かぜねこ花鳥風月館

出会いの花鳥風月を心の中にとじこめる日記

高田馬場のあらえびす

2017-08-19 11:03:04 | 日記

石垣市立図書館は、赤瓦の小粋な建物であって、人口5万の街の図書館としては大きく、蔵書も八重山関係本ばかりでなく、それなりに備えられており、新聞、雑誌コーナーのリクライニングシートや書棚周りには、柔らかな木質の椅子や机も十分レイアウトされているので、今は夏休みで中高生が多くを占めているが、平日は、高齢グループのヒトビトがリクライニングシートに陣取り、新聞を広げたまま大きな口をあけて寝込んでいたり、机にうつぶせている風景をよく見かける。男性がほとんどなのは、Tシャツと短パン、ビーチサンダルだけでなんら着飾る必要がないまま公共の場で寛げる、この土地の気楽な環境からなのか、または、「濡れ落ち葉的存在」からの避難所なのか。

とにもかくにも。オイラもその一員として2週に1回は訪れるが、オイラの場合は、立ち読みしながら、借りたい本の選択に時間を費やす。文学、音楽、映画、スポーツ、詩歌、宗教、自然科学コーナーなどをジャンルを選ばずコーナーを歩き回って、7冊の本を選択して回る。7冊借りても、7冊読みきったためしはないが、税金払ってんだから、できるだけ「ただ」の恩恵を受けたいという人間欲のなせる仕業なのである。

CDもある程度備えられており、パソコン等の媒体にコピーするため、上限2枚ずつ借りることにしている。全部コピーできれば、我が家に図書館を移動してきた感覚にもなろう。今の媒体の容量であれば可能だろうが、コピーしても、聴く時間は限られている。好きな音楽を好きな時間何度でも聴いているほうがいい。

きのうは、アルテュール・グリュミオーのバッハの無伴奏パルティータが目に留まったので、借りてきてイヤホンで聴きながらこの日記を書いているが、彼の濃厚・芳醇な響きは、やはり、レコードとオーディオスピーカーからでしか味わえないのか。

高田馬場に「あらえびす」という名曲喫茶があって、暗く、ほんの少しだけ本が読めて、コーヒーカップが持てる程度の灯りのなかで、みな押し黙り、難しそうな表情で瞑想したり、ほとんど理解しがたい観念的で、前衛的な文学書に目を通したり、ハイライトをくゆらしたり、しながらオーディオスピーカーから流れる木質の柔らかなグリュミオーのバッハやグールドのブラームス、ラフマニノフのコンチェルトに耳を傾けていたな。

あのとき、レジにいた若い女性の大きくつぶらな瞳の静けさも忘れない。声を立てることが許されず、目と笑顔とだけのやり取りだけであったが、その笑顔会いたさに、通った。70年代後半。

 かつて、東京を出て十数年ぶりに、そのあらえびすの「あった場所」に足を向けたが、跡形もなかった。そのときは、あの時の思いでは幻だったかと、愕然とした。

 

 

いま、幸い、YOUTUBEに、映像が残されていて、86年に閉鎖されていることを知った。実在したが、今歩いていけといったらいけないだろうその場所にすら。

 

https://youtu.be/FfirfCGUr_Q

 この、映像で、「あらえびす」のレコードが、岩手の野村胡堂あらえびす記念館に移管されたことを知った。いつか、レコードコンサートに立ち寄りたい。

雲が多すぎて、夜明けの空の27の月は、さびしげであった。

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