はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

人生の速度

2021-07-05 04:35:59 | はがき随筆
 ある書きものに年齢は速度とあり、3歳児は時速3㌔、70歳なら70㌔の速さで人生を生きると書かれていた。
 3歳児に比べ私くらいの者の人生は列車の車窓の景色のように毎日が流れてゆく。
 ふと左側の崖に目をやると、先日まで固くしっかりと閉じていたジャスミンの花が開いた。この花は5月と思っていたが温暖化だろうか。
 川辺のセンダンは4月と思っていた。梅雨にぬれて薄緑の葉と薄紫の小花が舞妓さんの髪飾りのように美しい。川に泳ぐ鯉さん見上げてごらん。センダンの花きれいでしょう。
 宮崎県延岡市 逢坂鶴子(94) 2021/6/5 毎日新聞鹿児島版掲載

紙碑

2021-07-05 04:24:29 | はがき随筆
 本紙記事の「オウム犯罪 医師の『紙碑』」の見出しに惹かれて早速、帚木蓬生著「沙林偽りの王国」を読んだ。26年前のサリンテロに対する医師の厳しい告発と検証でまさしく神碑と感じた。同時に現在のコロナ感染への医療従事者の苦闘にも、貴重な資料が失われないうちに紙碑を残して頂けたらと願った。読後の疲れをコーヒーで癒しながら埒もないことを考えた。地域面の片隅の252字、もし百年後かに出版されたとしたらどう読まれるのかな。百人百様のしなやかな息吹を後世に感じてもらえれば庶民のささやかな紙碑になるかなと思った。
 熊本市中央区 増永陽(90) 2021.6.5 毎日新聞鹿児島版掲載

久しぶり

2021-07-05 04:15:35 | はがき随筆
 本紙に掲載された叙勲受章者の中に高校時代の友人の名前があった。彼とは、もう音信が途絶えて数十年、誠実な人柄を思い出した。早速、お祝いのはがきを出したら、宛先に尋ね当たらずで返送されてきた。
 それではと、ファイルなどをひっくり返したら、電話番号が記載された同窓生名簿が出てきた。電話してみると、本人が出て、「エッ、岡田くんか!」と仰天している様子が伝わってきた。
 いっぺんに昭和のあの頃に戻って、たくさんの友人についての情報も聞き、コロナが終わったら会う約束ができた。
 熊本市北区 岡田政雄(73) 2021.6.4 毎日新聞鹿児島版掲載

丸ボーロ

2021-07-05 04:06:12 | はがき随筆
 毎朝惣菜を届けてくれる娘が、大きな丸ボーロと高麗菓子を持ってきてくれた。
 「確か錦江町の」と思い心弾ませ、その昔々、よく買って食べた頃を思い出した。大隅半島にある町で、買いに行くには遠いので、箱でまとめて送ってもらっていた。
 ある日、「年を取ったのでやめる」との一筆が届き、愛用の私は寂しかった。
 そのうち、街に販売取り扱いの所を見つけた。「よかったー」と思った矢先、私の大病で治療に専念中を、見舞いのごとく……。 
 娘のお蔭でありがとう。
 鹿児島市 東郷久子(86) 2021.6.3 毎日新聞鹿児島版掲載

食べる

2021-07-05 03:54:25 | はがき随筆
 「みそ汁が塩辛い。里芋がガジガジ。梅干しの塩抜きが足らん」。夫が朝の食卓にのたまう。
 甘党の彼は農協の店に立ち寄ると、ヨモギ団子をさりげなく籠に入れる。この地に住んで20年。トータル何個ぐらい食べたのであろうか。しゅうとめの作った団子のアンコは、甘からず辛からず、何個でも食べられた。
 春の頂き物はフキノトウに始まり大根、キャベツ、レタス、タケノコ、ぬかは袋いっぱいで20円。ばらずし、みそあえ、煮しめにと大奮闘する私。
 一昨年の夫の入院を思うと、目の前でパクパク料理を平らげる現実がうれしい。
 宮崎県延岡市 佐藤桂子(73) 2021.6.2 毎日新聞鹿児島版掲載


自然がいっぱい

2021-07-05 03:44:40 | はがき随筆
 梅雨の中休みのある日、草取りをした。頭上ではキジバト、ウグイス、スズメがさえずっていた。外気もさわやかであった。雨が続いて大地はしっかり水分をたくわえていたせいか、草も元気。落下した梅の実を拾いながらの作業となった。
  しばらくして苦手な生き物たちと出合う。草を抜くと、ミミズ、ダンゴムシ、アリがぞろぞろ出てくる。顔の周りには蚊もブンブン飛んでいる。これも自然が豊かということか。好きな生き物とは言えないが、共生しなくてはいけない。小一時間後、庭の一部だけど、なんとかきれいになった。
 熊本県玉名市 立石史子(67) 2021/6/1 毎日新聞鹿児島版掲載