はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

欲まみれの貢献

2019-12-25 19:28:50 | 岩国エッセイサロンより
2019年12月18日 (水)
  岩国市  会 員   沖 義照

 「年末ジャンボ宝くじは1等の前後賞を合わせて10億円と超豪華賞金が魅力の宝くじです」と大きな広告が載っている。
 何度か買い求めたが、当たったこともかすったこともない。広告の隅には小さな字で「収益金は街の公共事業等に役立てられています」と書いてある。今どこの町も台所事情は火の車。公共事業も削られ続けている。
 私といえば高齢者に位置づけられ、国の厄介者に甘んじている。たとえ当たらなくても宝くじを買って少しは国のお役に立ってみたい。こんな殊勝な気持ちが億万長者への夢を現実にしてくれ……ないだろうなぁ。
  (2019.12.18 毎日新聞「はがき随筆」掲載)




年賀状

2019-12-25 19:27:43 | 岩国エッセイサロンより
2019年12月 7日 (土)
   岩国市  会 員   横山 恵子
 そろそろ年賀状を書く時季となってきた。この7年間に父、夫、姑、母を次々と亡くし、年賀状のない正月を何度か迎えた。喪中はがきを出すと電話やはがきをいただき、情けが身に染みた。
 夫を亡くした年の師走、教え子からお供えと手紙。「休み時間にはドッジボールや鬼ごっこをして遊んでもらった……」等の思い出話に思わず号泣。晩年の闘病生活の辛さを涙が洗い流した。「元気出してやれよ」と夫が背中を押してくれたようにも思えた。
 この1年もいろいろあった。年賀状が書けることは幸せと思う。
  (2019.12.07 毎日新聞「はがき随筆」掲載)




冬の波紋

2019-12-25 19:19:21 | はがき随筆
 年末迫る椎葉村。仕事で扇山の中腹へ車を走らせた。気温計はひとあし先にと、零へ向けてカウントダウン。くもりがかった、窓と山なみ。
 眼前の頂は妙に白く見えた。最大ズームしたカメラ越し、樹氷だと気付く。周囲を見渡しても、他の山々にはまだ見えず。吹き下ろす風は、辺りに一層冷えた空気のおすそわけ。次第に周りへ広がる冬の波紋。はじめの一滴をこの山が落とす、
 「やうやう白くなりゆく山ぎわは……冬でもか」。別な意味で当てはまった枕草子の一文に感心し、心だけは温まった。
 宮崎県日向市 梅田浩之(27) 2019/12/25 毎日新聞鹿児島版

一円切手

2019-12-25 19:12:45 | はがき随筆
 62円のはがきを投函するため郵便局の窓口で「1円切手を一枚だけですみません」と言うと「かまいませんよ」と若い女性が切手とポケットティッシュを渡してくれた。
 「たった1円でティッシュはいただけません」と言うと笑顔で「どうぞお使いください」と言う。私は心の中からホワーッと温かくなった。彼女にとっては1円切手もティッシュも仕事にすぎないのかもしれないが笑顔は人の気持ちを幸せにする。
 帰り道、なんで新しいハガキを買わなかったかと後悔した。その日の家計簿には「切手1円」と心を込めて記入した。
 熊本県天草市 岡田千代子(69) 2019/12/24 毎日新聞鹿児島版

センテナリアン

2019-12-25 19:03:43 | はがき随筆
 我が家の姑は介護施設にお世話になっており、7月で100歳だった。本紙にも100歳をセンテナリアン、百寿者とも表現するとあった。教職の道を歩んだ義父は97歳で天寿を全う、夫は最強の長寿遺伝子を受け継いでいる。その暮らしぶりは当然、食事に気を配り、運動といえば田畑でコメや野菜を作り、作業小屋の囲炉裏で干物を焼き、昼寝も欠かさず、文芸誌を愛読しては、夫婦、時に親子で政治討論会が始まるのが常だった。現在、姑は元気な頃と違い、笑顔が可愛い。どのような生き方が健康かつ長寿につながるのかを身をもって示してくれた。
 鹿児島県鹿屋市 中鶴裕子(69) 2019/12/23 毎日新聞鹿児島版

カッターナイフ

2019-12-25 18:56:19 | はがき随筆
 カッターナイフの存在を教えてくれたのは、中学校の美術の先生だった。薄い刃には線が入っていて、切れ味が悪くなったら折ることができる。それは本当に新鮮だった。以来、私の筆箱には便利な文房具としてカッターナイフが入っていた。
 しかし、世の中は変わった。10年程前飛行機に乗るとき、それは一時預かりとなり、到着した際に返ってきた。そしてついに昨年飛行機に乗る時没収され返って来なかった。職場でも「何でナイフを持ち歩いていると?」と聞かれた。こうなるともはや危険人物である。私の筆箱からカッターナイフは消えた。
 宮崎県延岡市 渡辺比呂美(62) 2019/12/22 毎日新聞鹿児島版


