4月16日(土) 近所の書店に沢木耕太郎(63)『若き実力者たち』(文春文庫)
新装版が出ていた。手に取るうち、どうしても買いたくなった。「小澤征爾」、「尾
崎将司」の項を一気読みする。沢木が月刊『エコノミスト』にこの連載を開始した
のは24歳だったことを知り、ショックを受ける。沢木のような分かりやすい文章
を書きたい。
図書館でベネディクト『菊と刀』(光文社古典新訳文庫)を借りる。
東京交響楽団定期演奏会
4月17日(日) 初めて、新百合ヶ丘のテアトロ・ジーリオ・ショウワへ。東京交響
楽団の演奏会。当初、ミューザ川崎シンフォニーホールで開催予定だったが、
この大震災でその天井の一部が落下したため使えなくなった。そのため、あら
ためて当会場でブロックごとの座席引き換えである。引き換え後、夫婦ランチ。
<プログラム>
1.シェーンベルク 室内交響曲第1番(オーケストラ版)
2.モーツァルト クラリネット協奏曲*
3.ラヴェル ボレロ
指揮;大友直人 コンサートマスター;大谷康子 *クラリネット;ポール・メイエ
1.シェーンベルク 室内交響曲第1番(オーケストラ版)
開演前に珍しいアナウンスがあった。「この会場は耐震構造です。余震があっ
ても演奏は続けます。係員が誘導するまでその場でお待ちください」。
長身の大友さんが登場。80度のお辞儀をされた。(「余震続く中、ようこそおい
でいただきました」とばかり。)
初めて聴いた曲。1906~1935年の作品。メロディーのあるようなないような、
「解決」しない部分が続く。マーラーや雅楽の響きもあった。ほかのお客さんも
初めて聴いたのか、終わった後の拍手始めも遠慮勝ちだった。
テアトロ・ジーリオは音響がややデッドだ。
2.モーツァルト クラリネット協奏曲
大震災と原発事故の影響で外来演奏家の来日中止が続く中、クラリネットの名
手P.メイエが来日してくれた。(感謝!です。)
前ステージと一転して、主要三和音によるコード進行。三楽章すべてが長調と
いう曲である。明るいマチネにピッタリ!
第2楽章のAdagioにしびれた。そういえばうちにベーム盤があったかな?
3.ラヴェル ボレロ
大友さんはこのステージも指揮棒を持たずに指揮した。譜面台もない。
ボレロは元々バレエ音楽である。--スペインの小さな酒場で若い踊り子(女
性)がボレロを踊りはじめ、次第に周囲の人々も踊りに加わり、最後には全員
が踊りに熱狂する。
ヤンパパパヤンパパパ・・・・・・という一つのリズムが続く中、イン・テンポ、
sempleクレッシェンドという珍しい音楽だ。以前、N響で聴いた記憶がかすか
にあるが、あらためて生で聴くと視覚的にも大変おもしろかった。
出だし--予備拍は振っているのかしらん、見えない。生でこそ聴けるppp の
始まり、小太鼓(スネアドラム)はどこだ?フルート、クラリネットとメロディーが移
っても小太鼓の動きが分からない。5分ほどして、やっと弦楽器群の中央正面
でたたいているのを「発見」した。
大友さんの左手のサインにソロが次々に登場する。--オーボエ、サックス
(19世紀にできた比較的新しい楽器である。)、トロンボーン。小太鼓に乱れは
ない。大友さんの振りがどんどん大きくなる。フォルテへ!弦が後方まで全員
必死に弾いている。下手の小太鼓も加わり、左上の3人(ドラ、シンバル、大太
鼓)も立ち上がる。大いに盛り上がったところで、突然終わった。ブラボーを叫
んだのは久しぶりだ。
小太鼓(スネアドラム)はお若い「名手」かしらん。最後まで地味で、謙虚なお辞
儀だった。
昭和音大創設者下八川圭祐さんの像と
チケット引き換え風景
4月18日(月) ブレザーで出勤。会社のロッカー室でブレザーをハンガーに掛
けようとしたら、私のハンガーに誰かコートを掛けている。(こういうことは時々あ
る。)誰だっ、間違えてるぞっ、コートをはずしてやれ、とよく見たら、あれ、自分
