、人生も待ったができないものかと思った。人生は後悔しても戻れない。しかし待ったなしに進んできたためによいこともあった。それが人生の味というものであろう。残りの時間の一手を大切に打たねばという、いわば決意表明です。
 「モデルデビュー」は、こんなこともあるのかというような、珍しい話です。退治していたはずだったのに、今年も寝ているときにムカデに刺された。慣れたもので、退治して治療した。最初のときは、グローブのように腫れた手を、診療所の医者が治療してくれたうえで、写真に撮られた。その写真は今でも病院に残っていて、手だけのモデルデビューではあった。ユーモアがいいですね。
 「気配り運転士」は、市電の中で、手押し車の老女の降車を手伝ってあげたら、それを見逃さずに、降りるときに礼を言ってくれた運転士の気配りに、かえって恐縮したという内容です。私は鹿児島での市電利用ですが、最近運転士が親切になったことを実感します。熊本で、昔でいえば車掌さんみたいな女性の搭乗員が、いろいろ案内してくれているのに感心しました。
 この他に、かつて母親に叱られたことも今思えば愛情であったという、前田隆男さんの「おませな子」、余程ルリタテハがお好きだと見える、外園恒子さんの「ルリタテハⅡ」、生活の中に残る慣習の意味する不思議についての感想を述べた、西洋史さんの「慣習の謎」が印象に残りました。
鹿児島大学名誉教授 石田忠彦

ライオンキング讃

2019-12-24 16:27:14 | はがき随筆
 ミュージカル「ライオンキング」が日本で初演されたのは平成10年。東京、大阪、名古屋、福岡での公演を計9回観た。
 オープニングの夜明けのシーンから、胸が熱くなる。何度観てもいい。今回は友人2人を誘って福岡へ出かけた。
 車の中で、昨年末からCDを聴き続け、テレビでディズニーのアニメを見、更に映画の実写版も見た。1年近く期待感に浸っての観劇。2列目で食い入るように観た。どの曲も歌える。
 その日のカーテンコールが10回ほどもあった。「讃」は台湾語で「ブラボー」だとか。讃。讃。
 鹿児島市 本山るみ子(67) 2019/12/20 毎日新聞鹿児島版

噴煙の吹流し

2019-12-24 16:19:11 | はがき随筆
 鹿児島市街から毎日桜島の噴煙を眺めている。昨日は北、今日は南、と飛行場の吹き流しのようである。噴煙が左(北)へ流れると南風で暖かく、右(南)へ流れると寒くなる。近ごろは正確な天気予報がなされるので観天望気の楽しみは減るが、予報通りに噴煙が流れるとなるほどと納得する。
 さて、南東風になると市街地方向に噴煙が着て灰が降る。しかしこのときは西方に低気圧があり近いうちに雨が降ることが多く、灰を流してくれる。逆に北西の季節風が吹くとこちらは安堵するが、大隅半島は降灰に悩まされる。気の毒である。
 鹿児島市 野崎正昭(88) 2019/12/19 毎日新聞鹿児島版

木守柿

2019-12-24 16:11:23 | はがき随筆
 収穫後に一つだけ鳥のために残しておく柿を「木守柿」というそうだ。今年も、木守柿を残した。秋空に映える柿色が美しかった。鳥が食べる場に出会いたかったが、いつの間にかなくなった。今は紅葉した葉がちらほら残り、柿の季節も終わる。
 だが近頃では、立冬を過ぎてもたわわに実をつけたまま放置された柿が多いと新聞に載っていた。住民の過疎化や高齢化もその要因らしいが、その柿を餌にとツキノワグマがやって来るとのこと。人的被害も出ているので切実な問題になっている。
 穏やかな晩秋は、木守柿に鳥という風情であってほしい。
 宮崎市 堀柾子(74) 2019/12/19 毎日新聞鹿児島版