ジュズダマ採り

2019-12-25 18:49:43 | はがき随筆
 最高の小春日和。かねてから気になっている場所へ、入れ物を持って出かける。休耕田の脇のあちこちから、「私はここよ」と真黒い小さな実が呼んでいる。
 すぐにしゃがみこんで作業開始。6個もにぎると手からこぼれる。折角採ったのだからと下を探すが、雑草の陰で見失う。それでもいつの間にか袋いっぱいに。黒い実は葉っぱの根元に隠れていて採りにくい。グレー、やや白い、白い実と成長度によって変化した可愛い実。
 「何にするの?」と今時聞かれそうだが、私は眺める楽しさと手触りを楽しむためかな。
 熊本県八代市 鍬本恵子(74) 2019/12/21 毎日新聞鹿児島版

はがき随筆11月度

2019-12-24 16:58:59 | はがき随筆
 月間賞に島田さん(宮崎)
 佳作は岩下さん(宮崎)、的場さん(鹿児島)、中村さん(熊本)

 はがき随筆11月度受賞者は次の皆さんでした。(敬称略)
【月間賞】 18日「おかげさまで」島田葉子=宮崎県延岡市
【佳作】 5日「一手」岩下龍吉=宮崎県串間市
▽ 的場豊子「モデルデビュー」的場豊子=鹿児島県阿久根市
▽ 「気配り運転士」中村弘之=熊本市東区

 「おかげさまで」は、買い物帰りに、エレベーターが点検中で、カートを抱えて3階まで上がれないと立ちすくんでいたら、赤ん坊を抱いた若い奥さんに助けられたという内容です。なんでもない内容のようですが、筆者の年齢が86歳ということを考えるとその人が「天使のようにさえ思えた」という感激が、単なる比喩ではなく、読む者にも実感として伝わってきます。
 「一手」は、待ったのできる囲碁ゲームのルールを活用して、さかのぼってゲームを再開した時に、人生も待ったができないものかと思った。人生は後悔しても戻れない。しかし待ったなしに進んできたためによいこともあった。それが人生の味というものであろう。残りの時間の一手を大切に打たねばという、いわば決意表明です。
 「モデルデビュー」は、こんなこともあるのかというような、珍しい話です。退治していたはずだったのに、今年も寝ているときにムカデに刺された。慣れたもので、退治して治療した。最初のときは、グローブのように腫れた手を、診療所の医者が治療してくれたうえで、写真に撮られた。その写真は今でも病院に残っていて、手だけのモデルデビューではあった。ユーモアがいいですね。
 「気配り運転士」は、市電の中で、手押し車の老女の降車を手伝ってあげたら、それを見逃さずに、降りるときに礼を言ってくれた運転士の気配りに、かえって恐縮したという内容です。私は鹿児島での市電利用ですが、最近運転士が親切になったことを実感します。熊本で、昔でいえば車掌さんみたいな女性の搭乗員が、いろいろ案内してくれているのに感心しました。
 この他に、かつて母親に叱られたことも今思えば愛情であったという、前田隆男さんの「おませな子」、余程ルリタテハがお好きだと見える、外園恒子さんの「ルリタテハⅡ」、生活の中に残る慣習の意味する不思議についての感想を述べた、西洋史さんの「慣習の謎」が印象に残りました。
鹿児島大学名誉教授 石田忠彦

ライオンキング讃

2019-12-24 16:27:14 | はがき随筆
 ミュージカル「ライオンキング」が日本で初演されたのは平成10年。東京、大阪、名古屋、福岡での公演を計9回観た。
 オープニングの夜明けのシーンから、胸が熱くなる。何度観てもいい。今回は友人2人を誘って福岡へ出かけた。
 車の中で、昨年末からCDを聴き続け、テレビでディズニーのアニメを見、更に映画の実写版も見た。1年近く期待感に浸っての観劇。2列目で食い入るように観た。どの曲も歌える。
 その日のカーテンコールが10回ほどもあった。「讃」は台湾語で「ブラボー」だとか。讃。讃。
 鹿児島市 本山るみ子(67) 2019/12/20 毎日新聞鹿児島版

