この日はまず、高科先生が最近読んでいる浦沢直樹の漫画『あさドラ!』(第6巻)のお話から始まりました。
浦沢直樹は『20世紀少年』で有名ですが、こどもの描写が巧みなのだそうです。
他に、先生が大好きな吉田秋生の『詩歌川百計』(第2巻)のお話。
『海街diary』のすずちゃんが暮らしていた山形県の温泉街が舞台で、そこに暮らす人々を一人一人ていねいに描いているそうです。
あたりまえのこととして、人一人の人生は他の誰にも補えない大切なものであり、それを一瞬で潰してしまえるのが戦争なのだと、
ロシアによるウクライナ侵攻にも言及されました。
そこから授業の本題に入り、テキスト『日本語の<書き>方』(森山卓郎 著・岩波ジュニア新書)は、前回の続きで
「第4章 段落』をまとめる」から、101〜112pまでいつものように順番に音読していきます。
2.段落どうしの関係と論理
・論説文の骨組み
・導入〜「はじめ」の部分
・中心部分
・おわり(まとめ)
論説文は、前回の授業でも出てきた「序破急(はじめ・なかほど・おわり)」で構成されます。
裁判の判決文では主文は最後になりますが、一般的な場合は読者を飽きさせないように組み立てていき、
頭括型(最初に意見を書いて、その後に例を挙げること)・尾括型(まず例を挙げて、最後に意見を書く)のどちらでもかまいません。
論説文では起承転結の「転」に当たるような文章は要りません。
①導入部分では「問題点」「課題」「これから言いたいこと」を述べます。
②中心部分で、さまざまな事例を挙げて説明します。この時、段落が複数になる場合
順序があれば「まず」「次に」「さらに」とか、「第一に」「第二に」「第三に」などの言葉で繋ぎ
事例が1つだけなら「また」「そして」などを使います。具体例があれば、より分かりやすくなります。
③まとめ部分は短い文章ではないこともありますが、長い文章ならある方が分かりやすくなります。
導入部分で既に主張が明確になっていても、最後にもう一度まとめ直す双括型という構成もあります。
3.接続の重要性
・予想を裏切る「逆説」関係
予想とは異なる展開になる文脈の場合は、逆説的な表現をしなければなりません。
「〜であるが」「しかし」などの言葉で文章を繋いだり、主格助詞を一般的に使われる「が」→「は」に換えて強調したりします。
・順序によって言いたいことの中心が変わる?
逆接の場合は、後の方が主張されます。逆接を何度も使うと主張が分かりにくくなるので、多用しないように気をつけましょう。
・本筋と但し書き
文脈を換えるのではなく、前の文の補足をする場合は、「ただし」「もっとも」という但し書きを使います。
日本国憲法などの公文書でも、例外を挙げる場合などによく使われています。
・「そして」「さらに」「また」
これらの接続詞は内容を付け加えるときに使われる便利な言葉ですが、使いすぎには注意しましょう。
同じ言葉を重ねず、「第一に」「第二に」などを用いたり、時間の流れで付け加える時は「そして」、
同じ文脈を付け加える時は「さらに」、別のことを付け加える時は「また」を使うとよいでしょう。
高科先生が文章を書くときは、助詞の使い方と「、」「。」の打ち方には十分気を遣っているそうです。
基本的には読み手の受け取り方を熟考して、最終的には感覚で決めているとおっしゃいますが
書いているときには何度も立ち止まって、常に自分の書きたい様子に見合っているかを考えることが大切だということでしょう。
この日紹介してくださった詩人は、石垣りん です。
茨木のり子の『詩のこころを読む』(岩波ジュニア文庫)で紹介されている「その夜」と「くらし」を見ていきました。
「その夜」は詩集『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』、「くらし」は詩集『表札』に収められています。
石垣りんの詩は、どれも余計なものがそぎ落とされているような言葉で綴られていて、読む人の心を打ちます。
後半は、前々回の課題でもあった絵本のテキストについてでした。
テキスト(キャプション)なしの絵本というものもありますが、絵本は基本的に絵と文章がほど良い関係であるべきだといいます。
長新太の「絵本おまんじゅう論」によれば、絵本の絵と文はおまんじゅうの皮とあんこの関係にとてもよく似ていて、
お互いを引き立てるように、どちらかにボリュームがありすぎてもいけないのだそうです。
絵本のページは8の倍数でできていて(印刷する場合の紙の取り方で一番無駄がない)、
