今回は「戦国武将の精神分析」と「脳はみんな病んでいる」「警視庁科学特捜班プロフェッション」の3冊です。
期せずして3冊とも精神分析がテーマになっている。
戦国時代は、弱肉強食、下剋上、骨肉相食む時代。そんな時代を勝ち抜き名をあげ功を成した武将を精神分析すればみんなまともな人ではない。
織田信長は典型的なサイコパス。
サイコパスという言葉はよく聞くのですが、どういうものかよく知らず、冷酷無比な人格障害くらいに思っていました。
中野信子さんの解説によれば診断名としては先天的な「反社会性パーソナル障害」とか。特徴としては「外見が魅力的で、ナルシスティックである」「恐怖や不安を感じにくい」「人がためらうことを平然と行う」「他人に対して共感性が低い」「失敗は人のせいで自分のせいにはしない」「行動が計算ずく」などとか。
信長の行動を見ていくと、信長だけが一向宗一揆に対して徹底した虐殺を行っている。比叡山も焼き討ちしている。信長は宗教的権威に対しては恐怖心はまったくない。人間観察眼は優れているけど共感性はない。
因みにサイコパシーというのはスペクトラム(分布範囲)であり、グレーゾーンから真っ黒まであるとかで満点が40点で33点以上がサイコパス。信長は真っ黒の満点の可能性が大とか。信玄についてもサイコパスの傾向はあって34点とか35点くらいはあるかもと。
ところで信長が似たような存在と見ていたであろう人物としては松永久秀。信長は、松永の「主人を殺した」「将軍を殺した」「大仏を焼いた」ことについて、こういうことをできるのは他にいない大した奴と評価している。
ただ、中野さんによれば松永久秀は「ソシオパス」かもと言っている。サイコパスとソシオパスは現れる特質としてはほとんど一緒。違いは先天的か後天的かと言うことなんですが、二つとも一緒に反社会性パーソナリティ障害というカテゴリーに入っているそうです。生理的な特質として、ソシオパスとサイコパスの違いというのは美的感覚と倫理的な感覚が生まれつきあるかないか。松永久秀は美と性に対するこだわりが本当に強かったみたいで、そこはソシオパス的。その点信長は性的欲求はあっても女性に対する美的センスは感じられない。「美」ではなくて「利」で動く。物事の美しさを判断できずに利用できるものは利用してやると言うことだったのでは。
その点では荒木村重は妻が絶世の美女と評判だったようで似た性格が見えるけどソシオパスだと。
サイコパス以外にも戦国武将を精神分析するといろいろ評価できるのですが、石田三成は合理的思考力はあるけど忖度できない。アスペルガー症候群ではないかと。文脈が理解できずに「こういう場面ではこういうことは言ってはいけない」が分からない。能力が高く秀吉という後ろ盾があったので困ることなく空気が読めな大人になっていたんでしょう。近くにいたら本当に付き合いづらい人。タイプとしては頭は抜群で見通しも的確、でも忖度はしないという点で大久保利通も同じだったかも。空気を読まないことが必要とされるような乱世では突出した才能が出てきやすいのでしょう。
この他に、もちろん家康、秀吉に信玄、謙信、政宗もまな板にのっています。歴史好きで戦国武将に興味がある方は是非読んでおくべきでしょう。大河ドラマもこれを読むと見方が広がるかも。ドラマには描かれない姿が想像できます。
もう1冊の今野敏「プロフェッション」はご存じ警視庁科学特捜班STシリーズ。今回は青山のプロファイリングが如何なく発揮されるのですが、チームメンバーの個性がそれぞれ発揮されて読みだすと止まらず一気でした。でも最後は犯人はサイコパスと言うことで収まるのですが、サイコパスの理解が私の「反社会的な人格障害」とほぼ同じぐらいのとらえ方で、ちょっと結末が物足りないというか安易なんでは。
3冊目は池谷裕二と中村うさぎの対談なんですが、以前出した同様の対談「脳はこんなに悩ましい」の続編ともいうもの。中村うさぎに触発されてか池谷が文系にも分かりやすい議論と解説があり、結構レベルの高い脳科学論議となっています。
私的には中村うさぎについてはスキャンダラスな話題(高額買い物依存症、ホストクラブ通い、美容整形、デリヘル嬢体験などなど)についてしか知らないし、どちらかというと近寄りたくない人でした。
ところがその中村うさぎと池谷裕二は対談を進めていくうちに分かるのですが、共通の傾向があるとか。
最後の第6章で精神科医を交えて議論をしているのですが、中村うさぎも池谷裕二も最後に診断書が添付してあるのですが、自閉スペクトラム症と診断されます。こういう話を読んでいると私もその傾向があるんではとかいろいろ思うのですが、それ以外の部分も含めて認識を新たにしたことも多々あります。
ちなみにですが、自閉症と知的障害はつきものではなく、高機能自閉スペクトラム症(この場合の高機能は知的レベル)では高い知能と並外れた酋長力があるので、受験勉強でハイスコアを取りやすく東大にも多いとか。典型的な東大生のイメージの「成績は良いが融通が利かず使えない奴」は高機能自閉症スペクトラム症の特性そのものとか。
なんやかんやと「へ~」という話も多くて結構楽しく読めたので前著の「脳はこんなに悩ましい」も読んでみようか。
