はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ピアノ

2006-04-19 11:52:30 | はがき随筆
 退職したらピアノでも挑戦しようかと思っていたのに、もう8年近くも過ぎてしまっていた。
 ぐずぐずしているうちに、鬱や物忘れがやってきた。いかん、ここは一発逆転を、と鍵盤に向かってみた。すると肩はすぐ凝るし、指は脳の命令に従わない。
 練習は疲れるし、恥ずかしい外れ音は遠慮なく響く。それでも反復によってゆっくりと慣れてきた。
 昨年、小さな発表会に加えてもらった。演目は「エリーゼのために」。
 やったね。自分に金メダルをあげよう。先生、ピアノさん、ありがとう。
   出水市高尾野町上水流 松尾 繁(70) 2006/4/19 掲載

今年の桜

2006-04-18 08:25:09 | はがき随筆
 花は桜、桜は吉野。山肌を覆い尽くす圧倒的な桜を見たくて吉野を目指す。1カ月余り前から観桜日を決め、天候を疑うこともなく待つ。下中上、さらに奥に千本の桜。徐々に咲き始め、奥に至っては4月下旬が見ごろとのこと。さすがに懐が深い。花祭りの日、山に入る。大陸からの黄砂が舞い、かすむ山肌の桜は、まだチラホラ。しかし、竹林院の桜は盛りだった。西行の歌碑がひっそりと置かれ、風情満点。さらの金峯山寺の国宝、蔵王堂を仰げば、吉野の山を満喫した感あり。道に溢れる人をかき分け、山を下りる。そこには満開の桜が待っていた。
   志布志市有明町 若宮庸成(66) 2006/4/18掲載

入学

2006-04-17 07:22:54 | はがき随筆
 7年ぶり、小学校に入学した孫がいる。3月に机が来た日から何となく、居場所を得てそこに居るようになった。彼は兄と同じく、粘土でものを作ることが好きで、本をよく読み、絵をかいたりクイズや迷路を作って、行くたびに私を試す。年をとって大まかになっていく私にはちょっと苦しい出題である。母親に似て本を作ることも特徴で、小冊子が増えた。つまり紙片を切って穴をあけて何かひもを見つけてとじる至極かんたんな冊子である。この得意分野が学校生活を始めると、どのように変化し調和していくのだろうか楽しみである。おめでとう。
   鹿児島市唐湊 東郷久子(71) 2006/4/17掲載

ありがとう

2006-04-16 08:13:04 | はがき随筆
 春には田んぼにレンゲ草が咲き誇り、辺り一面ピンク色に染まる。夏には、青々と葉を茂らせたセンダンの木に毎年、アオバズクがやって来る。秋には、豊かに実った稲穂が黄金色に輝く。冬には、山茶花と水仙の花が鮮やかに咲く。
 豊かな自然と心優しい人たち。離れる時には涙が流れてしかたがなかった。今は亡き父の看病もできたこの地を通る度に、ありがたさと感謝の気持ちでいっぱいになる。
 春は別れと出会い、不安の入り混じった季節。人の優しさ温かさを心の支えに、また前向きに進んでいきたい。
   出水市高尾野町柴引 山岡淳子(47)  2006/4/16掲載

亡き恩師に捧ぐ

2006-04-15 10:39:04 | はがき随筆
 「よかったよ」。壇上から降りて座席に着いた夫に、小さな拍手と共に掛けたねぎらいの言葉だった。夫婦共にゆかりの深かった恩師の生誕百年を記念して、ご遺族と故人を慕った教師や教え子たちで寄せ合い、つづった「追悼記」出版を祝う集いが過日行われた。生前故人がこよなく愛された郷土の偉人、西郷隆盛の詩「書懐」を亡き師に捧げたいと夫、初挑戦の吟詠お披露目となった。習い始めて2年余り。吟ずる夫より私の方がはるかに緊張感が高かったのでは、と苦笑するも澄んだ伸びやかな声は、日課の早朝ウオーキングの相乗効果も?
   鹿屋市札元 神田橋弘子(68) 2006.4.15掲載

