はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

お受験ママ

2006-04-05 13:58:05 | はがき随筆
 ある日の列車の中で見た光景。母親は私より少し若く、息子は医学部の受験生らしい。辺りをはばからず、と言うより自慢げに、もっぱら母親がしゃべっている。「○○大は土田舎にある」とか「ママが何々してあげる」とか。勉学のためには、キャンパスは郊外にある方がいいような気がするけど、と思いながら聞いていた。
 新幹線からリレーつばめに移った時に「まあ、すごい偶然。座席が一緒だわ。笑っちゃう」と言う母親の声に周囲も苦笑い。乗り換えで混雑しないようにあえて同じ席にしてあるのだから。彼は、数年後どんな医者になる?
   鹿児島市上荒田町 本山るみ子(53) 2006.4.5掲載

赤飯のお陰

2006-04-04 08:56:39 | はがき随筆
 去る日曜日、赤飯を無水鍋で炊くことにしたが、水加減と所要時間にやや不安を感じながら炊きあがるのを待った。そんな折、友人の奥さんが初物の蕨に、あく抜き用のソーダを添えて届けてくださった。教えられた通りのあく抜きをして赤飯の出来上がりを待った。炊けた赤飯はうまく出来たので近くの知人や身内に配り、喜んでもらった。ある方に山の筍を湯がいたと言って新筍をちょうだいした。お陰で、蕨と筍のみそ汁、赤飯という楽しい予期しない夕食を満喫し、「情けは人のためならず」かと感じ入った次第だった。(画像はおいしいねっとさんより)
   薩摩川内市樋脇町 下市良幸(76) 2006.4.4掲載

吉相の場所

2006-04-03 13:07:44 | かごんま便り
 鹿児島城(鶴丸城)は、占いで築城の地が決められたと聞いた。城跡には今、県歴史資料センター黎明館などがある。地図を見つめた。山が迫っていることは分かる。どこにでもある地形のようだ。なぜ、ここが吉相なのか、何が基準になったのか分からない。
 そこで尚古集成館に用件を伝え、訪ねたら関係する資料をそろえて、田村省三館長が説明してくれた。
 その地を推薦したのは中国人の黄友賢。鹿児島に上陸したのは1560年で、医学、兵法、儒学、占いに通じ、島津家に300石で用いられた。福建省江夏県の出身だったことから、名を江夏友賢に改めたという。
 山の麓は東に流れのある「青龍」、西は「白虎」、窪地がある南は「朱雀」、丘陵のある北は、「玄武」。この四神に守られた神仏の加護がある場所として家久公に勧め、1601(慶長6)年に築城にとりかかった。
 高松塚古墳やキトラ古墳などにも描かれている四方の神のことだ。以前、読んだ本を思い出した。四神は色でも表され、日が昇る東は青、南は赤、日が沈む西は白、北は真夜中の太陽の黒。青の青龍、赤の朱雀、白の白虎、黒の玄武と言うとも書いてあった。
 ただ築城の地は火難の相があるとされ、中国から霊符尊神を取り寄せて祭った。しかし元禄時代に光久公が本尊を下屋敷に祭り、本丸は炎上したが、下屋敷は無事だったなどの説明を田村館長からしていただいた。
 また、興味深い話もたくさん聞いた。これは、別の機会に譲るとして、私が間違っていたことに気づいた。最初に見た地図は現代の地図。整備された国道、街などが掲載されている地図だった。これでは昔の地形と比較出来るはずはない。
 そこで築城の時期よりも新しい江戸時代の城下町の絵図と、現在の地図を照合したところ、昔は城の東側に川が流れていた。川は現在、道路になっており、その道路沿いに毎日新聞鹿児島支局が建っていた。
 川は堀のような感じて描かれているが、以前からあった川を整備したと考えれば「東に流れる青龍」に合点がいく。さらに電車通りから南は海岸で、いかに広く埋め立てられているのかが分かる。
 海に向かって選ばれた吉相の地と城。これも海外との交流が盛んだった鹿児島ならではの特徴だろう。
   鹿児島支局長 竹本啓自  2006.4.3日掲載

マラソンを見て

2006-04-03 12:05:54 | はがき随筆
 スポーツを見るのは好きだがなかでもマラソンに惹かれる。
 長丁場を独りで孤独な戦いに挑む姿が素晴らしい。
 雨の降る休日の午後、名古屋国際女子マラソンを見た。
 渋井選手の独走でこのまま終わるかと思ったが、広山選手が追い上げ、ついに逆転優勝した。渋井選手は可哀そうだったが、夫婦の努力による広山選手の優勝には感動を覚えた。そして思わず嬉しくなって涙ぐんだ。
 広山選手の努力と頑張りに感激した。そして感動を覚えることは、人生にとって大事なことだと思った。
   志布志市志布志町 小村豊一郎(80) 2006.4.3掲載

さくら

2006-04-02 19:59:45 | アカショウビンのつぶやき
4月2日 
 すべて伐られ整地された市役所の駐車場にたった1本だけ残された桜。毎年健気に花を咲かせ、殺風景な駐車場を春爛漫の景色に変えてくれる。
 朝からの激しい春の嵐に必死に耐えている姿がいたいたしい。ようやく雨がやんだのでライトを提げて見に行った。5分咲きの花はしっかり咲いていた。「よくがんばったね」と声を掛ける。
 車椅子の義母と夫、桜吹雪の中でおにぎりを食べたのは何年前だろう。あれが三人の最期のお花見だった。降りしきる桜の花びらの華やさと共に思い出す。

怨憎会苦

2006-04-02 16:32:36 | はがき随筆
 「四苦八苦」という言葉がある。これは人間が生きていく上で一度は会わなくてはならない八つの苦しみのことである。その中で「愛別離苦」という苦しみを受けて悲しんでいる人もあれば、逆に怨(うら)んだり憎しんだりしなくてはならない「怨憎会苦(おんぞうえく)」の苦しみと遭って悲しんでいる人も周りには多い。何かの利害や意見の違いによって、急に気まずくなって悩んでいるんでいるという体験談など、ストーブを囲んでの談義は尽きることがない。やがて、聞いていた1人が「自分が変われば相手も変わる」の発言に一同大いにうなずいた。
   志布志市志布志町 一木法明(70)  2006.4.2掲載

陽気に誘われ

2006-04-01 10:08:28 | はがき随筆
 ようやく暖かな日差しが我が家の狭い庭にも入るようになり、ちょっとだけ外の空気に触れてみたくなる。
 冬眠から目覚めた動物たちのように。
 スーッと息を大きく吸い込み春の訪れを感じる。ラッパ、黄色、白色の八重の水仙が一斉に咲いて目を楽しませてくれる。
 一枚ずつ服装も軽くなり、体の動きが少しずつよくなるこれからの季節。
 私にとって快く過ごせる半年間の季節到来。
 少しだけドライブも楽しみたい。
   鹿屋市新川町 三隅可那女(61) 2006.4.1日掲載 (写真はおたくさ日記さんより)