はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆4月度

2017-05-25 11:19:56 | 受賞作品
はがき随筆の4月度月間賞は次の皆さんでした。
 【優秀作】6日「竹が鳴く」有村好一=指宿市十二町
 【佳作】8日「慰霊の旅で」秋峯いくよ=霧島市溝辺町
 ▽14日「あれから10年」若宮庸成=志布志市有明町

  
「竹が鳴く」
は、古里の過疎化を嘆いた文章です。全国どこも同じだと言ってしまえばそれまでですが、やはり寂しい現象です。漢詩に「年々歳々花相似 歳々年々人不同」という句があり、人はすぐ「半死の白頭翁」になってしまうという、人の世の無常をうたったのがあります。その無常感が社会現象として現れたのは、なんとも皮肉です。表題は「竹が泣く」がよかったかもしれません。
 「慰霊の旅で」は、フィリピンでの父親の慰霊祭に参加したときの、言葉にならない悲しみの風景が描写されています。首相は前のめりで軍事解決へ走っているようですが、戦争での悲しみはいつも庶民のもので、70年以上たってもそれが消えないことを思い知らされる文章です。
 「あれから10年」は、散歩の途中でついてきた子犬を飼って10年。今では白髪の増えた老犬だが、すっかり家族の一員となり、自分では番犬のつもりでいるという内容です。予防接種のときに。奥様が、柴犬・4月8日花まつり生れと登録されたユーモアには、心が和みました。はがき随筆は短文ですから、一句一文、それにこのような逸話が決め手になります。
 この他に、3編を紹介します。
 久野茂樹さんの「雲散霧消」は、かつての文通・ペンフレンドの逸話です。今は電話で話すこともせず、メールなのだと推測しますが、あの頃は中高生の間で文通が大流行でした。メル友という言葉があるようですが、文通と比較考証(?)してみたくなります。
 武田静瞭さんの「島の桜は次々と……」は、種子島の緋寒桜・河津桜・山桜それに暖流桜と次々に咲く桜の楽しみが書かれています。読んでいてうらやましくなる文章です。
 中馬和美さんの「もうだいじょうぶ」は、お泊りに来たお孫さんの可愛さが描かれていて、親ばかならぬ爺ばかぶりです。初めは夜中に起き出して、帰ると泣き続けたが、翌日帰るかと思ったら、また泊ると言いだした。その時のお孫さんの表情が目に浮かぶようです。
  鹿児島大学名誉教授 石田忠彦


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