「ハカイシャ」。
映画、「クローバーフィールド」で副題に使われた言葉です。
映画でハカイシャと言われたあれは、未知の怪獣でした。
でも、これは、水です。
僕たちの良く知った、あの海の水です。
そして、映画ではなくて、東京から、わずか数時間で行ける場所で起きた、現実です。
消防署です。
屈強の消防隊、レスキュー隊など、いざという時に助けを乞うのは、消防署。
建物の上、アンテナのように見える、「火の用心」と書かれた、火の見櫓(やぐら)の先端にしがみつていた8名の方だけが、助かったそうです。
消防車が、取り残されていました。本当なら、町の皆さんを助けにいきたかったでしょうに。
その瞬間の、どうしようもない音が聞こえてくるようです。
通り沿い、消防署の横には、印刷所がありました。
長く廃屋だったわけではなく、四ヶ月前のあの日、あの瞬間までは、まったく普通に稼動していた会社です。
足元は、すこし柔らかいです。
海水浴に行ったときの、海底のような感じ・・・より、もう少し柔らかかったです。油断すると、足を取られそうになります。
踏み固められた土ではなく、波で流されてきたものが積もったものだということがわかります。
本当に、いろんな物が、落ちています。
DVD。「最強格闘技伝説」とありました。
残念ですが、こんな津波には、どんな格闘技の達人も、敵わないですね。
なんだろう、と思いながらシャッターを切りました。
印刷所の裏には、図書館と博物館がありました。
積み上げられた蔵書。
でも、もう読まれることはなさそうです。
消防署の裏にありました中央公民館、体育館があった建物です。
津波は、この建物の裏側まで、一気に打ち抜いたのだそうです。
海沿いに建っていたわけではありませんし、まさか、こんな高さまで来るとは、本当に思ってもいなかったことと思います。
しかし、現実は。
どうしたらいいのか。
無残です。あまりに、無残です。
それ以上の言葉が見当たりません。
通りを挟んで、市役所が見えます(中央の四階建ての窓がる建物)。
この市役所の前で、震災発生時に撮影された、約2分の動画があります。津波が襲ってくる、直前の様子です。
「陸前高田市役所前ライブ映像」
こちらの方に伺いました。
津波が来た時、市役所の付近に居た人たちは、四階建ての市役所に避難したグループと、
向かいの三階建ての高さの建物に避難したグループに、分かれたのだそうです(写真、中央より、やや左の建物)。
これまでご覧いただいた写真や、先ほどの消防署の画像などでもおわかりいただけるかと思いますが、
津波は、三階建ての建物は、飲み込んだのです。
なので、市役所の四階、および屋上に避難された方々は助かり(たしか、三十数名と聞きました)、
向かいの三階建ての建物に避難された方々は、全員、お亡くなりになったのだそうです(こちらも数十名いらっしゃったとのこと)。
四階建ての市役所から、向かいの建物は見えたはずです。
見知った方や、同僚たちを抱えたまま、あっというまに水没していく建物を見た方々が、大勢いたはずです。
・・・なんという、悲劇でしょう。
下にご紹介するのは、南三陸町で撮影されたもので、震災直後に、ニュースで流された画像です。
立地的にすぐそばの陸前高田も、これと、同じような状況だったのではないかと思い、転載させていただきます。
信じられない光景です。
写真を見ているだけで、物凄く心細い気持ちになります。
アンテナによじ登り、必死(まさに、必死だったでしょう)でしがみついていた、わずか10名の方が生き残られました。
「大津波15メートル、屋上の明暗」
こちらの防災対策庁舎では、最後の最後まで建物に踏みとどまり、住民の方へ避難を促すアナウンスをされていた女性が被害に遭われてしまいましたね。
こちらは、陸前高田の写真です。
無常であることは分かっているつもりですが、それにしても、無情です。
言葉少なに、宿へ戻りました。
ではー。