喜びも苦しみも四国遍路旅 ２４６号

四国を遍路旅する日がついに来た。２５時間の連続勤務を終わらせ、事業所を後にして徒歩でＪＲ東海笠寺駅に向かい、青春１８きっぷに押印され、１０時１４分の電車に間に合った。金山駅で新快速に乗り換え、大垣・米原・姫路・相生・岡山、瀬戸大橋を渡って高松の各駅で電車を乗り継ぎ、午後６時に栗林駅に到着し駅前のインターネット予約したビジネスホテルにチェックインした。３月２４日の出来事である。

比叡山延暦寺の参禅会・定年前の会社の本社が神戸で会議に出張した事・自宅は岡崎で転勤で彦根に居住した経験があり、頻繁に往復した馴染みの路線である。伊吹山登山・番場の忠太郎で有名な醒ヶ井駅近くの地蔵川の梅花藻や小魚ハリオそして国宝彦根城・近江八幡の伊崎寺の千日回峰行者である故光永澄道師の護摩供に通ったことなどを懐かしく思い出す。

姫路界隈の山容が異常であることに気が付いた。ほとんど禿山である。たぶん姫路城の造営の際に材木として伐採した。そして雑木は生活の為に燃料として根こそぎ利用してしまったのだろう。地中海のギリシャの山に相似している。しかし日本は雨に恵まれ、徐々に回復しているように見える。人間の我欲で自然を破壊する時は、目に涙しながら厭々行動する心が有って丁度良いと思うのである。

開通２０年を迎える鉄道と自動車道の併用橋である瀬戸大橋は怪物で恐怖すら感じるのである。確かに人間には時間を節約する便利性の視点から優等生の設備である。しかし瀬戸の自然は迷惑しているだろう。時間を節約することにどれ程の価値があるのだろうか。鳴門大橋と共に淡路島から四国に繋がる道路橋の明石大橋は竣工してから１０年経過したという。

青春１８きっぷで高松に到着する時間は新幹線利用の３倍は掛かっている。費用は６分の１である。金が無く時間の有り余っている私には新幹線が悪魔に見えるのである。しかし私は本日目的地に何事も無く着いた。結果は同じである。

夕食はホテル近くのスーパーで焼き鳥３本と稲荷寿司３個購入して、ホテルの自動販売機の缶ビールで簡単に晩酌する。食事は粗末なような印象だけれども私の心は豊かなのである。

隣室の物音が微かに聞こえるから、入浴すると騒音が隣室に響くと思い、すぐに就寝することにした。真相は、勤務の疲れと旅の疲れで、入浴する余裕の無い、不潔で怠慢な人間なのである。明朝に沐浴して、楽しいだろうか、苦しいだろうか、どちらだろうか、四国遍路旅を歩き始める。おやすみなさい。

後日談　新聞報道によると瀬戸大橋の塗装工事をしていた作業員が７０ｍ下の海に転落し海上保安庁の巡視艇が行方を捜索している。人間の作ったもので、人間の生命が脅かされている。