のコートではないか。もしやと思ってコートのポケットをさぐると、なくしたと思っ
た定期券が出てきた。笑ってしまう、とはこのことだ。
同月同日 社内の友人から、ホロショフスキー95歳のライヴなどCDを3枚拝
借。じっくり聴いてみたい。
4月19日(火) 朝日の「あらたにす」を散策していたら、川本裕子教授の「自
粛ムードは復興のためならず」(4月1日)に出会う。山本七平を引用している
ところといい、私が(川本論文を見ずに)4日にブログに書いた「自粛ムードと
は何か?」と同じ趣旨だが、さすが川本教授--文章力が違う。
モーツァルト「レクイエム」
4月22日(金) リーベック音楽事務所主催の「スプリングコンサート」(於杉並
公会堂)を聴く。
メインはモーツァルトのレクイエム。大震災前から予定されていたのだろうが、
時宜を得た演奏会といっていいのではないかしらん。指揮者の松村正吾氏は
ウィーン国立音大でスイットナーに師事したとあった。オーケストラは珍しく男
性ばかり。オーソドックスなウィーン古典派。なかなかよかった。
スカイライン合唱団in NAKANOは中野区にある合唱団(合唱指揮;都留俊
輔、西谷大)だそうだ。--65歳以上の方がかなりおられたが、想像したより
よかった。(とくにテノール。)
ソリストはSop.沼生沙織、Alt藤井奈生子、Ten.阿瀬見貴光、Bass和田ひで
きの皆さん。和田ひできさんは早稲田グリー出身、たしか同団のボイトレをやっ
ておられるのではないかしらん。阿瀬見さんは宗教曲のテノール、藤井さんは
声量あるアルトだった。
沼生さんは、このブログでも、右上の「検索」で「沼生沙織」と入力、「このブログ
内で」を選択し、検索クリックするといくつか登場する。
リリック・ソプラノというよりは強いリリコ・スピントといえばいいのかしらん。日本
の声楽家でいえば、なんてったっけ?いま名前が出てこない(--こういうこと
は最近よくある。ど忘れ?)が、ドイツの音大を首席で卒業し、シュワルツコップ
にも師事、現在ドイツ人のご主人と沖縄の音大で教授をしておられる、N響の
第九にも出演された方(え~っとなんてったっけな?)と似ているかな?などと
思いながら聴いていた。
宗教曲は沼生さんにとって初めてかもしれないけれど、意外とモツレクに合っ
ており、すてきだった。またひとつ幅を広げられたのではないかしらん。
ワグネル・オムニバス&スプリングコンサート
4月23日(土) ワグネル・オムニバス&スプリングコンサート。大地震の影響で
2週間延期して、五反田文化センター(客席250)での開催となった。幹事さん
のご苦労がしのばれる。会場の音響が大変よかった。
S先輩に会釈したら「元気?」と声を掛けられ、「はっ、おかげさまでっ」と硬直し
た。先輩はいくつになっても先輩である。
1.神津 進(S39卒)
若々しい女性ピアニストを従え登場。70歳(?)とは思えぬ声量にブラボーが
飛んだ。
2.コール・マルシュナー(男声16人)
福島高校OB合唱団。平均70歳以上。喜多郎のように髪を束ねた指揮者の下、
My Bonnieなど愛唱歌を披露。「持ってる」ではなく、(男声合唱を)「知ってる」
人達の集まりだ。
3.クール・ヴァンテネージュ(混声。女声17+男声9)
初出場。須田さんの棒でポピュラーな曲(「心の四季」より「風が」、「雪の日に」)
にチャレンジ。団員は50歳過ぎ?
ポピュラーな曲は難しいが、子音といい、アーティキュレーションといい、響きと
いい、とてもよかった。テナーが強いのも他の混声では聴かれない。
「春がそれだけ弱まってくる」に感動が込み上げた。「かさなってゆく かさねら
れてゆく」も心にしみ、背中が離れた。(田中さんの伴奏もよかった。)
京都エコーよりうまいのでは?
4.B&B Singaers
Falling I'm Love with Loveなど懐かしい音。マイクは必要なかったカナ?
5.亀井淳一・泰子(泰子・淳一?)
