はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆5月度入選

2006-06-19 16:45:26 | 受賞作品
 はがき随筆5月度入選作品が決まりました。
△ 肝付町前田、吉井三男さん(64)の「やっけたこっじゃ」(2日)
△ 姶良町西餅田、中村頼子さん(64)の「奈良の旅」(16日)
△ 志布志市志布志町、一木法明さん(70)の「主演女優賞」(8日)の3点です。
 
5月の皆さん方からの文章は、気持ちのいい内容のものばかりで感心しました。浅山さんの「譲り合い」は、剣道に頑張る長男の汁わんに卵1個入れておいたら、二男も三男も兄の喜びを感じてか、母親の汁わんにそっと卵をいれてくれていたという話。いい話ですね。馬場園征子さんの「昼の月」は、お孫さんと散歩に出る楽しさを、竹之内政子さんの「さわやか」は大型トレーラーの運転手のマナーの良さを紹介しました。
 吉井さんの「やっけたこっじゃ」が何とも面白い。楽しんで庭の雑草を取りつつ、「お前らに忙殺されて、しかも取った後から後から生えてきやがる。そういえば、近ごろメールもしない。肉体の衰えと共に精神の萎縮も来たのかも」と言うのです。このタイトルや文体の面白さは、奥深い心の余裕の表現ですからね。まだ、大丈夫、立派なものです。
 さて、季節はよし、旅の文章も多いですね。中村さんの「奈良の旅」は、春の大和路を訪ねたと高揚した感じでのスタート。猿沢の池、興福寺、奈良公園、春日大社と、時を忘れて歩いた喜びにあふれた文章の最後を「あおによし奈良の都は咲く花の……」の名歌で締めて、日本人なら文句なしに共感します。しかし、そこが弱点ということも言えるのかも。
 寺園マツエさんの「万葉の里」も同様の趣です。反対に、日常に旅の趣を見つけて楽しむ、生きる名人の素晴らしい文章も多くあります。一木さんは結婚記念日に「24歳の春より今日まで嫁として妻として母として多岐にわたりその役を懸命に演じてきたので、主演女優賞を贈ります」の賞状を贈りました。さぞや苦労して、エンジョイして書いたものですね。生きる名人には「少年野球」の谷山さん、「心の宝物」の上野昭子さんもおられます。
   (日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)

係から
入選作品のうち1編は24日午前8時45分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。作者へのインタビューもあります。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。
 鹿児島面では投稿していただいた「はがき随筆」の中から年度賞(4月~翌年3月分)を決めていましたが、次回から年間賞(1月~12月)にします。九州・山口の各地域とも年間賞に統一することになりました。








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