はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

人生の交差

2011-11-09 14:15:51 | 女の気持ち/男の気持ち
 思いがけないはがきを受け取った。「人違いだったらごめんなさい」し書き出されたそれには、私の級友の消息が記されていた。
 差出人は私の高校の2年先輩で、この春リタイアされて北海道から故郷の阿久根市に戻ってこられたという。北海道埋蔵文化財センターに勤務されていて、そこで部下だった私の級友から私の名を聞いていた。地元の図書館に行った時、何気なく手に取った「文芸いずみ」という出水市民の文芸作品集に私の名をみつけ、もしやと思ってはがきをくださったという。
 旧友とは中学時代からのペンフレンドだ。短大2年の時、大きなリュックサックを背負って北海道を一周した際には、千歳市の彼女の家に泊めてもらった。北大の学生だった彼女に札幌の街も案内してもらった。しかし卒業後はすっかり疎遠になっていた。
 10年ほど前、息子の北大受験に同行したとき、彼女はここで学生時代を送ったのだと久しぶりに懐かしく思い出したが、もう私たちの人生が交差することはないだろうと思っていた。
 生きていれば何が起こるか分からない。生きていて良かった。ここ半年、体調不良で鬱々とした日々を送っていた私は、心底うれしかった。
 彼女は今、遺跡の発掘で大忙しという。暇な私は「返信はいらないから手紙を書かせてね」と、早速メールを送った。
  出水市 清水昌子 2011/11/8 の気持ち欄掲載

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