「はぁー、一世紀も生きちょっとじゃねぇ」。誰かがため息交じりにつぶやいた。
山が萌黄から深緑に変わる頃、母は101歳の誕生日を迎えた。80歳の長男を頭に6人の子供たちが集合した。「母ちゃんおめでとう」。それぞれの口から出た言葉だ。耳が遠くなり不可解な顔をしている。
妹が耳元で「母ちゃんのことよ」とつなぐ。真顔から少し笑顔がこぼれた。「母ちゃんもっと長生きせにゃいかんよ」。「もう、父ちゃんのとこに行きたいけど、よう行かん」と弱気を見せる。
気の遠くなるような年月を経てきた母は今、幸せに暮らす。
宮崎県延岡市 川並ハツ子(77) 2022.6.18 毎日新聞鹿児島版掲載