風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

箱根山の居酒屋

2012年08月22日 20時13分44秒 | 紀行文

大平台温泉は素泊予約だから夕食がない。温泉街の飲食店を探して食事する魂胆だった。過去の経験からの筋書きが通用するなんて甘い考えである。

みどり寿司、太平亭、箱根のよろずや居酒屋弥次郎兵衛、カフェ蔵茶、居酒屋てっちゃん、商工振興会の飲食店部会オールメンバーキャスト。

居酒屋てっちゃんの暖簾を潜る。カウンター五席、座敷に机二卓、六坪程の店。主人が無愛想に出迎える。生ビールと一品料理を数種注文する。

何処にお泊りですかと主人が問い、弥千代荘別館の客です。

主人の警戒の眼が笑顔に変わり、安堵の雰囲気が漂う。

店に似合わない豪華なカラオケ装置・DAMから演歌が流れる。そして歌手が歌う。数曲聞かせて頂く。皆様素人。

客のカラオケを録音し、再訪されたら流してあげると大変喜ぶんですよと主人。カラオケは歌わないが録音が趣味の様だ。主役に喜びを見出す人、脇役で笑っている人、人生哲学は千差万別多種多様、夫々に価値がある。

カラオケをすすめられたが、こんなに上手な熱唱を聞かされては怖気ずく。酒の飲み過ぎの心臓肥大を理由にお断りする。

その席に志村けんが若い女と座っていたんですよ。派手な帽子を目深に被りしきりに女に奉仕。

志村けんの番組の録画をさりげなく流すと画面に目を移し、親父、志村けんだろう、俺に似ているだろう。

派手な服装のお忍び旅の秘密が漏れていないことを信じているのは志村けん唯一人。志村けんは生粋のお笑い芸人の様だ。

ほろ酔い気分で心ほのぼの、温泉で体ぽかぽか、窓を開ければ山の冷気が心地よい。

本日は去り、明日になる。最終の電車が走り去る音が聞こえる。

草木も眠る丑三つ時、突然のサイレンの音で目が覚める。素朴な山の温泉にも文明の悪魔の声が忍び寄る。

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