はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆3月度入選

2012-04-13 17:51:02 | 受賞作品
 はがき随筆3月度入選作品が決まりました。

▽出水市上知識町、年神貞子さん(75)の「リサイクル」(28日)
▽出水市高尾野町柴引、清田文雄さん(72)の「積雪の夜道」(2日)
▽西之表市西之表、武田静瞭さん(75)の「数字の縁起担ぎ」(16日)

──の3点です。

 かごしま近代文学館に台湾から父親と息子さん夫婦の来館者がありました。90歳の父親が通訳でした。日本語を話すのが楽しいらしく、「浦島さん」などの童謡を歌ったりもされました。台湾では77歳以上は日本語ができるというやや自慢げなご様子に、日本の植民地支配による言語政策でそうなったのですが、複雑な気持ちになってしまいました。
 年神貞子さんの「リサイクル」は、雨傘をゴミに出す時、布の部分を外したが、もったいないのでバスキャップにしたという内容です。奇想天外というか逞しいというか、参ったという感じです。明るい感じの文章です。
 清田文雄さんの「積雪の夜道」は、伊作駅から教職員住宅まで、雪中を6時間かけて帰った体験談です。普通は伊作地方と降雪とを結びつけては読みませんので、意外な感じがしますが、50年前の豪雪時のことという種明かしがされます。北国の豪雪の報道からの連想というのも文章を引き立たせています。
 武田静瞭さんの「数字の縁起担ぎ」は、とぼけたおかしみのある文章です。夜中のトイレの時間が1時11分、3時33分、5時55分と同じ数字が並んだので、予想外の幸運を期待したが、何もなかった。ご自分に関係する素材でも、距離を置かれたので味のある文章になっています。
 入選作の他に3編を紹介します。
 池元民子さんの「古き良き時代」は、漁船の焼玉エンジンの音、地引き網の掛け声、貝掘り、進水式の大漁旗に餅まき、かつての浜のにぎわいは。「こぞの雪今いずこ」ですね。高野幸祐さんの「今年も元気だ」は、啓蟄でもないが、春の気分で散歩、同級生に会い、喫茶店で粘って、春雨の中を帰って来た。特別のこともない文章ですが、なぜか気持ちの良い文章です。
 種子田真理さんの「地球のために」は考えさせられる内容です。中学生が、地球のためにすべきことはという問いに「子どもを生まない」ことと答えたという内容です。

鹿児島大学名誉教授・石田忠彦

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