児童文学作家の高科正信先生の初回の授業は「絵本をひらく・そのハードル」がテーマでした。
高科先生の授業は毎回テーマを決めて、そのテーマに合った絵本を紹介されます。
初めに高科先生からお知らせがあります。
福音館書店の月刊絵本こどものとも12月号で、『プレゼントはひとつ』高科正信 文 コマツシンヤ 絵 が出版されます。
コマツシンヤさんは漫画家でもあるので、描写が細かくて圧巻です。
コマツシンヤさんのイラストで、どんどん絵本の世界に入り込んで楽しめそうです。
ぜひ、お手に取ってご覧くださいね。
「絵本作家になりたい。絵本について学びたいと思う方は、これからたくさんの本を読んでください」と高科先生は、初めにお話しされました。
絵本とは?という問いについて考えてみました。
・絵があって文章がある
・幼い子どもが読む
・ページをめくって読む
・読み聞かせるもの
・親子で読める
映画評論家の川本三郎は「絵本というのは、今ここではない場所へ、読者を連れて行ってくれるものだ」と伝えていたそうです。
初回は「絵本をひらく」がテーマですので、
絵本作家が影響を受けた絵本を、初めに紹介します。
1967年にアメリカから、レオ・レオニが『あおくんときいろちゃん』を出版しました。
孫のために色紙をちぎって作った絵本だったそう。
ベトナム戦争で、アメリカでは黒人や貧困民の若い男性が戦争にかり出されました。
『あおくんときいろちゃん』は、戦争が終わって傷ついて帰ってきた若者たちの中で「別々ではなく一緒に仲良くなろう」という思いを持つ人々から、支持を受け大ヒットしたそうです。
そして「僕と一緒に緑になろうよ」とプロポーズする若者が増えたとか。
美大生だった田島征三が『あおくんときいろちゃん』を読んで、「絵本はすごい!」と思い、初めての絵本『しばてん』を1971年に出版しました。
テーマが重くて泥絵の具で描いた絵は批判を受けていたが、幼稚園で読み聞かせたところ、幼児からは「太郎ちゃんがかわいそう」「私、太郎ちゃんと結婚する!」と言って、反響があったのだそう。
『あおくんときいろちゃん』『しばてん』を読んで影響を受けた長谷川集平が1976年に『はせがわくんきらいや』でデビューします。
作家には、これを書かないといけないというテーマがあります。
田島征三や長谷川集平のように、デビュー作で書く人もいれば、時間が経ってから書く人、書かないで心の中に留めておく人もいます。
1967年に出版された『あおくんときいろちゃん』が、絵本の自由さを表現し、その影響を受けた田島征三や長谷川集平たちが絵本のハードルを高くしました。
絵本のハードルは高いのかと感じるでしょうが、ハードルが低い絵本もたくさんあります。
『ごろごろにゃーん』 長新太 1984年(福音館書店)
『1まいのがようし』 長坂真護 2022年(あかね書房)
「いろんな絵本があります。絵本のハードルはそんなに高くないので、どんどん書いてほしい」
「読み手は、好きに読む権利があります。自分に一番近づけて読むので、読み手によって感じるものが違います。作者は、出版したら自分の手から離れてしまうと思ってください」
と、高科先生はおっしゃっていました。
本日紹介した絵本
今日は初回ですので、原稿用紙の書き方を説明していただきました。
・題名は二行目の三マスあける
・作者名は四行目の下
・書き出しは六行目の一マスあける
【課題】
絵本のテキストを書く
1~15の見開きの文章です。
テーマ「せんをひく」で、お話を考えてください。
文章だけですので、絵を描く人は別にいると考え、第三者が読んで分かるように書いてください。
11月29日(水)提出
次回は「ここ」の絵本がテーマです。