プロ野球の世界ではチーム強化のため、選手のトレードが当たり前のこととして行われる。対象選手の多くは、新チームで全力を尽くすとのコメントを残して去っていく。
しかし、その本当の気持ちはどうなのか、報道されるたびに気になっていた。20日付オピニオン面の「潮流 エースの情念」を読んで、そんな気掛かりについての答えをもらった。
40年余り前のドラフト騒動「江川事件」解決のために、巨人はエースだった小林繁さんを、阪神に「差し出す」形でトレードした。
小林さんのその時の胸中は「許せないの一心」だった。陰惨ともいえる「暗い情念」が燃えたという。しかし、巨人戦で勝利を重ねるうちに怒りは静まり、「もう十分じゃないか」という感情が湧いたそうだ。
今季も戦力外やトレードで多くの選手が他球団のユニホームを着た。胸の内はどのようなものだろう。古巣との対戦はプロならではの試練。そうした選手たちの一投一打に期待したい。
岩国市 片山清勝(80) 岩国エッセイサロンより