2020年現在、世界中の多くの
ナイフメーカーが中華人民共
和国にてナイフを製造している。
ブランドは自国物だが、製造
のみが中国であるのだ。
アヘン戦争で清国からイギリス
が香港を分捕っていたが、それ
が99年間の租借の取決めが満了
し、前世紀末の1997年に中国に
返還された。
その後の開放政策を採用した大
陸中国の資本主義国並みの経済
発展が凄まじい。
そのうち日本は抜かれるのでは
と90年代には思ったが、20年を
待たずに中国は世界第二位の経
済大国にのし上がった。
そして、安い人件費を求めて、
旧西側諸国の産業は中国に生産
拠点を移し始めた。
日本の企業もそうである。
手工業的職人技を完全否定する
赤色中国は、先進資本主義国以
上に工場制機械工業を徹底化
させた。
最初の頃は品質も覚束なかった
が、今や自動車製造のみならず
宇宙産業の分野でも勢いがある。
まだまだ鉄道技術や橋脚建築、
化学工業製品の品質においては
まだ世界最高水準の日本に
は遥かに及ばないが、一般的
工業製品では今や中国なくし
て世界の経済は回らない。
また、食品原料や衣服の糸や布
もすべて今では中国製だ。
日本人が食す納豆も豆腐も味噌
もうどんの粉も、あらゆる生活
分野全般に亘り中国製品で占め
ている。
いくら中国人観光者が行儀悪い
からと中国を嫌ったり、個人
的に右っぽく偏狭な国粋主義
で中国を嫌っても立ち行かな
いのだ。
「ならばお前、すぐにパンツ脱
げ。その綿は中国製だ」という
ことになるのだ。
そしてナイフである。
中国製ナイフは、やりはじめの
頃は見られた物ではなかったが、
今ではNCマシン等を駆使して、
日本製と遜色ない出来のナイフ
を製造している。それを日本の
1/5以下の価格で。
フォールディングナイフに至っ
ては、日本製の1/10以下の製品
も多く存在する。
こうなると、日本は立ち行かない。
いつまでも、高品質だから高い
のだ、だけでは経営は困難だ。
かといって、品質を下げたり、
価格を下げたりしたら、それこ
そ倒産する。どうするのか。
「独自性」の強調による戦略で、
顧客を掴むしかないだろう。
案外、メーカーではなく、個人
作家とのコラボ戦略で店舗単位
では成功している例もある。
金額が通常の3倍以上でも売れに
売れまくって、常に売り切れ状
態であることも見受けられる。
金額は正直言うと法外な値だが、
今はコラボナイフのバブル期な
ので爆発的に売れている。
他のナイフメーカーの通常ライン
ナップは全く売れていない。
中国製。90年代中期に起業した
リアルスチールのナイフだ。
廃番。
かなりの加工精度を出している。
日本刀でいうところの樋(ひ)の
彫りもきっちりとしているし、
複雑なカットの多角的造形も
ビシッとラインを出して来て
いる。
グラインドは限りなくフラット
に近い微細なRを描くコンベ
ックスだ。
この優れた造形と機能性と切れ
味と耐久性を有しているガルダ
リクが出て早々に廃番になった
のは、手間がかかり過ぎて
コストがパンクになるから
ではなかろうか。
こう複雑な造形を丁寧に精度を
出していては、損益分岐点を大
幅に割ってしまう事だろう。
廃番理由はたぶんそうでは。
そして、代替モデルとして「リア
ルスチール ブッシュクラフト」
を最近出した。
今それが人気に火がついている。
下手したらバークリバーを抜く
勢いだ。
抜け目ない日本のショップは、
リアルスチールと提携してコラ
ボモデルを作り始めた。それも
すぐに売り切れている。
そのリアルスチールのブッシュ
クラフトモデルの原型となった
のがこのガルダリクで、完全に
アウトドア実用モデルとして存在
した。
キャッチコピーは「丸太を切り
裂く為のナイフ」だった。
私などは廃番の為に保存モデルと
しているが、仮にメインナイフで
野営で使うとしたら、現地での携
帯装着方法は例によってこれだ(笑)。
カイデックスシースのオーバル
ホールにベルクロテープを通し
て2箇所でベルトに縛っただけの
ウエストサイドポジションだ。
私は左腰にのみこれをする。
前から見るとこう。
ベルト密着なので、一切腕の邪魔
にはならない。これで車にも乗れ
る。乗らないけど(笑)。
馬車や馬ならこれがベストだろう。
シースにナイフを納めるとカチン
という音と共にロックするので、
鯉口を切る動作をしないとナイ
フは抜けない。
車の窓ガラスを叩き割る突起が
ハンドルエンド=柄頭にある。
フルタングのエンドだ。とんがっ
ている。
伝宮本武蔵作の鉄製柄頭に小さ
な斧が造形されている物を見た
ことがある。飾りではなく武器だ。
柄頭で敵の眉間を叩く時に、昏倒
させるためではなく、即死させる
為の武具だろう。
ナイフの車両ガラス割り突起も
似たような効能は持っている。
とんがってるし。
これで人体の急所を叩いたら死ん
でしまうだろう。
このモデルは、多少タクティカル
要素も入った造りだが、現在人気
のブッシュクラフトモデルは、完
全にブッシュクラフトに特化した
モデルで、ブレードのグラインド
も各種揃えている。
ハマグリ刃が人気のようだ。
スカンジグラインドが結構実力
あるのだが、有名なユーチュー
バーがハマグリ一辺倒の動画配
信をしたためか、日本ではハマ
グリ神話が独り歩きしている。
元来、ナイフにはそれぞれのグ
ラインドには意味があるのであり、
一概に一絡げにすることはできな
いし、固定的観念で決めつけるの
は危険だ。
ただ、自分の気に入った刃先と
グラインドに改造したりする事
は大いにアリだろう。
そこで出てくるホローグラインド。
手の施しようがないですがな(笑)。
誰だよ、あんなえぐりグラインド
を流行らせた奴は(笑)。
ボブ。あんただろう?(笑)
最近はもっこり地が流行りみたい
だぜ、大将。
フォールディングナイフでは、右
も左も全部中えぐりのブレードで
困っちゃうよ。
切った物が貼り付くしさー。
何かの意味があって、刀身の中
えぐりで凹面にしたのだろうが、
あれは実は歴史的な失敗だった
のでは?
多角的に解析すると、そんな気
がするよ。
80年代は世界的に文化の花開い
た時代だったが、ことナイフブ
レードの実用性の見地からは、
ホローグラインドの登場は新規
性に誰もが飛びついたが、あれは
失敗案だったと思うよ。
文化を守る北欧ナイフなんて、
当時は見向きもされなかったけ
ど、ずっと伝統を墨守して、今
それが旧西側の日本やアメリカ
で人気が出てきているんだから。
となりのロシアでも。
ホローになんてしないよ。ラップ
ナイフは。
日本刀もだけどさ。