新国立劇場で5/27(火)からかかっていた「オットーと呼ばれる日本人」を最終日
6/8(日)に観た。出演は、吉田栄作、グレッグ・デール、紺野美紗子、ジュリ
ー・ドレフュス他である。
1階10列31という席で、舞台から10mほどの近さ。舞台の息遣いが感じられ、臨場
感を十分に体験できた。
「夕鶴」の作者で知られる木下順二の原作「オットーと呼ばれる日本人」は昭和37
(1962)年に発表されている。今から46年前のことである。
--戦後に詳細が発表となった、1930年代のスパイ事件(ゾルゲ事件)に題材をと
っている。(リヒャルト・ゾルゲ、尾崎秀美(ほつみ)は死刑に処せられている。)
しかし、尾崎、ゾルゲ、スメドレー、クラウゼンほかすべて本名は出てこない。
劇中すべてオットー、ジョンスン、宋夫人などとなっている。コードネームで呼び
合っていたこともあるが、あくまでフィクションという位置づけかしら。
この劇では元朝日新聞記者尾崎秀美(ほつみ)をモデルにした「オットー」(吉田
栄作)が主役である。
オットーの長く、比較的早いせりふを自分のものとした吉田栄作に喝采を送りた
い。命をかけた男の世界をよく演じていた。吉田栄作ももう40歳であろうか。
今回はジョンスン(ゾルゲ)役など外国人が3人出演しており、日本語と英語、独
語が入り混じり、英独語が使われるときだけステージ中央奥に字幕用スクリーンが
下がってくる仕掛けになっていた。オペラなどのように字幕が両脇に掲示されるの
ではなく、それが一種の流れとなっており、よかった。--原作には、英語、独語
はないはずである。
(字幕、照明、音楽等のチームワークのよさ!に感心した。)
第2幕で、オットーとジョンスンの、長いやりとりがあったが、私にはそこにウエ
ィト(山場)があるように感じられた。
それと音楽!鵜山さんの選曲なのであろうか。
エピローグのラストシーン。すてきなピアノ曲とともにオットーのせりふ・・・・・・
「ぼくはオットーという外国の名前を持った、しかし正真正銘の日本人だったとい
うことだ。そして、そのようなものとして行動してきたぼくが、決してまちがって
いなかったということ、そのことなんだ。」
--そうか木下順二はこのことが言いたかったのか!思わず涙が頬を伝った。(な
んでこんなステキなピアノ曲を流すの?涙をこらえることができません。)
いいとか悪いを単純に決め付けるイデオロギッシュな思考では得られない、人間と
しての生き様を考えさせられた、名作の再演だった。
脇役では、弁護士役の鈴木瑞穂が圧倒的な存在感を示したし、ゾフィー役(実在で
は石井花子--この人はゾルゲのお墓を建立した人である。)の原千晶が印象に残
った。
《その他》
'30年代の日本の知識がなければ、ちょっと難しかったかもしれない。会場にはゾ
ルゲ事件関係のパネルが掲示されており、多くの人が食い入るように読んでいた。
ゾルゲ事件は篠田正浩によって映画化され(「スパイ・ゾルゲ」)平成15(2003)
年に封切られている。この時は、文字通りゾルゲ(イアン・グレン)が主役、尾崎
秀美(本木雅弘)が準主役だった。
第3幕でオットーが対米開戦前に「大東亜共栄圏」という言葉を使っていたが、
「大東亜共栄圏」は対米英宣戦布告後のものではないかしらん?
(注)これはマチガイ!昭和15年の第2次近衛内閣時代だ(→こちら)。
午後1時5分開演。休憩は最初が15分。次が10分の2回。終演は午後4時45分の長丁場
だった。
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