噴煙の吹流し

2019-12-24 16:19:11 | はがき随筆
 鹿児島市街から毎日桜島の噴煙を眺めている。昨日は北、今日は南、と飛行場の吹き流しのようである。噴煙が左(北)へ流れると南風で暖かく、右(南)へ流れると寒くなる。近ごろは正確な天気予報がなされるので観天望気の楽しみは減るが、予報通りに噴煙が流れるとなるほどと納得する。
 さて、南東風になると市街地方向に噴煙が着て灰が降る。しかしこのときは西方に低気圧があり近いうちに雨が降ることが多く、灰を流してくれる。逆に北西の季節風が吹くとこちらは安堵するが、大隅半島は降灰に悩まされる。気の毒である。
 鹿児島市 野崎正昭(88) 2019/12/19 毎日新聞鹿児島版

木守柿

2019-12-24 16:11:23 | はがき随筆
 収穫後に一つだけ鳥のために残しておく柿を「木守柿」というそうだ。今年も、木守柿を残した。秋空に映える柿色が美しかった。鳥が食べる場に出会いたかったが、いつの間にかなくなった。今は紅葉した葉がちらほら残り、柿の季節も終わる。
 だが近頃では、立冬を過ぎてもたわわに実をつけたまま放置された柿が多いと新聞に載っていた。住民の過疎化や高齢化もその要因らしいが、その柿を餌にとツキノワグマがやって来るとのこと。人的被害も出ているので切実な問題になっている。
 穏やかな晩秋は、木守柿に鳥という風情であってほしい。
 宮崎市 堀柾子(74) 2019/12/19 毎日新聞鹿児島版

流れる……涙

2019-12-23 17:00:09 | はがき随筆
 何故。何故、何故……怒りより悲しみ……。地道な奉仕者の姿が消えた。何事も綺麗ごとに仕立てられ空っぽにされかねない時代に、初めから変わらず訥々と、流されず見失わず志を貫く人は数少ない。中村哲氏はその少ない本物の存在でした。
 氏の人柄を信頼しペシャワール会に賛同。その事業が途絶えずに続き、やがて壮大な農地が多くの人々の生活を支える。
 素朴だが素晴らしい。見失った条理に気づかせる事業です。先々を見据えた透徹した考えを見失わない事。氏は言うだろう「憎しみよりも愛を……」と、キリストの言葉そのままに。
 熊本県阿蘇市 北窓和代(64) 2019/12/19 毎日新聞鹿児島版

ド根性

2019-12-23 16:50:14 | はがき随筆
 家業の繁忙期の夏が終わり、ひさしぶりに畑に行った。雑草がおいしげり放棄しようと思ったが、無農薬の虫食いの自慢の野菜をいつでも食べられる幸せと考えると、せめてダイコンや葉物だけでもと鍬を入れた。ダイコンの二葉や本葉がでてくると、他のものも……とやる気がでてきた。まわりには雑草が次の世代に継ごうと花や種をつけている。中でも花も種も知っているのに名前も知らぬ草。ド根性草。近づこうものなら束で3本足をもった種がくっつく、洗濯してもとれない。このしぶといド根性魂、私にもあったら人生少し変わったかも!
 鹿児島県阿久根市 的場豊子(73) 2019/12/19 毎日新聞鹿児島版


いいご縁

2019-12-23 16:42:07 | はがき随筆
 「イノシシさんが半分、私が半分」と彼女はさっぱりと言って栗林を進んで行く。火バサミで草むらに落ちたイガ栗を上手にみつけては長靴でぐいっと踏み、現れた実を「ほい」と私に手渡す。林の中はイノシシに先手を取られ、収穫は少ないが彼女は多くを嘆かない。「あん衆たちも何か食べんと生きられん」とイノシシに心を向ける。
 淡々と明るい80歳の彼女とは娘の姑としてご縁が出来た。
 春を待って山菜を、秋を迎えて栗の実を……と籠を背覆って2人で歩く。そんな時、彼女はいつも温かな言葉を私にくれる。「いいご縁をいただいた」。
 宮崎県延岡市 柳田慧子(75) 2019/12/19 毎日新聞鹿児島版

メタボ検診と対応

2019-12-22 22:22:26 | はがき随筆
 毎年1回、特定病院で定期検診を受けている。身体検査と血液検査で何時も指導されるのが、体重と腹囲である。
 今回は。特定保健指導委員から詳しい生活指導を受けた。朝と夕食後の体重測定で、食事のカロリーをコントロールすることであった。運動と毎日の食事が体重に影響していること。その結果、腹囲と体重の目標設定によって、朝・夕の体重測定を3か月続けることになった。 
 年齢と共に体力は落ちているが、生活習慣病からの脱出のために、目標は食事と運動の管理、特に、毎朝のテレビ体操とエンジョイゴルフで頑張りたい。
 熊本県大津町 小堀徳廣(71) 2019/12/19 毎日新聞鹿児島版