はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

何を思うや

2014-10-01 23:49:54 | はがき随筆
 娘が小1の時、肺結核の夫の闘病も5年目。ある日、夫が「私が元気なら有子に英才教育をしてやるのだが。お前さんには無理だろうな」と言った。カチンときた私は「アリコは勉強も出来てしっかりした子と先生も褒めておられます」と言葉を返した。夫は何を思ったか、一瞬キッとなったが、寂しげに「そうか」と言って黙ってしまった。
 夫の切ない気持ちを思いやらなかった我が心の狭さと冷たさが悲しく悔やまれた。
 今、中3と小6の孫が先々の志望校目指して勉強に励んでいる。夫が存命なら何を思うだろうか。
  鹿児島市 内山陽子 2014/9/30 毎日新聞鹿児島版掲載