はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ミニ千羽鶴

2022-07-15 15:05:28 | はがき随筆
 四つ切りにした小さな色紙でかわいい鶴を折ります。小指くらいの鶴を1本の糸に10羽つなぎます。それを5本作り、50羽のミニ千羽鶴ができました。折るのに大切な決まりがあり、1㍉のずれも許されません。きっちりと、そして優しく笑顔で折り上げます。両方の羽を引っ張り、広げると中から丸い背中が出てきます。目を覚ました鶴のようです。赤、青、黄、緑のきれいな鶴たちが息をしたようです。まとめたリボンを揺らしてみました。心が弾みます。うれしそうな鶴たちが青空に羽ばたいています。私ファンタジーが青空に広がっていきました。
 熊本県八代市 相場和子(95) 2022.5.5 毎日新聞鹿児島版掲載

愛別離苦

2022-07-15 14:56:05 | はがき随筆
 有効期限の定まらない、生あるものの生命。幼子を残して帰れぬ旅へ弟が逝って35年目の5月。年の順でない理不尽さを妻に話す。「俺はお前より先に逝くからな」と言えば、妻は「こればかりは分からない」。
 糟糠の妻に長生きしてほしい気持ちで言っているのに、そっけなく水を差すが、「あなたは炊事ができないから」と言いつつ折り込みチラシを取り出し、「万が一何か生じたら弁当を届けてくれる所がある」と教えてくれた。私は無言を貫くが、その妻の配慮がうれしい。
 俺より早くぼけるな。逝くな。俺を一人にするな。
 鹿児島県出水市 宮路量温(75) 2022.5.4 毎日新聞鹿児島版掲載

喜寿を迎える

2022-07-15 14:45:55 | はがき随筆
 今年、私は77歳の喜寿を迎える。平均寿命80歳を超す時代だが、感慨深いものがある。
 40歳の時、交通事故大けがをし、腸の一部を切除する手術を受けた。退院の時の医院長の言葉が、今でも脳裏から離れない。「君は、普通の人より腸が短くなった。寿命もその分短くなると覚悟しなさい」と。
 皆より人生が短いと言うのは、悔しくもあり、寂しくもある。だから摂生に努め、毎日を一生懸命に生きてきた。
 交通事故、暴飲暴食、流行する病、過労にストレスなど多くの事に気を配り、喜寿にたどり着いたことを喜びたい。
 宮崎市 実広英機(76) 2022.5.3 毎日新聞鹿児島版掲載