期せずして3冊とも精神分析がテーマになっている。
戦国時代は、弱肉強食、下剋上、骨肉相食む時代。そんな時代を勝ち抜き名をあげ功を成した武将を精神分析すればみんなまともな人ではない。
織田信長は典型的なサイコパス。
サイコパスという言葉はよく聞くのですが、どういうものかよく知らず、冷酷無比な人格障害くらいに思っていました。
中野信子さんの解説によれば診断名としては先天的な「反社会性パーソナル障害」とか。特徴としては「外見が魅力的で、ナルシスティックである」「恐怖や不安を感じにくい」「人がためらうことを平然と行う」「他人に対して共感性が低い」「失敗は人のせいで自分のせいにはしない」「行動が計算ずく」などとか。
信長の行動を見ていくと、信長だけが一向宗一揆に対して徹底した虐殺を行っている。比叡山も焼き討ちしている。信長は宗教的権威に対しては恐怖心はまったくない。人間観察眼は優れているけど共感性はない。
因みにサイコパシーというのはスペクトラム(分布範囲)であり、グレーゾーンから真っ黒まであるとかで満点が40点で33点以上がサイコパス。信長は真っ黒の満点の可能性が大とか。信玄についてもサイコパスの傾向はあって34点とか35点くらいはあるかもと。
ところで信長が似たような存在と見ていたであろう人物としては松永久秀。信長は、松永の「主人を殺した」「将軍を殺した」「大仏を焼いた」ことについて、こういうことをできるのは他にいない大した奴と評価している。
ただ、中野さんによれば松永久秀は「ソシオパス」かもと言っている。サイコパスとソシオパスは現れる特質としてはほとんど一緒。違いは先天的か後天的かと言うことなんですが、二つとも一緒に反社会性パーソナリティ障害というカテゴリーに入っているそうです。生理的な特質として、ソシオパスとサイコパスの違いというのは美的感覚と倫理的な感覚が生まれつきあるかないか。松永久秀は美と性に対するこだわりが本当に強かったみたいで、そこはソシオパス的。その点信長は性的欲求はあっても女性に対する美的センスは感じられない。「美」ではなくて「利」で動く。物事の美しさを判断できずに利用できるものは利用してやると言うことだったのでは。
その点では荒木村重は妻が絶世の美女と評判だったようで似た性格が見えるけどソシオパスだと。
サイコパス以外にも戦国武将を精神分析するといろいろ評価できるのですが、石田三成は合理的思考力はあるけど忖度できない。アスペルガー症候群ではないかと。文脈が理解できずに「こういう場面ではこういうことは言ってはいけない」が分からない。能力が高く秀吉という後ろ盾があったので困ることなく空気が読めな大人になっていたんでしょう。近くにいたら本当に付き合いづらい人。タイプとしては頭は抜群で見通しも的確、でも忖度はしないという点で大久保利通も同じだったかも。空気を読まないことが必要とされるような乱世では突出した才能が出てきやすいのでしょう。
この他に、もちろん家康、秀吉に信玄、謙信、政宗もまな板にのっています。歴史好きで戦国武将に興味がある方は是非読んでおくべきでしょう。大河ドラマもこれを読むと見方が広がるかも。ドラマには描かれない姿が想像できます。
もう1冊の今野敏「プロフェッション」はご存じ警視庁科学特捜班STシリーズ。今回は青山のプロファイリングが如何なく発揮されるのですが、チームメンバーの個性がそれぞれ発揮されて読みだすと止まらず一気でした。でも最後は犯人はサイコパスと言うことで収まるのですが、サイコパスの理解が私の「反社会的な人格障害」とほぼ同じぐらいのとらえ方で、ちょっと結末が物足りないというか安易なんでは。
3冊目は池谷裕二と中村うさぎの対談なんですが、以前出した同様の対談「脳はこんなに悩ましい」の続編ともいうもの。中村うさぎに触発されてか池谷が文系にも分かりやすい議論と解説があり、結構レベルの高い脳科学論議となっています。
私的には中村うさぎについてはスキャンダラスな話題(高額買い物依存症、ホストクラブ通い、美容整形、デリヘル嬢体験などなど)についてしか知らないし、どちらかというと近寄りたくない人でした。
ところがその中村うさぎと池谷裕二は対談を進めていくうちに分かるのですが、共通の傾向があるとか。
最後の第6章で精神科医を交えて議論をしているのですが、中村うさぎも池谷裕二も最後に診断書が添付してあるのですが、自閉スペクトラム症と診断されます。こういう話を読んでいると私もその傾向があるんではとかいろいろ思うのですが、それ以外の部分も含めて認識を新たにしたことも多々あります。
ちなみにですが、自閉症と知的障害はつきものではなく、高機能自閉スペクトラム症(この場合の高機能は知的レベル)では高い知能と並外れた酋長力があるので、受験勉強でハイスコアを取りやすく東大にも多いとか。典型的な東大生のイメージの「成績は良いが融通が利かず使えない奴」は高機能自閉症スペクトラム症の特性そのものとか。
なんやかんやと「へ~」という話も多くて結構楽しく読めたので前著の「脳はこんなに悩ましい」も読んでみようか。