春先になると、お店に夏糸が並ぶ。早速帽子を編み出かけたある日、友達が駆けより帽子に触れ、入所中の母にぜひ編んでほしいという。若いころはモダンな母で、105歳ながら娘と分かってくれると話す。長寿のお手伝いにまればと、柔らかく淡い色で編んで差し上げた。よく似合い家族も喜んでるとの電話に、私はご長寿に少しあやかりたくなり手を合わせた。
やがて友達からお茶の誘いがあり、108歳で亡くなられたことを聞いた。あの帽子を洗って母にかぶせ、ひつぎを見送ったのと目を潤ませながら悔いのない笑みを浮かべた。
薩摩川内市 田中由利子 2016/3/6 毎日新聞鹿児島版掲載
やがて友達からお茶の誘いがあり、108歳で亡くなられたことを聞いた。あの帽子を洗って母にかぶせ、ひつぎを見送ったのと目を潤ませながら悔いのない笑みを浮かべた。
薩摩川内市 田中由利子 2016/3/6 毎日新聞鹿児島版掲載