はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆4月度・月間賞に若宮さん

2013-05-23 11:30:47 | 受賞作品
 はがき随筆4月度の入賞者は次の皆さんです。

【月間賞】5日「今年の桜」若宮庸成(73)=志布志市有明町
【佳作】4日「発表の朝」竹之内美知子(79)=鹿児島市城山
▽16日「ここだけの話」田中健一郎(75)鹿児島市東谷山


 今年の桜 早春の喜びのために植えた早咲きの河津桜が、今年は何処よりも美しく咲いたのを、ご夫婦で満喫している様子が書かれています。「我雪と思えば軽し傘の上」という、宝井其角の句がありますが、何事も自分のものは素晴らしいものですね。落花に戯れる奥さまを童女と見立てる愛情も素晴らしい。
 発表の朝 お孫さんの高校合格の喜びが、素直に表現されています。発表の時間、電話の遅れ、不安、そして合格の知らせ、喜びが緊迫した時間の中で描かれています。庭に出ると、椿の花も祝福してくれているようだったという、緩急をつけた文章の呼吸が優れた表現になっています。
 ここだけの話 品格のある講演を聞きに行った帰りに、友人たちと立ち寄った喫茶店でのエピソードです。品格とはおよそ縁のない自分たちの失敗談ばかり、それらをからかう友人もやがて失敗、年齢のせいにして秘密にすることにしたという、明るく、読む人の気持ちを和ませてくれる文章です。
 この他に3編を紹介します。
 井尻清子さんの「ブリン」は、愛犬への賛歌です。ご主人の亡くなられた頃に生まれたせいか、仏壇の前の座布団がお気に入り。賢い犬で、人の気配を察知してくれるし、何よりもお孫さんたちを集めてくれる。寂しさを癒してくれるペットが家族だということがよく分かる文章です。
 本山るみ子さんの「定年を迎えて」は表題通りの定年所感です。短期で勤めたはずの職場に37年、そのうえ再雇用もできて、さて最後のご奉公をという、飾らない、人生への感謝の気持ちが表れていて、清々しい気持ちで読める文章です。
 高橋誠さんの「マコトがいっぱい」は、ご自分と隣人と、娘婿と、同名が3人も集まって混乱しているという内容です。婿が村上春樹に似ているので、混乱を避けてハルキと呼ぼうと提案したが、一蹴されたということが、何ともいえぬおかしみを醸しています。こういう場合は、ご自分から率先して名前を変えることを提案します。
 (鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