宮部みゆきの人気連作「三島屋変調百物語」のシリーズ第6巻。
今回から聞き手が代ります。
今までは三島屋と縁続きのおちかが聞き手でしたが、おちかは縁あって嫁入りしてしまい、今回からは三島屋の次男坊の富次郎が聞き手になります。そのあたりの事情が知りたい方は前作の「あやかし草子」を読んでみてください。
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聞き手が代わっても三島屋の黒白の間で聞くという舞台装置は変わらず、そこでの話は「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」という決まりも変わらない。次の間には百物語の守り役としてお勝が控えていて、古参女中のおしまが客を案内して、語り手を周旋するのは口入屋の灯庵老人というのも変わらない。
とは言ってもまだ富次郎は慣れないのでどことなくおっかなびっくりの様子が見て取れます。そこが少し趣が変わってどういう話に転がっていくのか又興味をそそられます。
ところで、昔からあったのでしょうが、一般人には理解できない無差別な殺傷を計る凶悪な犯罪が目につきます。マスコミはセンセーショナルな報道を好むので、どんどん拡散してくのですが、記憶に新しいものでも、列車で放火してナイフを振るったとか、ガソリンをばらまいて放火して結果沢山の方がなくなってしまうとか、池田小学校とか障碍者施設での凶行などなど。
当人にとってはそれなりの理屈があるかもしれませんが、多分供述を聞いても全くその行動を理解できないと思います。
それでもそんな理不尽な行動の奥深くには何か駆り立てるものがあったはず。もしかするとそんな心象風景はこういう物語によってしか我々には解明できないかも。
宮部さんのこの百物語は、まったく理不尽なんですけど、おぞましい事件を引き起こしたその何かを取り上げ語ることによって浄化しようという思いが感じられます。
今回取り上げられるのは、深く潜む淫乱の気であったり、姑の嫁いびりであったり、妻子を亡くした男の無念だったり、流罪にされたキリシタン大名の怒りだったりなんですけど、非常にどす黒い感情で周りの者にとっては迷惑しかないのですけど、もしかしたら誰もが心の奥深くに1%くらいは抱くものかも。それが何らかのタガが外れて噴き出してきてしまい、悲劇的な結末を迎えてしまう。
否応なく巻き込まれ見聞きしたものにとっては何時かは、この思いを吐き出し語ることによって浄化するしかない。
ちょっとずれますが、第4話の「黒武御神火屋敷」ではゲームの世界にある迷宮のような不気味な御殿が出てきますが、このシリーズでは以前にも同じような不気味なお屋敷が出てきたことがありました。RPG小説なども書いているので、閉ざされたお屋敷でいかに脱出するのかというのはゲームの感覚なのでしょうが、これをクリアーするのはかなり大変です。
百物語に戻るとそんな話をほぼ一方的に聞くのは本当にシンドイものとも思われます。おちかも聞いて苦しくなることも多々あったのですが、守り役のお勝に助けられて勤めてきました。ひょんなことから聞き手となった新米の富次郎の苦労がしのばれます。宮部さんとしてはだから小説にして読んでもらって富次郎の苦労を分かち合っている?
4話で590ページという分厚い本ですけど、読みだすとなかなか止まりません。一気とはいかなくても二日で読み終えてしまいました。
どことなく頼りなげな富次郎ですが、これはこれで身近に感じます。
このシリーズまだまだ続くと思いますので、富次郎を聞き手にしてどんな話が出てくるのか楽しみです。
それにしても現実社会で、江戸怪談よりも恐ろしいような理不尽な凶行が頻発するのでは、この日本はどうなる。とは言っても犯罪認知件数は戦後減り続けていて、凶悪犯罪も戦前とか戦後の混乱期の方が凄惨な事件が多かったみたいです。今はワイドショーなり情報番組がセンセーショナルに取り上げ繰り返し放送されるので多くなったいう印象が強いだけという面もありますけど。
今回から聞き手が代ります。
今までは三島屋と縁続きのおちかが聞き手でしたが、おちかは縁あって嫁入りしてしまい、今回からは三島屋の次男坊の富次郎が聞き手になります。そのあたりの事情が知りたい方は前作の「あやかし草子」を読んでみてください。
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聞き手が代わっても三島屋の黒白の間で聞くという舞台装置は変わらず、そこでの話は「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」という決まりも変わらない。次の間には百物語の守り役としてお勝が控えていて、古参女中のおしまが客を案内して、語り手を周旋するのは口入屋の灯庵老人というのも変わらない。
とは言ってもまだ富次郎は慣れないのでどことなくおっかなびっくりの様子が見て取れます。そこが少し趣が変わってどういう話に転がっていくのか又興味をそそられます。
ところで、昔からあったのでしょうが、一般人には理解できない無差別な殺傷を計る凶悪な犯罪が目につきます。マスコミはセンセーショナルな報道を好むので、どんどん拡散してくのですが、記憶に新しいものでも、列車で放火してナイフを振るったとか、ガソリンをばらまいて放火して結果沢山の方がなくなってしまうとか、池田小学校とか障碍者施設での凶行などなど。
当人にとってはそれなりの理屈があるかもしれませんが、多分供述を聞いても全くその行動を理解できないと思います。
それでもそんな理不尽な行動の奥深くには何か駆り立てるものがあったはず。もしかするとそんな心象風景はこういう物語によってしか我々には解明できないかも。
宮部さんのこの百物語は、まったく理不尽なんですけど、おぞましい事件を引き起こしたその何かを取り上げ語ることによって浄化しようという思いが感じられます。
今回取り上げられるのは、深く潜む淫乱の気であったり、姑の嫁いびりであったり、妻子を亡くした男の無念だったり、流罪にされたキリシタン大名の怒りだったりなんですけど、非常にどす黒い感情で周りの者にとっては迷惑しかないのですけど、もしかしたら誰もが心の奥深くに1%くらいは抱くものかも。それが何らかのタガが外れて噴き出してきてしまい、悲劇的な結末を迎えてしまう。
否応なく巻き込まれ見聞きしたものにとっては何時かは、この思いを吐き出し語ることによって浄化するしかない。
ちょっとずれますが、第4話の「黒武御神火屋敷」ではゲームの世界にある迷宮のような不気味な御殿が出てきますが、このシリーズでは以前にも同じような不気味なお屋敷が出てきたことがありました。RPG小説なども書いているので、閉ざされたお屋敷でいかに脱出するのかというのはゲームの感覚なのでしょうが、これをクリアーするのはかなり大変です。
百物語に戻るとそんな話をほぼ一方的に聞くのは本当にシンドイものとも思われます。おちかも聞いて苦しくなることも多々あったのですが、守り役のお勝に助けられて勤めてきました。ひょんなことから聞き手となった新米の富次郎の苦労がしのばれます。宮部さんとしてはだから小説にして読んでもらって富次郎の苦労を分かち合っている?
4話で590ページという分厚い本ですけど、読みだすとなかなか止まりません。一気とはいかなくても二日で読み終えてしまいました。
どことなく頼りなげな富次郎ですが、これはこれで身近に感じます。
このシリーズまだまだ続くと思いますので、富次郎を聞き手にしてどんな話が出てくるのか楽しみです。
それにしても現実社会で、江戸怪談よりも恐ろしいような理不尽な凶行が頻発するのでは、この日本はどうなる。とは言っても犯罪認知件数は戦後減り続けていて、凶悪犯罪も戦前とか戦後の混乱期の方が凄惨な事件が多かったみたいです。今はワイドショーなり情報番組がセンセーショナルに取り上げ繰り返し放送されるので多くなったいう印象が強いだけという面もありますけど。