はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

病室のつれづれに

2009-09-29 12:44:53 | 女の気持ち/男の気持ち
 入院も長引くと病室が生活の場となる。自分に与えられた安静(自由)時間は十分過ぎるほどあり、テレビ、ラジオ、新聞、読書などでつぶす。が、それらに飽きてくると閉塞感にさいなまれて入恋しくなり、おしゃべりを思いっきりしたくなる。
 しかし今時、病院で病人の暇つぶしの相手をするほど暇な人はいない。私は身近な人には期待せず、30~40年間音信不通になっている幼なじみや同級生、仕事の同僚など3人の連絡先をようやく探し出し、彼女らの顔を思い出しながら手紙をしたためた。
 うれしいことにすぐ返事があった。まだ大学生の「金食い虫」のために働いているという同級生のNさん。小柄で少女っぽかった職場の同僚のMさんは、40代に大病を患いながらもそれを克服して復職しているらしい。健康を害して長年動めた教職に区切りをつけたHさんは、仕事だけが人生のすべてではないと好きな趣味を楽しんでいるという。それぞれの健在ぶりがうれしかった。生きている限り避けて通れないことが山ほどあるが、私たちは離れた場所で頑張って生きてきたのだ。
 今、私は健康を損ね、将来を悲観的に考えることがままある。そんな自分を救えるのは自分自身であり、敵も自分の中に潜む弱さである。振り返れば天からたくさんの恵みを受け、豊かな人生を送ってきた。それに感謝し、穏やかな時間を過ごしていきたい。
  鹿児島県鹿屋市 田中 京子・58歳 2009/9/28 の気持ち欄掲載



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