水戸物の刀が研ぎ上がった。
人はこれをこう呼ぶ。
「差し込み研ぎ」と。
拭いっぱなしだ。
これは、ややそのあとの研磨も入れている
が、差し込みの範疇だろう。
刀の素顔が見える、これが本当の日本刀の
研ぎだ。
刃を全体的に白く研師が描く化粧研ぎは
明治以降に流行した。
徳川家康などは、ヌグイさえも入れない
ほうが実用的だ、と言っていたことが記録
に見られる。つまりここまで研磨を進め
ない白研ぎのあたりの刀剣を良しとした。
あくまで、個人的な私見だが、現代研磨
コンクールなどの地部を真っ黒くして、
刃部をペイントしたように真っ白に塗る
現代研ぎは、下品な厚化粧にしか見えな
い。
これは中学生の時からそう感じていた。
焼き刃周囲をそんなに白く擦ったら、本当
の焼き刃や刃文が見えにくくなるじゃない
か、と。
スッピンの素肌美人が本当の美人なので
は、と。
素肌美人とて、肌のお手入れを怠るとその
美が出てこない。刀は、その刀の良い所を
引き出してあげて、これはというあまり
良くないところは伏せてやるのが本当の
日本刀の研ぎではないのか、と13才位の
頃から思っていた。
思うに、高度経済成長時代の戦後第一次
刀剣ブームは、一気にド派手な厚化粧を
することが大流行した時代だったように
思える。
そして、今もそうした刀剣研磨の流れは
続いているし、日本刀作りでは、実用を
離れた「刀に似た物」にどんどんなって
行ってる。
その流れに疑問を呈する刀剣界の人士
たちは、中央勢力からパージされる。
そういう構造が、ここ50年程続いている。
それをずっと見てきた。
日本刀は日本刀なので、そろそろ本物の
日本の刀の姿に回帰してもいいのではなか
ろうか。
刀からではなく、まず人から自己維新を
成し遂げて。