團伊玖磨の先生は下総皖一である。下総皖一の先生は信時潔であり、ヒンデミット
である。
「岬の墓」は昭和38(1963)年に芸術祭賞、文部大臣賞を受賞した。初演は木下保
指揮、名古屋のCBC合唱団であった。堀田善衛の「深い」詩と團伊玖磨の「太
い」音楽がマッチした優れた作品である。
また「筑後川」、「海上の道」は、それぞれ久留米音協合唱団の委嘱によりその創
立5周年、10周年のために作曲されている。(--久留米はブリジストン発祥の地
である。團さんの妹さんはブリジストンの石橋さん(ストーン・ブリッジ)に嫁い
でいる。)
1.「岬の墓」 辻正行指揮、クロスロード・アカデミー・コーア(平成1/5録音)
2.「筑後川」 本間四郎指揮、久留米音協合唱団
3.「海上の道」 同上 (以上昭和56/4録音)
さて、本CDの演奏である。
1のクロスロード・アカデミー・コーアは16人ほどの少人数のプロ合唱団であり、
団員一人ひとりがしっかりした実力を持っているようだ。ただ、「岬の墓」ではも
う少し人数が多いほうがよかったのではないかしらん。
2はアマチュア合唱団であり、指揮者の本間先生もお医者さんで病院院長というア
マチュアである。(この話ホンマです。本間先生51歳の時の録音。本間さんは平成
12(2000)年に亡くなられた。)
「筑後川」をアマチュアらしい率直さで歌っている。(2)「ダムにて」の「もっ
と深さをもつように もっと重さをもつように」の盛り上げ方、「筑後平野の百万
の生活のなかへ」の気持ちの入れ方などいかばかりであろう。(5)「河口」の
「筑後平野の百万の生活の幸を 祈りながら川は下る 有明の海」なども感動的
だ。欲をいえば、言葉をハッキリさせるためにもう少し子音を立てる箇所があって
もよかったな。
*ワグネルの現役時代、團さんには八丈島から私の家へ電話を頂戴したことがあ
る。團さんの独唱曲を男声合唱にしていただきたいというお願いに「独唱曲は合
唱曲にならない」という丁重にしてきっぱりとした断りのお電話だった。それ以
来、團さんに注目するようになり、外柔内剛の上品な方という印象を持つように
なった。当時、團さんは49歳前後だった。
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マッチした優れた作品である」。
そのとおりです。このイメージをはっきりと感じ取れ
るのは、木下保指揮、ワグネルの演奏です(1976
年第101回定期)。福永陽一郎の男声合唱編曲版で
すが、混声合唱のような色彩感が無いので、この曲の
深さ、大きさが直截的な表現となっています。原曲の
混声合唱も必ずしも色彩的ではない、また、ピアノ伴
奏部は合唱の伴奏としては技術的に難しい部類に属す
るがそうかといって華やかさとは無縁。小生の師、福
永陽一郎がこの曲をよく「ブラームスの合唱曲みたい
だよね。」と言っていたのを思い出します。
木下先生/ワグネルの「岬の墓」をあらためて聴きま
した。混声とはまた趣(おもむ)きが違いますね。単
色の味わいでしょうか。それにしても録音がとびきり
いいというわけではないのに、言葉(歌詩)がはっき
り聴き取れるのにいまさらながらちょっと驚きです。