はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

リモートデビュー

2022-07-29 21:51:24 | はがき随筆
 ボランティアの水泳コーチの更新は「リモート参加で」ときた。さっぱりやり方が分からない。恐る恐るホームページを開いて入力したら、受講可と返信があり早々と待機。ところがところが突然開始時刻に画面が消えた。「焦るなよ落ち着け」。最初から立ち上げ5分遅れで入室できた。
 講義中は、1分内で理解度をチェックする問題が多く、瞬時に正解と理解率がでたのには驚いた。試験ではなかったが、講師は不出来な私の答えが見えているはず。参加者から質問が出たが、私は余裕が無かった。時間と金をかけていろいろな講習にでかけたなぁ。コロナ前は。
 宮崎市 津曲久美(64) 2022.7.7 毎日新聞鹿児島版掲載

世界に一つの本

2022-07-29 21:06:59 | はがき随筆
 世界に一つしかない不思議な本です。色は虹色七色。毎日書き続けています。その本の名前は人生。同じ本はありません。心というペンで走るように書ける時もあれば、涙雨で書けない時もあります。明るく楽しい夢いっぱいの本にしたいです。歴史に名を残した人々は一つの本を書き上げた人々です。人生のお手本です。心を引っ張ってくれます。梅雨が明けて青空が広がり、心の隅々まで広がっていくようです。眠っていたチューリップやコデマリ草が、開き始めました。神様の手が動き始めました。今日のページに書きましょう。感謝の心を添えて。
 熊本県八代市 相場和子(95) 2022.7.6 毎日新聞鹿児島版掲載 

自家焙煎

2022-07-29 20:58:29 | はがき随筆
 大型連休のただ中、ひたすら山小屋のいろりを囲み、お茶作りに専念するのが夫の年中行事だ。まず無農薬の茶畑の草取りに剪定と続き、淡い緑の新芽が成長すると、いよいよ茶摘みの開始。茶葉作りに通うこと1週間。火の近くは熱い。顔から流れる汗をぬぐい、煙にいぶされながらの作業は大変だった。
 鉄の大鍋で煎り、ブリキの茶つぼに詰め完成。昔ながらの自家焙煎は代々、伝承されてきた。その一杯の香りと深い味わいは格別だった。飲みながら「苦労した甲斐があった」とほほえむ夫に「ご苦労様」。
 鹿児島県鹿屋市 中鶴裕子(72) 2022.7.5 毎日新聞鹿児島版掲載

母を想う

2022-07-29 20:49:50 | はがき随筆
 「妹はいいなぁ」と、二つ違いの姉は私のことをずっと羨ましがっていた。
 幼い頃、末っ子の私は母と寝床が一緒だった。母は柔らかくあたたかで、毎晩安心と極楽の気分だった。一方、姉は父と寝ていたが、痩せ気味の父はゴツゴツと固く冷たく冬などは足元がなかなか暖まらなかったと今でもボヤくことがある。
 その後、父は病に倒れ、高齢になった母を、独り身の自分が在宅介護する生活が始まった。寝たきりの母を見送るまでの8年間、再び私が母を独り占めにさせてもらった。
 時折そのぬくもりが恋しい。
 宮崎市 藤田悦子(74) 2022.7.4 毎日新聞鹿児島版掲載

ひまご

2022-07-29 20:34:47 | はがき随筆
 福岡市に在住している孫娘が一昨年に結婚して去年の12月に娘を出産した。私にとっては初の曾孫である。その子を抱いて夫が運転する車で来訪した。
 早速抱かせてもらったが、半年ほど過ぎているので、体が大きくて元気よく手足を動かしていた。「ひいおじいちゃんだよ」と声をかけると、ニコッと笑ったような気がした。 
 4.5年も過ぎたら「ひいじいちゃん、こんにちは」と言ってくるだろうな。そんなことを想像した。でも、その頃の私は百歳近くになっている。現在は健康体で元気な状態を保持している。それを続けたいものだ。
 熊本市東区 竹本伸二(94) 2022.7.3 毎日新聞鹿児島版掲載

砂の道、指宿の旅

2022-07-29 20:26:09 | はがき随筆
 干潮時に出現する砂の道を歩いて指宿の知林ヶ島へ渡る人たちを何度かテレビで見た。「私もいつか」と願い、このたび帰省した娘たちと挑戦した。
 その日は中潮だったが、午後から歩けるという。1時過ぎに行くと、もう広い砂の道を歩く人たちが見える。私たちも後を追う。右も左も海。私は右側の渚を歩く。引き潮の波が穏やかに寄せて来る。と思いきや時折大波が来て靴をぬらしそうになる。高地に暮らしているので久しぶりの浜辺での戯れが楽しい。
 小雨が降り出してきた。島の展望台まで登るつもりが、歩けただけでよしとして終了。
 鹿児島県霧島市 秋峯いくよ(82) 2022.7.2 毎日新聞鹿児島版掲載