靴下の神経衰弱

2006-04-14 07:27:33 | はがき随筆
 冬の洗濯物たたみは時間がかかる。快晴でもない限りカラッと乾かず、数日分をまとめてたたむことが多くなるからだ。それぞれに厚みがある分、積み上げると山のようにこんもり盛り上がる。それを部屋中が二酸化炭素と思われるぐらいため息をつきながら一枚一枚たたんでいく。そして最後に残る靴下。同じようなサイズだから合わせるのが大変。「あれとこれ?」。トランプの神経衰弱をしているようだ。わずかな手がかりを元にすぐに合えばラッキー。どうしても合わない場合は、途中で休憩を入れたり、チグハグを合わせたり……頭の体操は当分続く。
   薩摩川内市 横山由美子(45) 2006/4/14掲載

スズメ蜂

2006-04-13 15:06:59 | はがき随筆
 昨年は近親者の新盆が多く、お盆の墓参りを本家の弟と打合せ、秋分の日に替えた。墓参りの前日、弟の嫁が電話で墓の屋根裏にスズメ蜂が不気味な感じの巣を作っている。近くの友に相談すると、すぐ駆除専門の人を教えてもらって駆除してもらったが、まだ2、3匹飛び回っている。刺されたら大変なので、墓参りは中止して本家で位牌にお参りされたらとの知らせだった。
 家で皆と会食中に、何事にもきちょうめんな弟が駆除の様子を身ぶり手ぶりで説明してくれた。作業に携わった人の苦闘が伝わってきた。
   姶良町平松 谷山 潔(79) (2006/4/13 掲載)

まさかの逆転劇

2006-04-12 10:47:58 | はがき随筆
 兄(8歳)の空手の練習を毎日見てきた弟(4歳)は、これほど厳しい道だろうかと絶対にやらないと決めたようだ。少年空手道大会の1カ月前、兄の先生に、園児の団体戦に1人足りないから弟に出場をと依頼され、娘は迷っていた。拒んでいた弟も夢のオモチャの誘惑にひかれ、1回だけの約束で出場する事を決めたのは、1週間後だった。猛練習のかいあってリハーサルでの「型」はバッチリ。ところが大会当日、「出ない」と泣きわめき、もう大変だった。大舞台にプレッシャーも限界だったのだろうか。可哀そうに。それより慌てたのは親の方であった。
   鹿児島市城山 竹之内美知子(72) 2006/4/12 掲載

ピアノと金魚

2006-04-11 14:21:19 | はがき随筆
 大人のためのピアノ教室に通い始めて1年が過ぎた。昨年の暮れには発表会も体験した。いくら不器用な私でも、和音の入った曲も弾けるようになった。ピアノのすぐ脇では体長17~18㌢の金魚が1匹泳いでいる。最近気が付いたのだが、その金魚、私がピアノの練習を始めると急に動き出し、パシャッと水音を立てて跳ね上がるのだ。大きな体をもて余しているのか、普段はあまり活発には動かない。それがピアノの音を聞くと体をくねらせるのだ。特に和音が好きらしく、ドミソやレファラで跳ねる。わが家にはピアノ好きな金魚がいる。
   西之表市西之表 武田静瞭(69) 2006/4/11 掲載

志風さんさようなら

2006-04-10 15:33:55 | アカショウビンのつぶやき
4月10日 
 6年前「毎日ペンクラブ鹿児島」の発会式ではじめて志風忠義さんにお会いしたが、車椅子の志風さんは、お友達と一緒に最期まで参加してくださった。
 毎日新聞鹿児島版に「はがき随筆」の投稿欄がスタートして16年、最初から投稿を続け不自由なお体にもかかわらず、いつも自然体で前向きに四季折々の話題を書きつづってこられた。特にコスモスがお好きで、秋になると必ずコスモスのエッセイを読ませて頂いた。
 趣味で作る布のコスモスを差し上げたいと思いつつ果たせなかったが、志風さんは自然の中で咲く、命に溢れたコスモスが一番お好きだったのかも…と思う。
 お便りを差し上げると必ず礼状を下さった志風さん、「読みにくくて…」と書かれた一文字一文字に真摯に生きる志風さんの姿が重なり何回も読み返したものだった。
 多くの方々に勇気を与え続けた志風さん、すべての困難から解放されてゆっくりとおやすみください。(アカショウビン)