夫婦(めおと)デュオ。泰子さんは人柄あふれるかの歌唱。淳一さんは堂々とし
て好調。お二人のお辞儀がよかった。(お辞儀は意外と難しい。)前田さんのピ
アノはいつもステキ。
6.The Daydreamers(混声。女声、男声各5)
歌の楽しさが伝わってくる。「あなたの夢をあきらめないで」のフレーズには大
震災と重なり、グッと来た。(おじさん泣いちゃうよ。)
7.コールヘリテージ(男声10人)
両木さんが亡くなられたが、内田さんを加え、ますます元気。浜圭介作曲「わた
しゃ黒猫」はいい曲だった。ヴォリュームが70歳×10人とは思えない。
8.ワグネルOB
須田さん指揮。なんといえばいいのかしらん、関学とは違った、好きな人は好き
という、ワグネルらしい「夕焼け小焼け」がよかった!みなさん客席から登場の
和気藹々。
9.アリババと15人の盗賊
旋律のパートが次々に変る「川の流れのように」がよかった。今年は美空ひばり
二十三回忌。
10.井澤光太(H17卒)
のど自慢。先生に付いているのかしらん?欲をいえばもう少し情緒を・・・・・・。
11.杉野茂信(S29卒)
80歳?ゾウさん、マンガさんと同年代。マイクを差し引いてもよく声が出る。長身
の女性ピアニストは普段はゾウさんの伴奏らしい。
12.Melting Pot(混声。女声14+男声6)
40代半ばの皆さん、働き盛りでお忙しいハズだが。なかなかよかった。指揮ぶり
は上智の指揮者?(北村先生みたい。)
13.フォービーメン(カルテット)
テレビ、ラジオ出演経験をお持ちのカルテット。セミプロといっていい。ダークダッ
クスの10年後輩。平均71歳?選曲と編曲が好きだ。トークが聴けなかったのが
残念!
14.小野弘道(H5卒)
声楽の先生(門屋先生)に伴奏していただく。声は体(たい)を表すや?--素
直な声。高音がきつかった。
15.小島常弘&米田嗣幸
スピントの小島さんは先日「題名のない音楽会」に出演。お二人でオペラの衣
装。小島さんのスピントにはいつ聴いても驚く。ブラビーが飛んでいた。
16.田中良夫(S48年卒)
60歳過ぎでテノール。トスティー。破綻がない。芸大出で田中さんよりへたな人
はたくさんいるだろう。三浦(絵里)先生のピアノもすばらしかった。
17.アゲイン
バンドネオン(早川純さん)がブンダバー!「ダイアナ」--訳詩(渡舟人?渡舟
人ってどんな人なのかしらん?)もよかったが、世代だろうか?英語の発音がよ
かった。指揮の宮島さん(S37卒)は永遠の「ヤンチャ坊主」だ。最後は右手で
指揮をしながら、左手でご自分のネクタイを引っ張り客席を振り向いた。
18.志木高ワグネル
吉川誠二先生指揮。「虹」は小さくまとまらない、大きな音楽。タダタケ「梅雨の晴
れ間」は低音のリズムがきかせた男性的な、放射する音楽。一人ひとりがしっか
り歌い、本当にすばらしかった。吉川先生は芸大声楽科~同大学院オペラ科修
了のバリトン。合唱指揮は声楽科出身がいい。今週26日(火)の定期演奏会も
楽しみ。
19.ワグネル男声
新入生(15人?)を加えた、若々しい「若き血」。学指揮は大変見やすい棒で、
自分で振っていた。
20.ワグネル女声
新入生も加え、26、7人と増えた。新実徳英作「南海譜」にはなぜかしらん突然
ジーンと来た。
21.ワグネル男声+女声
バランスは悪かったが、「手紙」はいつ聴いても(私は)ダメだ。涙腺に来る。とく
に「負けないで」に大震災を想い、涙がにじんだ。
21.全員合唱
全員起立しての「慶應讃歌」。いざ肩を組もうと思ったら、なぜか一番で終わった。
休憩25分×2回は長すぎたカナ?
五反田文化センター入口
不動前駅~文化センターの間にある 名門攻玉社
4月24日(日) 快晴。マチネは堀俊輔さん指揮、合唱団アニモKAWASAKI/
東響のバッハ「ミサ曲ロ短調」(於テアトロ・ジーリオ・ショウワ)。
堀さんが手塩に掛けたアニモKAWASAKIの演奏会は一度聴いてみたかった。
音楽会、三連荘(さんれんちゃん)はさすがにキツイ!(よかったか悪かったか?
具体的な感想はまた来週。)
平成17年卒の井澤と申します。
先日の演奏会の率直な感想をいただき、ありがとうございます。
今回のステージは先生にはつけなかったものの、数か月発声や合わせを自主トレして参りました。まだまだ至らぬ演奏でしたので、今後もステージに立つことがありましたら精進してまいります。
「のど自慢」とコメントさせていただいたようにいいお声でした。「持ってる」と思われるので、いい先生につかれたらいかがでしょう。
個人的にはトスティがよかったです。来年も楽しみにしております。
次回は進歩がよりわかるように、また常に心地よい音を出せるよう一歩一歩練習していきたいと思います。
いや~、発声は難しいですね~。
ブル先生がその昔フィッシャー=ディースカウにインタビューした時に、F=Dにして発声は難しい、完璧はないという趣旨のことを言っていたように記憶しています。
これからも頑張ってください。応援しています!