はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆11月度入選

2008-12-18 16:25:47 | 受賞作品
 はがき随筆11月度の入選作品が決まりました。
▽伊佐市大口上町、山室恒人さん(62)の「11月の蚊」(21日)
▽鹿屋市寿7、森園愛吉さん(87)の「親近感の感動」(28日)
▽指宿市十二町、有村好一さん(60)の「農作業」(2日)──のの3点です。
 
 遠山に浮き出たイチョウが金色の象眼のように鮮やかに輝いています。11月は優れた作品が多く、優秀作を選ぶのに苦心しました。
 山室さんの「11月の蚊」</fontb>は、季節はずれの蚊の弱々しい羽音に、団塊世代の老後の不安を重ねた内容です。誰にでも訪れる不安を、身近な昆虫で表現した効果は光っています。太宰治に「哀蚊」という、老婆の悲哀を描いた小説があります。
 森園さんの「親近感の感動」</fontb>は、来日したベトナムの楽団の日本語の歌声に、昭和17年に「駐留」した往事の記憶がよみがえり、懐かしさを感じたという内容です。日本とベトナムとの関係は、植民地・侵略・戦争などと政治概念で把握されますが、人の感情はまた別の次元で働く心模様が表現されています。
 有村さんの「農作業」</fontb>は、荒れ放題の畑地の草刈りの時、なぜかトンボが集まってくる。子供のころ稲刈りする父親の周りにやはりトンボが群がっていた記憶がある。トンボは雑草から飛び立つ小さい虫が狙いらしい。細かい観察によって自然界の不思議と亡父の思い出と労働の心地よさが、見事に表されています。
 優れた物が多かった中から、いくつかを紹介します。
 武田静瞭さん「月下美人」</fontb>(3日)は、ご夫婦で上弦の月の光の下で2輪咲いた月下美人を楽しんだ内容。口町円子さん「指名される」</fontb>(22日)は、お孫さんのお守りで指名されるのはかけっこの時だけ、それでもうれしいものです。上野昭子さん「ありがとう」</fontb>(24日)は、60年前の教え子からの連絡に、重い病をおして出かけ30分だけ会えた内容。鳥取部京子さん「百円の思い出」</fontb>(7日)は、八つの時の夕方のお使いで、それを感心した知らない人に小遣いをもらった時の、その人の手の記憶が描かれています。竹之内美知子さん「バイキング」</fontb>(20日)は、娘さんと満腹するまで食べたバイキングの、罪の意識?から、ご主人の夕食にはサンマを一品増やした話です。
(日本近代文学会評議員、鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)
 係から
 入選作品のうち1編は27日午前8時40分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。


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