赤ちゃん絵本は16ページ(7見開き)、年中さんくらいになると24ページ(11見開き)、一般的には32ページ(15見開き)
が目安になります。高科先生曰く、この制約があるうえで書くのがおもしろいのだそうです。
お話の進み方として、導入〜中ほど〜おわりがあるとして、その中の何見開きめくらいに何を持ってくるか
大雑把な目安を立てて書くと作りやすいとのことですが、もちろんそれが全てではありません。
ということで、長新太の『おじさんあそびましょ』(絵本館)と『ちへいせんのみえるところ』(ビリケン出版)を教えていただきました。
しかしこのような作品は、絵を描く人と文章を書く人が同じでなければ成立が難しいでしょう。
絵と文を別の人が担当する場合は、ト書きを付けることもあります。
ト書きは書き手によって細かく指示する人もいれば、ざっくり説明だけして後は絵を担当する方に任せるという人もいます。
絵本は基本的にひらがなで書かれることが多いので、単語を続けて書くと分かりにくくなります。
そのため、絵本のテキストは単語の間にスペースを入れて「わかち書き」にします。
どこにスペースを入れるかは、言葉の最後に「ね」を付けて意味が通じるところを目安にします。
しかし文章を書いている途中で、ここにスペースを入れるか否か考えながら書くと思考が止まってしまうので
筆者が書き終わってから編集者が行うようですが、いずれにせよ、基本的な文章の書き方はしっかり押さえておきましょう。
ここで、前回の課題であった「もりの絵本」のテキストの参考になる作品を読み聞かせていただきました。
片山健の初期の作品『もりのおばけ』(福音館書店・こどものとも絵本)、片山令子/文・片山健/絵の『もりのてがみ』(福音館書店・こどものとも傑作集)、
こうやすすむ/文・片山健/絵の『どんぐりかいぎ』(福音館書店・かがくのとも傑作集 どきどき しぜん)、あまんきみこ『だあれもいない?』(講談社)などです。
最後に今回の課題は、「わたしが○○だったとき」をテーマにした文章を書いてください。
内容は創作やエッセイ等、ジャンルは問わず、枚数制限もありません。
「○○」に入る言葉は、例えば茨木のり子の詩「わたしがいちばんきれいだったとき」のようなもの、「アイドルだったとき」「たこだったとき」等々。
提出は、次の19日(土)にある授業の時です。よろしくお願いいたします。
浦沢直樹は『20世紀少年』で有名ですが、こどもの描写が巧みなのだそうです。
他に、先生が大好きな吉田秋生の『詩歌川百計』(第2巻)のお話。
『海街diary』のすずちゃんが暮らしていた山形県の温泉街が舞台で、そこに暮らす人々を一人一人ていねいに描いているそうです。
あたりまえのこととして、人一人の人生は他の誰にも補えない大切なものであり、それを一瞬で潰してしまえるのが戦争なのだと、
ロシアによるウクライナ侵攻にも言及されました。
そこから授業の本題に入り、テキスト『日本語の<書き>方』(森山卓郎 著・岩波ジュニア新書)は、前回の続きで
「第4章 段落』をまとめる」から、101〜112pまでいつものように順番に音読していきます。
2.段落どうしの関係と論理
・論説文の骨組み
・導入〜「はじめ」の部分
・中心部分
・おわり(まとめ)
論説文は、前回の授業でも出てきた「序破急(はじめ・なかほど・おわり)」で構成されます。
裁判の判決文では主文は最後になりますが、一般的な場合は読者を飽きさせないように組み立てていき、
頭括型(最初に意見を書いて、その後に例を挙げること)・尾括型(まず例を挙げて、最後に意見を書く)のどちらでもかまいません。
論説文では起承転結の「転」に当たるような文章は要りません。
①導入部分では「問題点」「課題」「これから言いたいこと」を述べます。
②中心部分で、さまざまな事例を挙げて説明します。この時、段落が複数になる場合
順序があれば「まず」「次に」「さらに」とか、「第一に」「第二に」「第三に」などの言葉で繋ぎ
事例が1つだけなら「また」「そして」などを使います。具体例があれば、より分かりやすくなります。
③まとめ部分は短い文章ではないこともありますが、長い文章ならある方が分かりやすくなります。
導入部分で既に主張が明確になっていても、最後にもう一度まとめ直す双括型という構成もあります。
3.接続の重要性
・予想を裏切る「逆説」関係
予想とは異なる展開になる文脈の場合は、逆説的な表現をしなければなりません。
「〜であるが」「しかし」などの言葉で文章を繋いだり、主格助詞を一般的に使われる「が」→「は」に換えて強調したりします。
・順序によって言いたいことの中心が変わる?
