【オデッサ】
作・演出 三谷幸喜
2004/1/20 東京芸術劇場
小雨の降る寒い土曜日、
大学時代の友人と、池袋へ出かけてゆく。
「オデッサ」って人の名前なのかと思ってたら、
アメリカ・テキサス州の町の名前だった
登場人物は3人。
警察の遺失物係の日系人警部が宮澤エマさん。
彼女は英語しか話せない。
通訳として駆り出されたジムで働く日本人青年が柿澤勇人さん。
英語が堪能。
殺人事件の容疑者として事情聴取を受ける日本人旅行者が迫田孝也さん。
迫田さんは英語が話せず、日本語は鹿児島弁、と言う設定。
柿沢さんは偶然にも鹿児島出身で、鹿児島弁もあやつれる。
ロビーには3人のホログラムが展示してあった。
こんな服装ではないけど・・・。
宮澤さんは警官の制服です。
宮澤さん演じる警部と柿沢青年が話すときは「英語」だけど
これはセリフとしては日本語で話す。
迫田さん演じる旅行者と青年は鹿児島弁。
3人で話すときは英語。
英語の時は舞台中央に字幕が現れる、という流れ。
舞台のすみっこには三谷さんの舞台の常連、音楽担当の荻野清子さんがピアノを生演奏。
この言葉の切り替えが絶妙で、何の違和感もない。
そして、字幕が楽しい。
楽しい、というのは字幕がただ文字を表すのではなく、
字幕も演技しているようなのだ。
例えば、大きな声なら大きな字になったり、
自信なさげなら、小さくなって隅っこに行ったり・・・
プロフィールを語るような場面ではざ~っと流れて行ったり。
字幕で笑えるって初めての体験かもしれない。
旅行者が本当は犯人じゃないのに犯人だと言っていると思った青年は
警部に向かってウソの通訳をする。
ウソのつじつまを合わせるためにどんどんウソが重なっていく。
それが意外な方向に広がって、思わぬ展開になったり、
あげく、大どんでん返しがあったり。
そういえば、そもそもは殺人事件だったんだっけ。
ここで取り調べをすることになった原因となる、もっと大きな殺人事件があったんだっけ。
序盤から少しづつ散りばめられていた伏線がじわじわと回収されて
なんとなくつながってくると、
笑っていたけど急にぞわ~っと怖くなってくる。
それまで素朴な田舎の青年だった迫田さんが
一瞬で氷のような冷たい声と表情に変わった時、思わず息をのむ。
怖すぎる・・・
役者さんてホントにすごい
宮澤さんの英語は流ちょうで、日本語で話すときは吹替え?って思うくらい。
シングルマザーで、幼い息子と電話でしりとりする姿が微笑ましい。
その息子との会話の中に、恐ろしいヒントが隠されているとは・・・
柿沢さんは英語、標準語、鹿児島弁を使いわけ、よく間違わないな~、と感心することしきり。
一番大変なんじゃないかと思う。
希望を持ってアメリカに渡る者。
絶望の中でアメリカに逃げた者。
その場所から動けない者。
すれ違うセリフの中にもそれぞれの人間模様も織り込まれていて、
ありえないような設定にもリアリティーが増す。
途中で流れるピアノの生演奏も心に沁みる。
残念だったのは座席。
プレオーダーで当たったのに、2階の1番後ろ。
しかも、S席料金。
ステージのすぐ近くの人と同じ料金なのはなんだかな~、と思う。
人気作家の舞台は仕方がないのかもしれないけれど・・・
ともあれ、とてもとても楽しかったことには間違いない。
コロナの時にはすっかり無くなっていた、当日立ち見席も復活していて、
一番後ろの私たちの後ろにもずらっと人がいる。
座れただけ良しとしよう。
劇場周辺のカフェはどこもいっぱいで、
友人とお茶しながら感想を話すことができなかったのが残念。
池袋で解散し、私はこの後、上京した幼馴染との夕食のために
神楽坂へと向かうのでした。
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