人生ブンダバー

読書と音楽を中心に綴っていきます。
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畑中良輔・更予の米寿&卒寿記念コンサート

2010-02-15 05:03:41 | 音楽

2月12日(金)、畑中良輔先生の誕生日に四ツ谷の紀尾井ホールで「畑中良輔・更
予の米寿&卒寿記念コンサート」が開催された。大変寒い日だったが、会場は立ち
見が出そうなほどの超満員。--6時半開演に対して5時半には開場となった。

畑中良輔先生は昨年暮れからお正月にかけて、南紀、熊野に旅行に行かれた時に、
寒波に巻き込まれ、肺炎となられ、1月一杯入院されておられたという。無事に開催
されると聞き、一安心であった。


6:35の「まもなく開演です」のアナウンス後、会場はしわぶき一つ聞こえず、静まり
返った。開演前の、こんなにもシーンとした静けさの経験は、ムラヴィンスキーの横
浜公演以来である。あの時もムラヴィンスキーは本当に現れるのだろうかと、期待
と不安が入り混じった想いだった。

6:40合唱団が入ってきた。拍手が起こる。最後に畑中先生がゆっくりと登場した。
ほんとうに盛大な、聴衆一人ひとりがこの時を待ち望んだ、精一杯の拍手である。

先生がマイクを持たれる。
 えー、皆様有難うございます。88歳の誕生日を迎えました。(大きな拍手)。
 ・・・・・・私事ですが、肺炎になっちゃって、3週間の入院生活で歩けなくなっちゃ
 って、声もガラガラ、ガラコンサートですが、精一杯努めさせていただきます。


畑中先生指揮による慶應ワグネルOBと藤沢男声合唱団合同(100人超)による
「富士山」から始まった。15分を超える曲。先生は左手主体の棒で、立って指揮を
された。演奏後、ワグネルOB会長下田さんから先生に大きな花束が贈呈された。

続けて、先生がいつもの「青の会」演奏会のように、マイクを持たれ「えー、おしゃ
べりさせていただきます。若い頃、川端康成先生をはじめ文学者との交流がありま
した云々」と曲の紹介を終え、ステージ脇の席に向かおうとした時であろうか、先
生がよろよろと後ろ向きに倒れ、後頭部をゴツンと床にぶつけた。客席からは悲鳴
も聞こえ、あわてて数人が駆け寄ったが、先生は眼鏡を飛ばしながら、気丈にも
大声で「大丈夫、大丈夫、やりますから」と起き上がった。


それからも先生はややふらふらしながら、進行役を務め、ご自分の歌も「みんなや
めろと言うんだけど、やめないッ」と前半、後半の2ステージ、ピアノにややもたれ
ながら歌った。

私は、先生は、失礼ながらどこかでリタイアするのでは思い、ハラハラしながら、
聴いていたが、後半「低声のための『三つの抒情歌』」という10分あまりの歌唱も
前後に「88歳は大変なの」、「病み上がりですが、ほんとは、ビロードの声、もっと
うまいんですよ」と笑わせつつ、シャキッとされて歌われた。

「海浜独唱」はまさしく「畑中ワールド」でひきつけられた。先生は盛大な拍手に応
え、いつものようにピアニストの花岡さんを立たせ、花岡さんと握手をしたが、花岡
さんが感極まって、大粒の涙をポロポロ流されていたのが印象的だった。


小泉恵子さんのすてきな歌で全プログラムを無事終了。合唱団も含め、出演者全員
がステージに登場、会場の拍手の中、改めて先生に花束が贈呈された。

最後に平野先生の指揮でハッピー・バースデイを会場全員で歌った。お元気になっ
た先生いわく--「これからも、生きている限り、音楽していきます」。
私の目にも先生の姿がにじんでみえた。


<プログラム>
1.男声合唱「富士山」
2.「古代感愛集」より(畑中曲) 綱川立彦
3.「和泉式部集」(畑中曲) 大川隆子
4.「天の夕顔」より(畑中曲) 畑中良輔
5.「二つの歌」(畑中曲) 中村 健
6.おしゃべり 畑中更予
 「四季の歌」(畑中詩)酒井美津子、瀬山詠子、玉川美栄、大島洋子
 畑中更予先生30歳のリサイタルのために、良輔先生が詩を書き、中田喜直さん
 が作曲した、思い出の曲だそうだ。小原さんのピアノがステキだった。
 畑中更予さんはおしゃべりはハッキリしたいいお声だが、今は声を失われ、お歌
 いにはなられないと。
--休憩--
7.「九つのプレリュード」より(畑中曲) 花岡千春
8.「風刺的な歌より」(畑中詩) 平野忠彦
9.「超える影に」(畑中詩) 瀬山詠子
10.芒の歌(畑中曲) 土野研治
11.低声のための「三つの抒情歌」(畑中曲) 畑中良輔
12.八木重吉による五つの歌(畑中曲) 小泉恵子
ピアノ;塚田佳男、花岡千春、小原 孝

それにしても演奏中は、こんなことは珍しいほど、いずれもまことに静寂な(かつ演
奏後は盛大な拍手の)演奏会であった。
会場には大中恩、栗林義信ほか多くの先生方が来場されていた。



終演後、紀尾井ホールの外で、オンステされた、10年以上先輩のKさんとHさん
がおられたので、「お疲れ様でしたッ」と後から思い切り肩を叩いたら、「あっ、ご
無沙汰です」と鄭重にお辞儀をされてしまった。


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