逆接の場合は、後の方が主張されます。逆接を何度も使うと主張が分かりにくくなるので、多用しないように気をつけましょう。
・本筋と但し書き
文脈を換えるのではなく、前の文の補足をする場合は、「ただし」「もっとも」という但し書きを使います。
日本国憲法などの公文書でも、例外を挙げる場合などによく使われています。
・「そして」「さらに」「また」
これらの接続詞は内容を付け加えるときに使われる便利な言葉ですが、使いすぎには注意しましょう。
同じ言葉を重ねず、「第一に」「第二に」などを用いたり、時間の流れで付け加える時は「そして」、
同じ文脈を付け加える時は「さらに」、別のことを付け加える時は「また」を使うとよいでしょう。
高科先生が文章を書くときは、助詞の使い方と「、」「。」の打ち方には十分気を遣っているそうです。
基本的には読み手の受け取り方を熟考して、最終的には感覚で決めているとおっしゃいますが
書いているときには何度も立ち止まって、常に自分の書きたい様子に見合っているかを考えることが大切だということでしょう。
この日紹介してくださった詩人は、石垣りん です。
茨木のり子の『詩のこころを読む』(岩波ジュニア文庫)で紹介されている「その夜」と「くらし」を見ていきました。
「その夜」は詩集『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』、「くらし」は詩集『表札』に収められています。
石垣りんの詩は、どれも余計なものがそぎ落とされているような言葉で綴られていて、読む人の心を打ちます。
後半は、前々回の課題でもあった絵本のテキストについてでした。
テキスト(キャプション)なしの絵本というものもありますが、絵本は基本的に絵と文章がほど良い関係であるべきだといいます。
長新太の「絵本おまんじゅう論」によれば、絵本の絵と文はおまんじゅうの皮とあんこの関係にとてもよく似ていて、
お互いを引き立てるように、どちらかにボリュームがありすぎてもいけないのだそうです。
絵本のページは8の倍数でできていて(印刷する場合の紙の取り方で一番無駄がない)、
赤ちゃん絵本は16ページ(7見開き)、年中さんくらいになると24ページ(11見開き)、一般的には32ページ(15見開き)
が目安になります。高科先生曰く、この制約があるうえで書くのがおもしろいのだそうです。
お話の進み方として、導入〜中ほど〜おわりがあるとして、その中の何見開きめくらいに何を持ってくるか
大雑把な目安を立てて書くと作りやすいとのことですが、もちろんそれが全てではありません。
ということで、長新太の『おじさんあそびましょ』(絵本館)と『ちへいせんのみえるところ』(ビリケン出版)を教えていただきました。
しかしこのような作品は、絵を描く人と文章を書く人が同じでなければ成立が難しいでしょう。
絵と文を別の人が担当する場合は、ト書きを付けることもあります。
ト書きは書き手によって細かく指示する人もいれば、ざっくり説明だけして後は絵を担当する方に任せるという人もいます。
絵本は基本的にひらがなで書かれることが多いので、単語を続けて書くと分かりにくくなります。
そのため、絵本のテキストは単語の間にスペースを入れて「わかち書き」にします。
どこにスペースを入れるかは、言葉の最後に「ね」を付けて意味が通じるところを目安にします。
しかし文章を書いている途中で、ここにスペースを入れるか否か考えながら書くと思考が止まってしまうので
筆者が書き終わってから編集者が行うようですが、いずれにせよ、基本的な文章の書き方はしっかり押さえておきましょう。
ここで、前回の課題であった「もりの絵本」のテキストの参考になる作品を読み聞かせていただきました。
片山健の初期の作品『もりのおばけ』(福音館書店・こどものとも絵本)、片山令子/文・片山健/絵の『もりのてがみ』(福音館書店・こどものとも傑作集)、
こうやすすむ/文・片山健/絵の『どんぐりかいぎ』(福音館書店・かがくのとも傑作集 どきどき しぜん)、あまんきみこ『だあれもいない?』(講談社)などです。
最後に今回の課題は、「わたしが○○だったとき」をテーマにした文章を書いてください。
内容は創作やエッセイ等、ジャンルは問わず、枚数制限もありません。
「○○」に入る言葉は、例えば茨木のり子の詩「わたしがいちばんきれいだったとき」のようなもの、「アイドルだったとき」「たこだったとき」等々。
提出は、次の19日(土)にある授業の時です。よろしくお願いいたします。