2019年8月 2日 (金)
岩国市 会 員 吉岡 賢一
瀬戸の夕凪と言われる暑い夏の夕暮れは、あのアイスキャンディの素朴な昧を思い出す。
市場で競り落とした新鮮野菜を積み込んだリヤカーを引き、1里半の道のりをものともせず行商に出かける母ちゃん。朝は早いし帰りは遅い。姉たちが夕飯の支度を始める頃、小学3年のボクはそっと家を出て、母ちゃんの帰る道を走る。空のリヤカーを引き受け、今日一日の話をする。
小さな親孝行のご褒美は、水色の氷に割り箸を突っ込んだアイスキャンディ。貧乏な世の中で「小さな贅沢と束の間の母ちゃん独占」。遠い昔の懐かしい味である。
(2019.08.02 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
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