8月29日(水)はれ
大崎博澄さん(前高知県教育長)が詩集を送ってくださった。
大崎さんは「あとがき」の中でこう書いています。
ぼくは、極貧に生まれ、多感な思春期を劣等感にまみれて育ち、けつまずいたり転んだり、人生をこの上なく愚かに生きて晩年にいたりました。今なお苦しみの中にいる子どもを抱え、収入も蓄えも乏しく、年老いて体力も衰えました。なんたる不幸な人生、と思うでしょう?
ところが、ぼくは不幸ではないのですね。むしろ、自分をひたひたと満たす不思議な幸福に包まれています。
それは、子どもの頃から敗北の連続の人生の中で身に付けた小さな哲学、小さなものを愛する好奇心、人の心の痛みに想いを寄せる想像力が、自分を支えてくれる多くの人との出会いをもたらしてくれたおかげです。
大崎さんは僕の人生の終末期に出会うことができた4歳下の友人です。こういう風に言い切ることができる大崎さんの人生に僕は深い敬意と共感を抱きます。生まれも育ちも僕とは違いますが「そうだね」と心から同意することができます。
「大人になっていくキミへ、生きづらい日々を懸命に生きているあなたへ、どうしたら絶望を希望に変えられるか、悲しみを受け入れてささやかな夢を実現できるか、人生をこの上なく愚かに生きたぼくが学んだ知恵のすべてを、この詩集に刻みました。」
今を懸命に生きている若い友人たちに読んでほしいと思います。
一つだけ大崎さんの詩を紹介します。これが詩というものなら僕も詩人になりたい、なれるかも知れないと思ったものです。
詩の書き方
大崎博澄
さて、どう書くか
上手に書こうと思ってはいけないよ
詩は下手なほうが上手
むつかしい言葉を使ってはいけないよ
やさしい言葉ほど、キミのやさしさが伝わる
古い歯ブラシで二、三度こすると
言葉にあたらしい意味が宿るんだ
さて、何を書くか
詩のタネはキミの身の周りの至る所に
見つけようとする人にだけ、それは見つかる
ひとりで食べた朝ごはん、円満橋の下に群れるボラ
歩道に咲く小さなスミレ、街ですれちがった美しい人
詩のタネはキミの心の扉をいつもたたいている
ドアノブは心の内側、だから開けるのはキミ自身
さて、何のために書くか
詩を書くことよりも
人生をよく生きることのほうが大事だよ
恥をさらすことをおそれないで
透き通る悲しみから目をそらさないで
今日一日、孤独に耐えた自分を励ますために
それがどこかで誰かを励ますことを信じるために
さあ、これで
今日からキミは詩人、そして、ぼくの友達です
<詩集の入手の方法> たんぽぽ教育研究所へ電話するのが一番。大崎さんが出るかも知れません。一冊1000円(送料込み)。
088-855-4546 または090-7626-3543