生協のカタログにあった植物の特集。
これこれ、早春の玄関を大きな植木鉢一杯の桃色の八重咲きチューリップで飾りたい。
注文した球根が届いたのは9月半ば。
植えるには早いので球根は保管し、
植木鉢に新しい土と肥料を入れてなじむまで置いておくことにした。
10月になって球根を手に庭に行くと、
さらさらした土の上に、なんと、
でっかいアリジゴクの巣のようなすり鉢状の穴が無数に開いているではないか。
この大きさ、この形……。しばらく考えて出した答えは、スズメ。
このごろ朝な夕な団体でやってきてはジュクジュクさえずり合うようになった。
あんたたちがここで砂浴びをしてたってこと?
うーん、どうしよう。
試しに砂を平らにならしておき、出かける度に植木鉢をみる。
毎回律儀にボコボコ穴が開いているのが楽しい。
球根に悪い、悪いと思いながら気付けばもう11月だ。
どっちにも良い顔をしたい優柔不断な私に腹が立つ。
振り返れば、情にほだされて時期を逸することばかりしてきた。
この年まで何を学んできたのだ。
このままずるずるしていたらまともな花は咲かないぞ。
思い出すのだ、過去の数々の失敗を。
スズメたちよお願いだ、よそにいってくれ。
ごめんね球根たち、私を許して。思いは乱れ悶々とする。
でも実をいうと、私はこんな気弱な自分が嫌いではない。
だから困る。
北九州市 村上明季音 2011/11/9 毎日新聞女の気持ち欄掲載
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