はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

充電の後で

2010-06-26 20:29:13 | 女の気持ち/男の気持ち
 主人の三回忌の法要を済ませて、新幹線で大阪に向かった。独り暮らしの寂しさを紛らわすために、青葉若葉の季節に促されるように、娘一家の誘いを受けて旅立つことにしたのだ。
 大阪駅のホームで娘と孫に迎えられ、大勢の人にもまれて地下鉄に乗り、娘の家に着いたのは小倉を出て3時間余り後だった。独り暮らしを離れ、娘一家との生活が始まると、三度の食事も楽しさを味わうことができた。
 中途失明で視覚障害者になった私は本が大好きで、普段は朝起きてお昼までは点字図書館の方の好意でCD図書を聞く。お昼からは仲良しの友だちの来訪や電話で過ぎていく。
 家にいると、雨の日は憂うつな気持ちになり、さわやかに晴れた日は散歩したい気持ちが自由にならないためストレスとなってしまう。仲良しの友や近所の方も施設に入ったり天国に行ってしまい、寂しさを感じる日が多くなっていた。
 そんな時、「気晴らしにおいで」と孫から電話があり、はやる心で大阪に向かったのだった。
 娘との毎日の買い物や散歩。小旅行に連れていってもらったりもして、あっという間に20日間が過ぎた。でも、いつまでもいるわけにはいかない。心に楽しい思い出を充電してわが家に帰った。
 今日からはまた、返事のない主人と語り合い、楽しかったことを思い出しながら元気を出して暮らそう。

 北九州市小倉南区 成瀬昌子・80歳 2010/6/22 毎日新聞の気持ち欄掲載

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