エボニー&アイボリー。
上のブローニングナイフの
ハンドル材はマッカー・サー
エボニー=縞黒檀だ。
下は象牙生材ではなくア
イボリー・マイカルタで
ある。
アイボリー・マイカルタは
本象牙の代用品。本象牙
は今はワシントン条約に
より輸入禁止品となって
いる。
特別国際種事業者の免許を
有した業者のみが政府に届
け出た象牙材に登録ナンバ
リングをして、既存輸入品
の切り出し部材のみ国内販売
が許されている。
アイボリーマイカルタを使用
したハンドルのナイフ。
レジンによる人工象牙風
の樹脂だ。
パティーナ(経年変化の変色)
まで含めて、本物の象牙に
しか見えない。
このような風合いが出るなら
ば、本象牙でなくとも充分鑑
賞に耐える。
こちらのハンドルは、本黒檀
の真っ黒の通称マグロと呼ば
れる材料だ。
ブローニング ・チーターと同
じく、黒檀の丸棒材に穴を開
けてタングを尻まで突き通し
にしてから削り出しで造形
している。
板材の貼り合わせではないた
め、非常に手間のかかるカス
タムナイフ級の加工になる。
そのため、希少材と併せてナ
イフの金額は決して安くない
価格帯となる。
このハットリの個体は、今
ではとても貴重な真っ黒
のマグロと呼ばれる黒檀
が使われている。色は真
っ黒だ。
縞黒檀はまだどうにか手に
入るが、本黒檀のエボニー
のマグロは現在はほぼ入
手困難な情況だ。
トーンウッドの黒い銘木の
唐木としては、これまた貴
重なアフリカン・ブラッ
クウッドがエボニーの代
用品として今は広く使わ
れている。
両者は色は近くとも別な
種属の木だ。
エボニーとアフリカン・ブ
ラックウッドは香りが全く
異なる。
アフリカン・ブラックウッド
を用いたナイフ。リアルス
チール・ブッシュクラフト
プラス。
NCマシンを使った削り出しの
ため、コンマミリ単位で狂い
が出ていない。
中国製ナイフの生産量が世界
トップに立ったのは、NCマシ
ン導入でこの加工精度を出せ
るようになってからだ。超高
価な工作機械だが、精度面で
の高品質に歩留まりの悪さと
いうものは存在しない。まる
で判で押したように同じ均質
の加工品が生産できる。
それゆえ、ナイフのハンドル
をねじ止めするという革命的
な製品を登場させられる事が
できた。日本の家内制手工業
的な刃物メーカーは、精度に
おいて到底太刀打ちできない。
木製ハンドル材であるのに、
精密機械のパーツのよう
に精度が出ている。
充分にシーズニングされた
「動かない木」であるならば、
これで完璧な完成品となる。
アフリカン・ブラックウッド。
バラ類マメ目マメ科ツルサイ
カチ属。準絶滅危惧種。
本黒檀。
キク類ツツジ目カキノキ科カキ
ノキ属。
これは数ある同類エボニーの
中で最高級のセイロン・エ
ボニー。いわゆる本黒檀の
マグロ角材。20年以上寝かせて
いる。
ブラジリアン・ローズウッド。
本紫檀。
ワシントン条約締結以前は自由
に取引されていた。マメ科の白
い花のブラジルの特定地域でし
か採れない木。ハカランダとも
異なる。
高級仏壇や高級家具、調度品、
高級ギターなどに使用された。
独特の芳香を放つ。
この材は40年近く寝かせてい
る。それ以前の製材乾燥期間
を入れたら50年以上経って
いるのではなかろうか。
本物のブラジリアン・ローズ
ウッドを使用して私がプロ
ビルダーに依頼して製作した
カスタムキュー。
四剣だけでなく、グリップの
糸巻きの下もブラジリアン・
ローズウッドを削り出して
使用している。
少し削っては寝かせを繰り返
して木の動きと対話しながら、
かなりの製作期間をかけて
完成した。シャフトのフェ
ルールは本象牙を使用して
いる。私が持つカスタム・
キューの先角は、自作キュー
以外は全て本象牙だ。適度な
トビとタッチと音により、選
択肢は本象牙一択となってい
る。
私のタッドもボブ・ランデも
すべて本象牙のフェルールで
ある。
21世紀の現在でもモーター・
サイクル・レーシング・ウエ
アは本革を超える素材を人間
が発明できていないように、
撞球道具や楽器部品においては、
性能面と質性において本象牙
を超える素材を人類は発明
できていない。
しかし、撞球では、キューの
運動特性を別解釈して撞き方
を変える事により、象牙では
ない人工素材が持つ振動の無
さを逆利用する方法が今世紀
初めから一般的となった。
そのため、現在ではねじり倒
したり、払い撞きをして手玉
をひねって独特な動きを与え
る撞き方はできないし、しな
いのが一般的な凡庸なセオリー
となっている。
ゆえに、現在では、私のよう
に変則的な変化球ばかり繰り
出すキュー出しを長くした撞
き方をするプレーヤーは極端
に少ない。
ただ真っ直ぐにトンとだけ撞
き、単に的球を入れて手玉を
転がして行く。強制的に手玉
を自在に変化させて次にポジ
ショニングさせる映画『ハス
ラー』(1961年)で出て来たよう
な撞き方は今の人の多くはや
らないし、今のキューではで
きない。
あれは、柔らかいメイプルの
スリーブのキューでソリッド
の一本物のシャフトと見越
しを要するトビの出る象牙
先角だからできる。黒檀の
スリーブのキューや振動が
極度に少ないハイテクシャフト
では不能だ。
極言すれば、鉄のキューでは、
あの昔の撞き方はできない。
しかし、プールが単なる球入れ
競技となってからは、観客を
沸かせるプレーなどは必要と
されないので、単純に穴入れ
専用棒が多く求められるよう
になった。
そして、観客は大幅に離れたが、
プレーヤーはなおもつまらぬ
プレーに徹している。客が
来なければ、業界は立ち行
かないし、興行も成立しな
い。
日本のプロ野球の名勝負やメジャ
ーリーグでのレーザービームの
ようなハイテクニックを見せて
観客を興奮させるプレーは、
現在の撞球シーンではあまり
見られない。
黙々と淡々と球を落とすだけ。
プレーヤー自身が観ていても、
かなりつまらない物に変質した。
今の撞球はまるで射的競技みた
いだ。CQB近接戦闘のような自
在に臨機応変に動的にやりあう
対戦競技のあの空気は消滅し
てしまった。
ナイフのハンドルの材料は、
ゴム素材以外の天然材料は
主として性能面よりも見た
目の存在感が重視される。
木製銃床は木材種類により反
動収縮性が異なるので、それ
に適した材が用いられるが、
ナイフでは視覚的なものを重
要視する。
ただ、性能面としては、カリ
ンなどは割れ易いので、ファ
ンシーナイフ以外は避けたほ
うが無難かも知れない。
重量配分は、木材の気乾比重
等でナイフの重量を設計する。