はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

小さな春

2015-02-09 21:48:52 | はがき随筆
 1月7日、人日の節句も終わり、また新しい年が静かに動き始めた。
 「今日も一日よく働いたなあ」と思いながら、車を走らせていると、正面に広がる青く美しい山々、青い空。「きれいだなあ」あれ、なんだか日が少し長くなり、日差しも柔らかく暖かいな。ああ、春が少しずつ近づいているんだな。そういえば、チューリップもヒヤシンスもちょこんと目を出していたな。春の足音が少しずつ聞こえてくる。うれしいな。
 「ただいま。小さな春を見つけたよ」 
 母との会話が弾む。
  出水市 山岡淳子 2015/1/31 毎日新聞鹿児島版掲載

困ったちゃん

2015-02-09 21:42:48 | はがき随筆
 正月にやってきた孫たちが、「わあ、こたつ、いいなあ」と言って潜り込んだ。私も入り、つつき合う。
 お客さんも、食事もこたつで済ましている。テーブルに物を載せるのが嫌いなのは父似。片付けが下手なのは母似。
 そして、おかしいのは、孫たちが散らしている傍らで、ちり取りとほうきで掃除している自分。これは、私が最も嫌い、陰で亡夫に愚痴を言っていた遠い昔の姑の姿だ。
 食事の後、つままようじを使っている小3の孫。「あら、見てたのね」。変なことを覚えるね。困った、困った。
  阿久根市 別枝由井 2015/1/30 毎日新聞鹿児島版掲載

庭師と口ひげ

2015-02-09 21:36:28 | はがき随筆
 師走に入り庭木の剪定をしてもらった。12月にしては晴れて穏やかな日和だった。
 庭師はいつものスタイルでひょっこりとやってきた。
 道具を自転車に積み、長い脚立を担いでいた。伸びた髪を無造作に後で束ね、野球帽をかぶり、一見若者風だが、立派な口ひげが似合っている。「ひげの手入れも大変ですね」とは聞けなかったが……。
 心地よい鋏の音で、見ている間に枝が造られ、見慣れた庭もたちまち変わっていく。
 「きれいになりましたねぇ」「年々体力が無くなってなあ…」とひげは笑った。
  鹿児島市 竹之内美知子 毎日新聞鹿児島版掲載

おちによせて

2015-02-09 21:29:43 | はがき随筆
 昨年は、初めて既成のおせを取り寄せた。低いランクの品だったからか、期待はずれ。今年の正月はワンランク上をと考えていたが、結局手作りした。
 何種類もの料理をこしらえ、重箱に見栄え良く盛った。「疲れんように休み休みせんと」。食べるだけの夫は親切に言ってくれた。
 この夫とよほど相性が悪いのか、いさかいばかり。依然としてどぎつい物言いしかできない私にも原因があるのだが……。
 不仲の夫は「うまい。さすが」とお世辞を言いつつ喜んで手作りおせちを食べてくれた。私1人がカリカリしているのかも。
  鹿児島市 馬渡浩子 2015/1/28 毎日新聞鹿児島版掲載

立ち会いは両手 孫も見てます

2015-02-07 23:58:04 | 岩国エッセイサロンより
2015年2月 4日 (水)

   岩国市  会員    吉岡 賢一

 大相撲の本場所が始まると、5歳の孫は幼稚園から帰ってくるなり、おやつもそこそこに「おすもう見たい」とテレビの前に座る。
 「こっちは誰?相手はなんていう人?」と一番一番、私にしこ名を確かめては画面に見入る。そのうち「えんどーはまだ?」と言い始める。一人前に遠藤関の大ファンで、懸賞の垂れ幕を数えるのが楽しみなようだ。
 そんな孫が時々「じいちゃん、この人ずるい」と言う。きちんと両手をつかずに立ち上がった力士を幼い目は見逃さない。
 昨今、がっぷり四つに組んだ力相撲が以前より減り、立ち合いで変化してのはたき込みなど小手先の相撲が多くなった気がする。せめて「土俵に両手をつく」という立会いのルールは確実に守らせるべきだ。片方の手は確実に土俵につけてにらみ合い、それに片方の手を添えてお互いに下からぶつかり合う。そんな相撲の基本姿勢の美しさと、対戦相手に対する敬意を欠かしてはならない。
 日本の国技である大相撲。幼い子どもの純真な目が見ている。ルールを守り、気品と強さが備わってこそ、ファンを魅了する相撲界は続いていくのであろう。

        2015.2..4  朝日新聞 「声」  掲載 岩国エッセイサロンより転載

ねんねこでおんぶ

2015-02-07 23:56:18 | 岩国エッセイサロンより
2015年2月 4日 (水)

山陽小野田市  会 員   河村 仁美

娘から昭和レトロな写真が撮れたとメールが届いた。1歳3カ月の孫が大ばあばにねんねこ半纏でおんぶされている。赤ちゃんをおんぶする姿をあまり見かけないので懐かしい。孫のお昼寝はいつも大ばあばにおんぶされて寝ているという。大好きな大ばあばの背中はぴったりとくっついて温かさを感じたり、もたれかかって甘えたり、心が安らぐ場所なのだろう。いつまでおんぶしてもらえるかな。 
 娘は孫が反抗期になった時にこの写真を見せるつもりだそうだ。とてもかわいがってもらったことを知って、どんな反応をみせるのか楽しみにしている。

  (2015.02.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

ひな祭り

2015-02-07 23:55:45 | 岩国エッセイサロンより
2015年2月 3日 (火)

岩国市  会 員   稲本 康代

 何年ぶりだろう? 娘たちが我が家を巣立ってから、おひな様を飾った記憶がない。今年は、同居した孫と娘が、はやばやと飾ってくれた。
 木目込みのやさしい雛人形の顔を眺めていると、自然に笑みがこぼれる。四季折々の行事を楽しむ日本の風習は素晴らしいと、あらためて感じ、大切に伝えていかねばとも思う。それと同時に平和だからこそ、こうした時間を持つことができるのだと、しみじみ感じるのであった。
 ひな祭りの歌を孫と口ずさみながら、平和ということについて話し合う機会にしようと決めた。
  (2015.02.03 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載