絵話塾だより

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2022年1月15日(土)文章たっぷりコース・5回目の授業内容/高科正信先生

2022-01-17 22:06:30 | 文章たっぷりコース
文章たっぷりコース、2022年初回の授業は、先生の「年が改まっても不穏な世の中ですね…」というお話から始まりました。
世界情勢もオミクロン株も、気になることばかりですが、高科先生は寒いので極力家に居て、本を読んだりテレビを見て過ごしているそうです。
お正月のテレビ番組(TBS系「新春!爆笑アカデミー」)で、
沖縄でミツバチの研究をしている長谷川のんの博士と比較認知科学・動物心理学者の森山徹さんが紹介されていて
森山さんの『ダンゴムシに心はあるのか 新しい心の科学』(PHPサイエンス・ワールド新書)を読んで知っていた先生は、興味深くご覧になったそうです。



森山さんは、ダンゴムシには大脳がないのに、実験で追い込むと予想もつかない行動をとるようになることから、
「“心” とは状況に応じた行動の発現を支えるために、余計な行動の発現を抑制・潜在させることである」と定義していることを教わりました。
新年早々みなポカ〜ンとしていましたが、「心とは何か、心はどこにあるのか」は大切なテーマです。



「心悲しい」「心寂しい」は「うらかなしい」「うらさみしい」と読みます。
これは、なんだかよく分からないけれど悲しい・寂しい気持ちになるという意味で、内なる「私」の出現といえるでしょう。
「心を込めて贈ります」と口で言いながら、内心「お腹空いた」と思っているとき、「心」はどこにあるのでしょう?
空腹を相手に悟られないために我慢する、抑制されたものが出てくるときに、「心」の発現が見られるのではないか…難しいですね。

その後、いつものようにテキスト『日本語の<書き>方』(森山卓郎 著・岩波ジュニア新書)を交代で音読していきました。



この日は 3章「文」を組み立てる から、1. 文の中の関係を整える のところを見ていきました。
分かりにくい文章は、主述関係をはっきりさせたり、連結・分解したり、順序を入れ替えたり、中心になる文章を変えたりして
自分の意図するところが読み手に伝わりやすくすると良いのだそうです。
日本語は世界でも珍しい主語がなくても通じる言語ですが、主語が何かをはっきりさせた方が意味を取り違えにくいことを覚えておきましょう。
また、ついつい「〜ですが」を用いた長い文章を作りがちですが、同じ言葉の多用は避け、
一旦切って接続詞を用いて別の文章にするというのも良いでしょう。
高科先生は、一文は400字詰め原稿用紙2〜3行か、多くても4行まで。一段落は7〜8行くらいまでが限度と思っておられ、
たとえ字詰めがスカスカでもギュウギュウでも、1枚の原稿用紙に2〜3段落を目安に書いておられるそうです。

ここで、練習問題が出ました。
「渡辺刑事は血まみれになって逃げ出した賊を追いかけた」
「チリ美人はアルゼンチンの肉をたっぷり食べているセニョリータとくらべるとぐっと小柄である」
どこに句読点を打ち、順番や中心になる文章をどう変えたら分かりやすくなるか、実際にやってみました。



元朝日新聞記者の本多勝一氏の著書『日本語の作文技術』(朝日文庫)には、このような例がたくさん載っています。



上記の練習問題の場合、以下の法則が当てはまります。
○文章が長くなってくると、修飾語は長い方を先にする方が分かりやすい。
→「血まみれになって逃げ出した賊を、渡辺刑事は追いかけた」

○主語と述語は近い方が良い。
→「肉をたっぷり食べているアルゼンチンのセニョリータにくらべると、チリ美人はぐっと小柄である」



これで分かりやすくなりましたね。



休憩中に、ヴィム・ヴェンダース監督の映画「パリ・テキサス」をオススメしてくださった後
授業の後半は長田弘の詩集『深呼吸の必要』(晶文社)に収められている散文詩「あのときかもしれない」(1984年)から
一「きみはいつおとなになったんだろう」
二「きみが生まれたとき、きみは自分で決めて生まれたんじゃなかった」
六「『なぜ』とかんがえることは、子どものきみにはふしぎなことだった」
七「掛け時計がボーンとなる」 を紹介していただきました。
先生は長田弘が大好きで、無人島に持って行くなら彼の詩集にすると断言しておられました。
『詩ふたつ』という詩集(クレヨンハウス)には、「決して言葉にできない思いがここにあると指すのが言葉である」と言っています。
また、詩人の工藤直子は高科先生に直接「うまく言葉にできないなら、それはあなたが未熟だからよ」と言われたそうです。
(=人は必ず自分の思いを言葉にすることができるのよ)と言われたそうです。
詩人の言葉は深い…この後も詩人の詩集を紹介するつもりだともおっしゃっていました。

最後に前回の提出した課題「冬にまつわるもの・こと」の返却に伴い、個々の作品を紹介してくださいました。
創作あり、エッセイあり、詩もあったとか。
課題は同じでも、皆書きたいことが違うというのが大切なことですね。
灰谷健次郎の『ひとりぼっちの動物園』(あかね書房)の冒頭で
「人にはそれぞれの人生がある。あなたの人生がかけがえのないもののように、あなたの知らない人の人生もかけがえのないものなのだ。
人を愛するということは、あなたの人生を、知らない人生を知ることだ」と書いてあると教えてくださいました。

今回提出するのは「冬の絵本のテキスト」で、今回出された課題は「冬のごちそう」「冬の口福」についてです。
冬に食する食べ物、食事の時間、誰と過ごすか、何を食べるか、どんなテーマでも良く、形式も長さも自由です。
ごちそうといっても豪華な食事である必要はなく、他の人にとってはなんてことはなくても、自分にとっての「ごちそう」「口福」と思えるなら何でも良いです。
皆さんがそれぞれに思うもの・ことを文章にしてください。
できれば今日の授業で習った分かりやすい文章を書くことに留意して書いてくださいね。



よろしくお願いします。




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