父の日記帳

2006-04-09 16:57:48 | はがき随筆
 亡き父の日記を読み返してみた。
 教職にあったが、機会があれば若い人たちと教育論をたたかわせては、にぎやかに酒盛りを始めていた。
 私の手紙も誤字脱字は訂正され、何回も送り返された。
 そんな人だから、淡々とした文が並んでいたが、私の夫が急逝した時は「娘は3人の子どもを育て上げられるのだろうか。陰で支えてやらなければ……。由井ちゃん、頑張れ」と記し、文字も乱れて、父親の溢れそうな苦悩と愛情が読み取れた。
 庭の桜が満開だ。24年前の日記帳に、一片の花びらが舞い降りてきた。
   阿久根市赤瀬川 別枝由井(64) 2006.4.9 掲載

ラジオで地域づくり!だれでもラジオ!どこでもリスナー!

2006-04-08 23:11:08 | アカショウビンのつぶやき
4月8日
 「おおすみ半島コミュニティ放送ネットワーク」計画がまもなく実現します。鹿屋市、肝付町、志布志市を放送エリアとする3つのコミュニティFM局を同時に開局し、3つのNPO法人が放送事業者となり共同運営するものです。パーソナリティ養成講座や模擬番組制作も順調に進んでいます。
 4月8日のパーソナリティ養成講座はMBCパーソナリティの二見いすずさんの指導でインタビューの練習でした。
 何を聞きたいのかどう質問するかまずストーリーを作る。
 照れや恥ずかしさを捨てパーソナリティーになりきること。
 最後はきちんとしめる。
 聞く本人が楽しいと雰囲気はそのままリスナーに届きます。
などと助言をいただき、新しく参加した3人にインタビューが始まりました。
 さすがにうまい! 聞き手に乗せられてしゃべりすぎたかなと反省しきりでした…。いつか、「はがき随筆鹿児島版」をFMの電波に乗せて、発信出来ればいいなぁと夢見ているアカショウビンです。
「おおすみ半島コミュニティ放送ネットワーク」についてはこちらへ
 daredemoradio


難易度1

2006-04-08 11:21:01 | はがき随筆
 難易度を見る。3度、パス。
 きょうは1度、私向きと飛びつく。毎日新聞「日曜くらぶ」のスリザーリンクのペンシルパズル。
 このパズルは私の場合、難易度が高いと返ってストレスをためこむ。
 ここで線がつながるはずなのに、つながらず、消したりつないだり。それでも全体がつながった時の達成感ときたらたまらない。
 今朝は5歳の孫がのぞき込む。そのうちに、この子も私を超えていくだろうと思いながら、ほらっと誇らしげに完成図を見せる。たまに難易度1を作ってくださる「ニコリ」さんに感謝。
   霧島市国分中央 口町円子(66) 2006.4.8 掲載

ピンキーリング

2006-04-07 15:37:16 | はがき随筆
 ある時、遊びに来ていた叔母はバッグから小さな布袋を取り出した。それには指輪やネックレスが数点入っていた。「私が死んでからは、あんたたちは何ももらえんやろう。だから今のうちに分けてやろうと思って」。実子のいない叔母は、私や妹、私たちの子供たちを実の孫や子のように可愛がってくれた。私と妹は叔母の思いに胸がつまった。そして、躊躇しながらも分け合ったのだった。それから2年余りして叔母は逝った。小柄な叔母の指輪は、私の小指にしかはまらない。先日の息子の結婚式にもはめて行った。「おばちゃん、一緒に行こうね」と。
   出水市明神町 清水昌子(53) 2006.4.7 掲載

優しい香り

2006-04-06 10:49:44 | はがき随筆
 激しい夜半の雨もやみ、沈丁花のふくいくたる香りが一面に漂う。その前は八重咲きの水仙の一群。ろう梅が何とも言えない香気を放ち清々しい一時の安らぎをもらっていた。
 幼いころからバラや梅の花を小瓶に入れ、遊びの香水を作っていた。そのせいか鉢物を求める時も気に入った香りかどうか確かめる。ハープを乾燥させて枕の中に入れる事もある。ジャスミンの花束、クチナシ、ライラックなどもこれから楽しみだ。華やぐ高価な香りを見につけるよりも、さわやかに通り過ぎる野の花がうれしい。
   薩摩川内市高江町 上野昭子(77) 2006.4.6掲載